ウォリアーズ

スプラッシュ・ブラザーズを軸にチームでの勝利

ウォリアーズの強さは『Strength in Numbers』。世界中のファンを魅了するトランジションとパッシング、運動量と連携、そしてファンの後押し。しかし、そこに後から加わったケビン・デュラントの存在は個人の強さを際立たせ、スローダウンしても得点できる万能性をもたらしました。その反面で、かつての『ウォリアーズらしさ』を欠くとの批判もありました。そのデュラントがケガで離脱したGAME6には、ファンの中にも『かつてのウォリアーズ』が戻ってくることを期待する空気感がありました。

その期待は現実になりました。大いに動き回るウォリアーズは、トランジションとパッシングでイージーシュートを作り、前半だけでペイント内で30得点を奪いました。それでも、チームの象徴であるステフィン・カリーは無得点。ファウルトラブルでベンチに座る時間が長かった前半でした。

デュラントとカリーを欠く状況、ヘッドコーチのスティーブ・カーは次々とベンチメンバーを起用し、スターター38点に対してベンチメンバーで20点と大成功します。またクレイ・トンプソンは21得点と活躍。その理由も全員が動き回る中でシュートチャンスが多く生まれたからです。

シューターのトンプソンはキャッチ&シュートが基本ですが、ハードなマークに遭う中では簡単にシュートを打つことができません。ベンチメンバーはトンプソンに打たせるために複数のスクリーンをかけ、そして外れたシュートに対してオフェンスリバウンドに絡みました。GAME5までとは明らかに違い『トンプソンに打たせる』ことを意識し、そしてトンプソンに引き付けられたディフェンスを見て、自分たちもイージーシュートを決めていきました。

『デュラントがいない』ことより『フレッシュなメンバーを長く起用した』ことに意味があった前半のウォリアーズ。しかし、実力的に劣るメンバー構成はディフェンス面で耐えられず、ロケッツに8本の3ポイントシュートを決められました。ジェームス・ハーデンに対抗できず、またキックアウトパスを出されると簡単にフリーで打たれてしまいました。

後半になるとこのシリーズ平均14点に留まっていたクリス・ポールが目を覚ましたように次々とシュートを決めていきます。試合を通してデュラントの不在はディフェンス面で響き、スモールラインナップでのカバーディフェンスが機能しませんでした。しかし、前半12分しかプレーせず無得点だったカリーがオフェンスで取り返し、後半だけで33点を奪います。

シリーズを通じてカリーを抑えていたロケッツでしたが、これまで素晴らしいディフェンスをしていたPJ・タッカーがスピードで簡単に振り切られるなど疲労の色が見えていました。替えの効かない選手だけに交代できず、カリーとドレイモンド・グリーンのピック&ロールに対して抵抗できなくなっていきました。

加えて後半のハーデンはフリースローが3本のみ。それも3ポイントシュートに対して得たフリースローであり、インサイドにドライブしていくシーンが少なくなりました。シュート自体は高確率で決まっているものの、タッカー同様に疲労を感じさせました。

終盤のウォリアーズのオフェンスは前半のように『かつてのウォリアーズ』を感じさせるものではなく、カリーの個人技が目立ち、トンプソンのシュート機会は大きく減りました。しかし、前半のファウルトラブルによってスタミナが残っていたカリーは次々に難しいシュートを決めていき、ファウルゲームでのフリースローも落とすことなく試合を締めくくりました。

昨シーズンから続くライバル対決は、デュラントの離脱、カリーのファウルトラブルをベンチメンバーの活用でうまく乗り切ったウォリアーズが制しました。厳しい試合日程の中、毎試合が白熱した展開になっていくプレーオフでは主力の疲労も溜まってきます。

トラブルが発生しても慌てることなく、そして追い込まれるほどに自分たちの強みを表現していった王者ウォリアーズ。『Strength in Numbers』という言葉通りの勝利でした。