「プレーメーカーがプレーメークしないんだから、勝てないわけだ」
新生ペリカンズはここまで17勝23敗。激戦の西地区でなかなか勝率5割に届かないが、ザイオン・ウイリアムソンとブランドン・イングラムの両エースをエリック・ブレッドソー、ロンゾ・ボール、スティーブン・アダムスが支える先発ラインナップに力があるのは間違いない。今シーズンから指揮を執るヴァン・ガンディは、苦労しながらも適切なバランスを見いだそうとしている。
それと同時に浮上しているのが、トレードデッドラインに向けた動きだ。今のシステムで存在感を出せていないベテランのJJ・レディックの放出が濃厚とされる中、もう一人のトレード候補としてロンゾ・ボールが注目されている。
ロンゾの役割は今シーズンになって大きく変わった。ポイントガードとして視野の広さとボールプッシュを生かし、速い展開を作り出すのが彼の持ち味。しかし、ヴァン・ガンディはザイオンやイングラムにもボールを持たせてプレーメークの役割を分散させる形を目指している。2人とも自ら打開するだけでなく、周囲を生かす能力もあり、何よりボールタッチが増えれば自分のリズムでプレーしやすい。ザイオンとイングラムの個人能力を最大限に引き出すためのバスケだ。
ただし、ロンゾは割を食っている。自分がプレーの起点でないことが増えると、シューターの役回りを演じなければならない。ルーキーの頃は酷評された3ポイントシュートもNBAで4シーズン目を迎えて仕上がり、今シーズンは1試合平均7.7の3ポイントシュートを打って3.0本を決め、成功率は38.9%とどの数字もキャリアハイ。シューターとしても及第点を超える選手になっている。
ペリカンズとしては、これが現状の最適解なのかもしれないが、ロンゾの父親であるラバーが納得するはずはない。ロンゾがレイカーズに指名される前からメディアの前で時に過激な持論を語ってきたラバーは、『ESPN』の取材で「ペリカンズにはもういるべきではない」とまくしたてた。
「ロンゾは正真正銘のプレーメーカーだ。ディフェンスのスペシャリストやコーナーで3ポイントシュートのチャンスを待つ選手にする理由がどこにある? ザイオンもイングラムもキャリアを通してプレーメーカーをやったことがなく、得点を取ってきた選手だ。プレーメーカーがプレーメークしないんだから、勝てないわけだ」
ロンゾ自身は不満を口にすることなく、チームの勝利のために自分の役割に徹している。ただ、ラバーが言うようにロンゾが本来の仕事をしていないのは事実でもある。
球団側もそれは理解しており、今シーズン終了後に制限付きフリーエージェントとなるロンゾをこのタイミングでトレードに出す可能性は十分にある。プレーメークを多くの選手で分担するペリカンズに必要なのは、ポイントガードより点の取れる選手、あるいは正真正銘の『3&D』だが、チームがより上を目指すのであれば選択されるのは前者だろう。今はウィザーズのブラッドリー・ビール、ブルズのザック・ラビーンといった大物の名が浮上している。アンソニー・デイビスを手放した2年前に手に入れた指名権は今が使いどころ。ロンゾも含めた大型トレードが実現するかもしれない。