廣島愛叶

第2クォーター途中まで同点、勢いでは上回る

福岡第一はウインターカップの初戦で四日市メリノール学院と対戦し、88-65の快勝を収めた。それでも第1クォーターは15-15と互角の攻防となり、大会初戦で立ち上がりに堅さのあった福岡第一よりも、相手の対策をきっちり遂行する四日市メリノール学院のアグレッシブな攻守が目立っていた。

この10分間を引っ張ったのは、スタメンで唯一の2年生となる廣島愛叶だ。インターハイの後にスタメンに抜擢された彼は、スピードもスキルもあってポテンシャルは申し分ないものの、最初は先輩に遠慮してしまって自分の持ち味を発揮できなかった。

「U18日清食品ブロックリーグでドライブやプッシュなど自分の持ち味を出せたことで自信がついて、それからは練習でも自分を出せるようになって、コーチや3年生にも認めてもらえたと思います。先輩たちが『どんどんやっていい』と言ってくれたおかげです」

廣島が言う『どんどんやっていい』は、この日の立ち上がりにも発揮され、第1クォーターだけで3本のシュートを決めてチームを勢いに乗せた。「福岡第一の誰がどんな特徴を持っているのかをしっかり押さえていて、得意なオフェンスをやられないように足を動かして守ることができました。そこからオフェンスではもうどんどん走ってペイントタッチ、そこから練習通りに攻めていきました」

山本草大コーチは福岡大学附属大濠の選手として、また昨年まではアシスタントコーチとして長らく福岡第一と戦ってきた経験を持つ。この試合に向けてはその知見を総動員し、選手が練習で試すプレーの一つひとつに「それは通用する」、「それは通用しない」をジャッジして準備してきた。

第2クォーターの頭も廣島は4本目のフィールドゴールを成功させ、リバウンドにも絡む積極性を見せる。第2クォーター残り6分の時点で22-22と引き続き互角に渡り合っていたが、その後は2-13のランを浴びた。

福岡第一

自分たちのプレーを我慢強く続けた福岡第一

福岡第一に一気に流れが傾いたことに複雑な理由はない。福岡第一が自分たちのプレーを我慢強く続けたのに対し、四日市メリノール学院は集中が続かなかった。それまで起点の段階で防いでいたトランジションを繰り出されるようになると、一気に点差は開いた。

福岡第一を相手にアップセットを起こすには、一度つかんだチャンスを40分間最後まで手放さずに食らい付くしかなかったが、それは果たせなかった。

「オフェンスで何をすればよいか分からなくなって、そこで迷い始めるとリバウンドを取られた時の戻りが遅くなり、どんどん点を取られました。足も動かなくなり、あっという間に点差を離れてました」と廣島は言う。

第2クォーターの前半までに廣島は9得点を挙げたが、福岡第一に流れが傾くと、彼の好調も途切れてしまい、その後は敗色濃厚となった終盤に速攻でレイアップを1本決めただけに終わった。

「自分たちがサボってしまうような部分があり、それがなければもっと戦えました」と廣島は悔しがる。福岡第一と15分間互角に渡り合っただけでも、チームはこの1年間で大きくしたと言える。

ただし、3年生は卒業し、廣島は唯一のスタメン経験メンバーとして新チームを引っ張る立場になる。「僕がこの夏から冬にかけて練習や試合で成長して自信をつけていったように、みんなが少しずつレベルアップできるよう自分が引っ張りたいと思います」

ウインターカップという挑戦は終わったが、新チームはすぐに始動する。この1年の急成長を新チームでも継続させられるか、廣島には新たにリーダーシップが期待されている。