大学に向けたアピールを見据えて、ユースから高校へ
Bリーグユースやクラブチームの公式戦参加が認められるようになったことに伴い、学生バスケ界は大きな変革期を迎えている。特にユースに所属する選手たちにとっては、U15からU18に進むのか、それとも高体連に活躍の場を移すのかという決断は、自身の未来を左右する重要なものだ。
1年生ながら北陸学院の主力シューターを務める小野蓮太は、 ユースの強豪・名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15の出身。今年1月のジュニアウインターカップでは、大接戦となったライジングゼファーフクオカU15戦でチームハイの22得点を記録。そのフクオカU15を破って優勝した『B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2023』では優秀選手賞を受賞している。
ユースのポテンシャルはまだ未知数。特にU18の活動環境はチームによってばらつきが大きく、U15の有望選手がU18に進む例はまだ多くない。そのような中で、名古屋Dは早い時期からU18の環境を整え、ユース特別枠でトップチームに帯同する今西優斗、若野瑛太といった有望選手も在籍しているが、小野は彼らと同じ道を選ばなかった。理由を尋ねると小野は次のように話した。
「U18に残るという選択肢もあったんですけど、自分はずっとバスケを続けたいと思っているので、大学からのオファーというところを考えて高校バスケを選びました。大学でも高いレベルでプレーしたいので、高校で活躍して大学にアピールしたいなと。ドルフィンズには小学生のころから一緒にプレーしている仲間もいるのですごく悩んだんですけど、自分の人生なので、最後は自分の選択を取りました」
そして、北陸学院を選んだのは、自身の強みである3ポイントシュートが生きると思ったからだと話す。「これまでシューターとしてプレーしてきたので、チームとして3ポイントを第一に考えてる高校、自分がシュートを打てる高校がいいなと思って。北陸学院は濱屋(史篤)先生がすごく3ポイントを強調して作っているチームだったので、北陸学院を選びました」
ユースチームと高体連では、プレー環境やシステムなど様々な点に違いがある。「ユースは冷暖房完備の体育館で練習できて、シューティングマシーンやウエイトの器具も充実していました。あと、ユースは土日に試合がほとんどなかったですが、高校は毎週試合や遠征があるので驚きました」と小野。大人のスタッフが多くいわゆる「雑用」が少ないこと、メンバーが少人数ということも、ユースと高体連の違いと言えるだろう。
U15時代には感じられなかった歓声と高揚感
しかし小野はこのような違いも、自身の成長に欠かせないものととらえている。
「慣れた環境のほうがパフォーマンスが上がるのかもしれないですけど、ドルフィンズU15の末広監督(末広朋也=現琉球ゴールデンキングスサポートコーチ)からよく『いろんな環境でプレーすることが大事』と言われていました。ウインターカップも、最初は人の多さとか応援の迫力とかの雰囲気に驚いたし、雰囲気に飲まれてしまいそうにもなったんですけど、U15時代に『大きな歓声の中でプレーするということを意識しながらプレーしなさい』と言われていたので大丈夫でした」
1回戦の関西大学北陽戦はベンチスタート。23分の出場で3ポイントシュート9本中6本成功を含むチームハイの25得点を挙げて勝利の立役者となった。2回戦の相手は、この大会を制することになる福岡第一。小野は満を持してスタートで起用されたが、福岡第一の崎濱秀斗と山口瑛司に代わる代わる守られ、12得点に留まった。
62-74で試合を終えた後、小野は「強豪の福岡第一さんと最後まで戦えてよかったですが、3ポイントでチームを勢いづける立場なのに、それができずチームにすごく迷惑をかけてしまった。課題がたくさん残りました」と試合を振り返った。
一方で、崎濱と山口という福岡第一が誇るディフェンスマンにマークされたことについては「自分が第一さんに警戒されることで、チームに貢献できていると感じられてうれしかったです」コメント。「2人ともディフェンスのタイトさが全然違いました。2年、3年と学年が上がってきた時に、この経験が生かされていくんじゃないかなと感じます」
ユース時代に経験した大会は、コロナ禍の影響で観客は保護者のみだった。たくさんの観客が詰めかけ、4年ぶりに声出し応援が解禁された東京体育館。シュートが決まるたびに湧き上がる歓声は「すごくうれしかったです」と笑みを見せた。
目標はウォリアーズのステフィン・カリー。「今はキャッチ&シュートがメインだけど、ドリブルからの3ポイントだったり、ディープスリーだったり、タフなシュートも決められるようになりたい」と語る小野が、新たなステージでどのように成長していくか楽しみだ。