「味方がしっかりパスを出してくれたので決めるだけでした」
『第101回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会』の決勝戦で、アルバルク東京がシーホース三河を72-64で撃破し、2012年以来となる優勝を果たした。
年末年始にかけてA東京はBリーグの戦いで大倉颯太、中村浩陸の両ポイントガード、シューターの安藤周人とバックコート陣に故障者が続出。プレーできるのは9名のみという満身創痍の状況で今大会を迎えた。この苦境の中で頂点に立てたのは、普段は出番の少なかったベンチメンバーの奮闘が大きな要因となった。
特に大きなステップアップを果たしたのが福澤晃平だ。今シーズン、Bリーグでの福澤は平均11分半の出場で3.9得点だが、この天皇杯ではベスト8の群馬クレインサンダーズ戦、ベスト4の三遠ネオフェニックス戦、そして決勝と3試合連続で3ポイントシュートを複数成功。特に決勝では、前半に三河に行った流れを食い止める値千金の長距離砲も沈めて9得点と活躍した。
A東京にとって今回は2年連続の決勝で、昨年は琉球ゴールデンキングスに敗れあと一歩でタイトルを逃した。この決勝で福澤は自陣からボールを運んでいる際、琉球の岸本隆一の激しいプレスディフェンスを食らってスティールを許すと、直後にアンスポーツマンライクファイルを犯してしまう。このミスは琉球に大きな勢いを与え、試合のハイライト場面の一つとして大きく取り上げられた。
もちろんこの福澤のミスだけでA東京は負けた訳ではない。ただ、本人にとっては大きな後悔が残った。だからこそベスト4で勝った後、「個人的にも決勝への思いは強いです。チームメートにすごく助けられて、決勝に戻ってこられたのはうれしいです。ただ、うれしいで終わるのではなく、去年とは違うことをしっかり結果で示したいです」と強い思いを語っていた。
迎えた本日の決勝、福澤は有言実行で去年とは違うことを示し、勝利に大きく貢献した。キャリア初の日本一に「最高です」と笑顔を見せると、自身のプレーをこう振り返る。「シュートタッチは結構良かったです。味方がしっかりパスを出してくれたので、それを決めるだけでした。しっかりと思い切りよく打って自分の良さが出せたかなと思います。(シューターの)安藤選手がケガをして出られない中、3ポイントの部分で自分がちょっとでもカバーしたい気持ちを持っていました」
あらためて決勝をどんな気持ちで迎えたのかを聞くと、こう答えてくれた。「昨日は去年のことがちょっとチラつきました。でも今日は去年のことを一切考えずにゲームに入ることができました。去年のことは去年のことで、もう取り返せないことは間違いないです。今年優勝したからといって去年のミスが帳消しになることはないと思います」

高校の先輩、バランスキーと一緒の優勝「特別なことです」
そして、彼は個人的にリベンジできた達成感より、「少しはチーム、アルバルカーズの皆さんに恩返しのプレーができたかなと。そういう意味で今年優勝できたのは良かったと思います」と言い、苦しい時に支えたくれたチーム、ファンへの感謝を形にできたことのうれしさを強調する。
また、福澤にとって今回の優勝がより特別なモノとなった理由の一つがザック・バランスキーの存在だ。福澤にとってバランスキーは東海大三高(現在は東海大諏訪)の先輩だ。「高校の1学年上の先輩とこうやってまたプロの舞台で同じチームで戦ってタイトルを取ることはなかなかあることではないと思います。そのことを2人で話して、めちゃくちゃ喜びを分かち合うというキャラではないですが、あらためて考えると、高校で一緒にプレーした先輩とプロで優勝できたことはうれしいですし特別なことです」
福澤にとって今シーズンはA東京で3年目となるが、今のような出番を勝ち取るまでの道のりは険しく、加入1年目は34試合出場、平均6分半とローテーションに入ることができなかった。この厳しい結果を受け、オフに肉体改造を行うなどフィジカルを高め、昨シーズンは54試合出場、平均10分出場と出番を増やした。そして今回、天皇杯の大舞台でタイトルをもたらす活躍を見せた。
同じタイミングでA東京に加入したデイニアス・アドマイティスヘッドコーチについて、福澤はこう語る。「求められる基準のプレーができなかった時はすぐに交代させられたり、出られなかったりしてもちろん悔しい思いもしてきました。でも、基準以上のプレーをすればこの大会のように出番をもらえます。厳しいコーチですけど、僕にとってすごく分かりやすいですし、コーチのおかげで成長できていると思います」
今回の天皇杯は、福澤の存在価値を大きく高める大会となった。それでも、「まだ、あまり優勝の現実味がないところもありますが、みんなが喜んでいる姿を見ると本当に優勝したんだという気持ちになります」と充実感に浸ると共に、「まだまだリーグ戦は続きますし、EASL(東アジアスーパーリーグ)もあります。この結果で満足することなく、しっかりと上を目指して頑張っていきたいです」と貪欲だ。
A東京が天皇杯に続くタイトルを獲得するためには、チームに勢いを与える長距離砲をはじめとした、福澤のハイパフォーマンスが必要だ。
