一挙13得点の荒稼ぎを見せた『ナベタイム』
宇都宮ブレックスはサンロッカーズ渋谷との首位攻防戦を制し、SR渋谷の開幕からの連勝を止めたとともに、チームの連勝を6に伸ばした。
安齋竜三ヘッドコーチが「ピック&ロールからパスアウトして、そこからの展開を何回もやれと伝えました。シンプルにやったほうが流れもできるし、そこが3クォーターで良いオフェンスの展開になった」と語ったように、第3クォーターを30-20で上回ったことが勝因の一つになったが、このビッグクォーターを演出したのが渡邉裕規だった。
渡邉は2本の3ポイントシュートを含む、3本のフィールドゴールと5本のフリースローをすべて成功させ、このクォーターだけで13得点を記録した。
渡邉はその時間帯をこのように振り返った。「僕が点数を取れた3クォーターというのは、(鵤)誠司が4番をやったりしていた時間帯。彼が入ることによってボールが止まらなくなって、流れがすごく良くなった。そこで僕が空いて、シュートを決められたのは良かったです」
渡邉が言うように、ライアン・ロシターと橋本晃佑を休ませる時間帯の宇都宮は、鵤が4番でプレーし、2m超えが1選手のみの極端なスモールラインナップだった。一般的な4番選手に比べ、走力がある鵤がいることにより、ボールムーブが速くなって、連動したチームオフェンスが実現したのだ。
第3クォーターで見せたような、渡邉の一度入りだすと止まらない状態を『ナベタイム』と呼ぶことがある。クラッチタイムでのパフォーマンスなのか、連続で3ポイントシュートを決めた時にそう呼ばれるのか、その定義は定まっていない。本人的にも「分かんないです(笑)」と言う。
「それは僕が決めることじゃなく、僕がそう呼んでくださいと言って作ったものでもないので。だから皆さんで判断していただけるとうれしいです」
「我慢して自分たちの時間を作ったことが一番の成果」
またこの試合は、互いにフリースローの成功率がそこまで高くなく、突き放すチャンスや追いかける展開でやきもきするシーンが見られた。その中で渡邉は7本中6本のフリースローを成功させ、及第点の成績を残したが、フリースローを打つ際にボールを頭を打ちつけ、気合を入れる場面が見られた。
「本当に1本1本が大事になりますし、いつもライアンが外したりして、入れろよって思っているので(笑)。入れないとという気持ちがあって、気分的にも上がっていました」と、その仕草の理由を語った。
もちろんすべての試合が大事だが、渡邉の気合がいつも以上だったのは訳がある。それは週末開催とは違うことと、同地区対決ということに起因する。
「1試合しかできないというのもあるし、同地区の試合なので。この試合を落とすのと、勝ち切るのでは、だいぶ変わってくると、コーチも言っていましたし、僕らもそう思っていました。平日の1試合ですけど、この1勝が後半戦になるにつれ、響いてくる可能性はあると思います。だから重要な試合だったと僕は思うんです」
まだシーズンは始まったばかりで6試合から8試合しか消化していないが、すでに今シーズンの東地区の勢力図は大きく変わっている。チャンピオンシップを見据える上で、戦績が同じ場合は直接対決での戦績がモノを言うため、1勝の価値はこれからますます高くなっていく。
「チームの事情を言えばいろいろとあるんですけど、自分たちに自信を持ってできたのが勝因かなと。相手の連勝を止めたのがうれしいというより、我慢して自分たちの時間を作ったこと、40分間できたことが僕らの一番の成果かな」
宇都宮はジェフ・ギブスと竹内公輔を欠く状態で千葉ジェッツ、シーホース三河に続き、東地区首位を走っていたSR渋谷を撃破した。1勝の重みを理解している渡邉はあらためて今のチームに自信を深めた。
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