タイラー・ヒーロー

チームを救った20歳のルーキー

東カンファレンスファイナル、セルティックスvsヒートの第4戦は新人のタイラー・ヒーローがベンチからキャリアハイとなる37得点を挙げたヒートが112-109で勝利した。

ゾーンとマンツーマンを併用し、センタープレーヤーを外してスモールラインナップ同士の時間帯もあるなど、ディフェンスがオフェンスを上回る守り合いの展開が続いた。ほとんどの時間で2ポゼッション差以内で試合は推移したが、ジェイソン・テイタムが6本すべてのフィールドゴールを外し、ヒーローが11得点を挙げる活躍を見せたヒートが50-44とリードして前半を終えた。

後半に入り、ダンカン・ロビンソンが3本のフリースローをすべて成功させ、ゴラン・ドラギッチも3ポイントシュートで続き、開始4分でこの日最大となる12点のリードを奪った。

だが、前半無得点に終わったテイタムが3ポイントシュートを沈めたことで、セルティックスの反撃が始まる。3度のオフェンスリバウンドを奪われても守り切り、それを得点に繋げる粘り強さを見せる。ボールに触れる機会が増えたテイタムはアグレッシブに攻め続け、内外から得点を量産。3点プレーとなるバスケット・カウントを連続で奪い、このクォーターだけで16得点の荒稼ぎを見せ、1点差に迫って最終クォーターを迎えた。

そして開始3分、ダニエル・タイスのゴール下が決まり、セルティックスがついに逆転。バム・アデバヨがインサイドで得点し返し、ここから一進一退の攻防が続いていくが、ここからゾーンディフェンスに固定したヒートが流れをつかむ。

選手間で頻繁に声を掛け合いポジションの確認をしつつ、手を広げてパスコースを塞いだ。セルティックスは打開しようとするも、ターンオーバーする危険性を恐れて大胆なパスを送れず、ズレを作れずにタフショットを連発し得点が止まった。

ディフェンスが機能したヒートは絶好調のヒーローがさらに勢いをもたらした。ハンドオフから難しい3ポイントシュートをねじ込み、さらにミドルシュートも沈める。ヒーローがオフボールで動き回ることでセルティックスディフェンスを揺さぶり、他の選手へのマークが甘くなったところで得点を重ねた。

残り56秒、ショットクロックわずかな場面で、ジミー・バトラーのポストプレーに合わせたヒーローがレイアップを沈め107-98。その後、セルティックスの猛追を受けるが、ファウルゲームで得たフリースローを確実に成功させて逃げ切った。

ヒーローは5本の3ポイントシュート成功を含む、37得点と大爆発。ドウェイン・ウェイドが持つ、ヒートのプレーオフ新人最多得点記録を大幅に更新した。若干20歳のヒーローだが、そのプレースタイルと同様に「それは良かった。まだやるべきことがたくさんある。3勝1敗になっただけだから」と、落ち着いた様子でインタビューに答えた。

指揮官のエリック・スポールストラは「チームメート、コーチから信頼を得るには日々の取り組みが大事。それは大半の人間が知らないことだったり、見ていなかったりすることだ。タイラーは控え目な選手で、ベテランからのアドバイスに耳を傾けている」と語り、ヒーローの人間性を称賛した。

一方、1勝3敗と後がなくなったセルティックスのジェイレン・ブラウンは「試練や困難は人生につきもの。それでも勝てると信じている。あとはやるしかない」と、冷静にここからの巻き返しを誓った。