スタッツは落とすもパフォーマンスは向上
グリズリーズは『バブル』での8試合で2勝6敗と失速。8位から9位へと順位を下げ、プレーインに挑むもトレイルブレイザーズに敗れた。ジャレン・ジャクソンJr.がケガで離脱していたことに加え、ジャ・モラントもラプターズ戦から右手の親指を骨折していたことが明らかになっており、これでは戦えないのも無理はない。こうしてグリズリーズの2019-20シーズンは幕を閉じた。
渡邊雄太にとっても、この敗戦をもってNBAでの2シーズン目が終わったことになる。2ウェイ契約の渡邊はグリズリーズとGリーグのメンフィス・ハッスルを行き来しながら、NBAで18試合に出場し、平均5.8分のプレータイムで2.0得点、1.5リバウンドを記録した。1年目の昨シーズンに比べて出場試合数こそ増えたが、プレータイムが11.6分から半減したことで、得点、リバウンド、アシストとどのスタッツも落とすことになった。
コートに送り出されるのは試合の勝敗がすでに決した後の残り数分というケースも多く、指揮官テイラー・ジェンキンスの信頼を得ていたとは言い難い。ただ、これはジャレン・ジャクソンJr.、ブランドン・クラーク、ジョシュ・ジャクソンと同じポジションで渡邊より若い選手の起用が優先されたチーム事情もある。『バブル』にも参加したが出場は1試合のみに終わり、最後のプレーインでも出場機会はなかった。
しかし、スタッツは落ちても渡邊の成長はコート上でのプレーで確認できている。フィールドゴール成功率は29.4%から44.1%へ、3ポイントシュート成功率は12.5%から37.5%へと向上した。しかも、短い時間でも遠慮せずに自分でアタックを仕掛けて自分の力をアピールする姿勢を、シーズンを通して貫いた。パフォーマンス自体は、2年目で確実な向上が見られる。
昨夏のワールドカップでの最終戦、すでに消化試合となったモンテネグロ戦で渡邊は吹っ切れたように強引なアタックを繰り返して34得点を挙げている。「背中でチームを引っ張ろうと思った」とこの時に語った姿勢を、グリズリーズのガベージタイム(勝敗が決した後の時間)でも貫いた。
Gリーグでは22試合に出場し、平均32.7分のプレータイムで17.2得点、5.7リバウンド、2.2アシスト、1.0ブロックを記録。Gリーグではエース級の活躍を見せているが、ここでの活躍がNBAでの評価に繋がらないのが渡邊の悩みどころだ。
リーチの長さとアジリティを生かして1番から4番まで守ることのできるディフェンス力は計算できる。これに加えて得点能力も認められれば、プレータイムは伸びていくはず。渡邊とグリズリーズの2ウェイ契約は今夏で切れる。継続路線を取るであろうグリズリーズを離れるべき時が来た。
渡邊のようなディフェンス面で計算できるオールラウンダーを重宝するチームはありそうだし、来シーズンの編成ではどのチームも『節約』を強いられるのは間違いなく、その意味でもニーズは出てくるはずだ。腐ることなくチャレンジを続けた成果がこの夏に新たな契約に結び付くか。渡邊のプレースタイルを理解し、その価値を認めてくれるチームが現れることを願いたい。