ニコラ・ブーチェビッチ

雪辱を誓うアデトクンボ「ハードに戦うことに集中したい」

ゲームハイの35得点を記録したニコラ・ブーチェビッチは、試合後の会見で「僕らは誰に何を言われても気にしない。自分たちのバスケをすることに集中した」と胸を張った。

東カンファレンスのトップシードで、MVPのヤニス・アデトクンボを擁するバックスに、マジックは歯が立たないだろうと見られていたのも無理もない。1位と8位の差もあるし、直接対決では4試合を戦って全敗。1桁の点差に持ち込めたのは一度だけで、あとはすべて大差を付けられた。年末の試合に至っては、アデトクンボを休養させたバックスにも完敗を喫している。

だが、プレーオフは別物。マジックは『巨人』との対戦を控えて完璧な準備をしてきた。ヘッドコーチのスティーブ・クリフォードは「選手たちはプレーオフの準備を完璧にやってくれた」と、ブーチェビッチは「素晴らしいゲームプランを練ってくれたコーチ陣のおかげだ」と、お互いの仕事ぶりを称えた。

ブーチェビッチは、コーチ陣のゲームプランを学ぶとともに、1年前の自分からも学んでいた。昨シーズンのプレーオフファーストラウンドではラプターズと対戦。初戦を勝利するも、そこから4連敗。彼は勝った初戦もシュートタッチが悪く、そこから立て直せないままシーズンを終えていた。

「人生すべてにおいて言えることだけど、経験から学んで成長するのが大事だ。昨シーズンのプレーオフではいつもと違うプレースタイルにアジャストできず、最初の2試合で調子が悪かったので考えすぎてしまい、自分のプレーを見失ってしまった。相手も対策をしてくるけど、効果的なプレーをする方法は一つじゃない。それが分かれば、相手の出方に対して冷静に対処することができる」

第3クォーター途中、68-69と1点差に迫られた場面があった。それでもクリス・ミドルトンが決めれば同点のフリースローを外した直後の攻めで、マーケル・フルツとのピック&ポップからフリーになったブーチェビッチが3ポイントシュートを沈めてバックスを突き放した。ブーチェビッチは35得点という数字以上に、バックスが勢いに乗りかかったシーンをことごとく潰す働きで試合に影響を与えた。

「バスケットボールではランがカギになる。バックスは攻撃の手を緩めなかったけど、そこにしっかりと対応して反撃できた。それができないとプレーオフでは戦えない。僕がアグレッシブにプレーすればチームのパフォーマンスは良くなる。ボールを持ったら攻め気を出し、相手の注意を引き付けてボールを回すんだ」

その一方で、ディフェンスについてはチームでの働きを強調する。アデトクンボは31得点17リバウンド7アシストと大活躍したが、それでも彼がコートに立っている間の得失点差は-9。マジックは上手く試合をコントロールした。「ギャリー・クラークが良いディフェンスをしたし、僕らもサポートした。すべてがパーフェクトじゃなかったけど、チームとしてやるべきプレーを粘り強くやり続けた結果だよ」

そのアデトクンボは敗戦に少なからずショックを受けた様子ではあったが、「僕らのプレー自体が悪かったとは思わない」と語る。「彼らのプレーが素晴らしかった。特にどの選手もシュートがよく決まったよね。でも、大事なのは相手じゃなく、僕らがハードに戦い続けること。第2戦で流れを変えたいけど、まずは自分たちがハードに戦うことに集中したい」

もっとも、マジックが優勝候補のチームに初戦で勝ったのは昨シーズンも同じ。ここで気を緩めず、この日と同じパフォーマンスを保って初めて、バックス相手のシリーズ突破が見えてくる。その点、昨シーズンの経験が生きるとブーチェビッチは言う。

「まだ1試合だし、バックスもこのままじゃ終わらないだろう。シリーズを良い形でスタートできたのはうれしいけど、次の試合で僕らはもう一つ上のレベルに行くことが必要だ。プレーオフは毎試合が新しい試合だから、今日の試合の映像を見て、自分のどのプレーが通用したのか、相手のどこを攻めるべきかを確認する。今日の僕らの準備は見事だったと思うけど、僕らのようなアンダードッグのチームにミスは許されない。次の試合に備えるよ」

彼が言うように、マジックにミスは許されない。だが、それが分かっていれば対処のしようはある。続く第2戦で両チームが初戦から何を学び、何をコートで表現するか。プレーオフはまだまだ始まったばかりだ。