指揮官交代で『エース』と見なされたことが大活躍の要因に
NBAドラフト全体1位指名を受けてティンバーウルブズに加入したアンソニー・エドワーズは、カール・アンソニー・タウンズやディアンジェロ・ラッセルがいるチームにおいてシーズン当初は中心選手として扱われず、ポジショニングの悪さや判断力の課題があり、なかなか活躍することができませんでした。それでも3月は平均24.2得点で西カンファレンスの月間新人王に選ばれました。
クリス・フィンチへのヘッドコーチ交代にラッセルの欠場も重なり、タウンズと並ぶエース格に指名されたエドワーズは、プレータイムを大きく伸ばし、時にわがままに個人技で突破することも許されるようになりました。3月のフィールドゴールアテンプト数は21.1本とリーグで3番目に多く、ヘッドコーチから信頼されるようになったことが得点増に大きく関係しています。
ウルブズはチームとしてもオフボールでのポジショニングとフリーランニングを増やし、タウンズを起点にしてチーム全体が連動する形へとオフェンスが変化しています。ヘッドコーチ交代の前後でウルブズのワイドオープンでの3ポイントシュートは15.6本から20.5本へと大幅に増えており、チームの連携でディフェンスを崩せるようになっています。
シーズン当初のエドワーズは個人技で仕掛けても、相手のチームディフェンスに押さえ込まれてしまうことが多かったのですが、今はカバーが来たらパスアウトする仕組みができ、ポジションバランスも良くなったため、同じ個人技でも相手のヘルプが少ない中を突破すればよくなりました。そして、インサイドまで侵入しやすくなったことで、ペイント内得点が大幅に増えたことがエドワーズの平均得点を押し上げました。
しかし、個人のシュート力や判断力が短期間で改善するわけではなく、3ポイントシュート成功率は30.8%に留まり、パスの判断もディフェンスに囲まれてから考えているため、エドワーズから始まるオフェンスは効率性に欠けています。エドワーズがコートにいる時間のオフェンスレーティングは106.9と低く、111.5を記録しているタウンズとは大きな差が出ています。
それでもエドワーズは破壊的な推進力と鋭角な切り返しにより、強引にでも突破してしまう魅力に溢れています。センター相手にコンタクトしてもバランスを崩さずフィニッシュに持って行ける強靭なフィジカルで、ダブルチームに来られても強引にねじ込む常識外のプレーをしてきます。また、弱点と言われていたディフェンスにも意欲的に取り組み、特にオフェンスが予期していない位置から飛び出てくるパスカットから速攻に繋げるのもエドワーズの得意パターンになりました。試合終盤でもエネルギッシュにプレーできるスタミナも魅力で、シュート成功率が低くてもハイスコアを連発できる要因になっています。
まだ19歳のエドワーズは粗削りでパス能力、シュート力、ポジショニングなど、穴を指摘すればキリがない選手です。しかし、ドラフト1位に期待したいのは他の選手にはない圧倒的なプレーであり、普通の感覚では予想できない強烈なプレーの数々です。そういう意味では、エドワーズは立派に期待に応えています。