ポール・ジョージが危惧する危機感欠如に『劇薬』投入
ペイサーズのプレーオフ進出に黄色信号が点灯し始めた。
3月28日にバンガーズライフ・フィールドハウスで行なわれたティンバーウルブズ戦に続き、29日には敵地でグリズリーズにも敗れた。現在はヒートと37勝38敗で並ぶ7位。プレーオフ進出が危うい状況に、エースのポール・ジョージは、ウルブズ戦で終盤に4点のリードを守り切れず敗れたチームの気構えについて「危機感が足りない」と辛辣なコメントを寄せた。
2018年にフリーエージェントになるジョージの周囲では、すでに出身地ロサンゼルスに本拠地を構えるレイカーズが獲得を検討していると噂されている。ペイサーズがプレーオフを逃すようではジョージの慰留が難しくなるのは必至。そのため、ペイサーズは賭けに出た。
3月29日、ペイサーズはガードのロドニー・スタッキーの解雇を発表。これに合わせるように、2010-11シーズンから4年間在籍したランス・スティーブンソンがペイサーズとの契約に合意したとの報道が相次いだ。
スティーブンソンはペイサーズを退団後の2014-15シーズンからホーネッツ、クリッパーズ、ペリカンズ、ウルブズと渡り歩いている『ジャーニーマン』だが、実力は折り紙つき。ジョージを中心とするペイサーズが、レブロン・ジェームズを擁するヒートとプレーオフで激闘を繰り広げた2013年と14年には中心選手として活躍していた。
おそらく球団社長を務めるラリー・バードは、負傷離脱中のアル・ジェファーソン、グレン・ロビンソン3世が抜けたロスターの強化に加え、勝利のためなら汚れ仕事を自ら引き受けるスティーブンソンを加えることで、緩んだ雰囲気を引き締める効果を狙っているのだろう。
スティーブソンは気性に難のある選手だが、マッチアップする相手を苛立たせるほど執拗なディフェンスをするタイプで、なおかつゲームメーク力も備えている。かつて一緒にプレーしたジョージがリーダーシップを発揮できれば大きな戦力になると考えたのだろう。
何よりも、ジョージは「優勝を狙えるチームなら」という条件付きでFA権取得後にペイサーズとの再契約を希望している。この部分でチームが何の努力もしなければ、ジョージを失いかねない。しかも流出先が、現役時代に鎬を削り合ったマジック・ジョンソンが現場責任者を務めるとなればなおさら。バードにとっては、緊急事態を回避する最初の一手がスティーブンソンの復帰だったようだ。
しかし、ペイサーズのプレーオフ進出は簡単には決まらない。残り7試合で東4位のラプターズと2試合、首位キャバリアーズ、6位バックスと強豪との対戦を残している。すぐ後ろには1.5ゲーム差でブルズも迫っているため、今後の明暗を左右する正念場を迎えた。