「トレーニングしてきたことの成果と価値を感じられました」
女子アジアカップ2023は本日に7位と8位の順位決定戦、そしてベスト4行きを決める試合が行われており、グループリーグ首位での4強入りを決めている日本は休息日となっている。
グループリーグの日本の戦いを振り返ると、チャイニーズ・タイペイ(94-53)、フィリピン(95-57)との最初の2試合はともに格下の相手に対し、最終的には大差をつけたものの自分たちのやりたいバスケットボールをやり切れたとは言えない内容だった。
それだけに首位通過をかけたオーストラリア戦はWNBAのシーズン中で主力の大半を欠くとはいえ、世界屈指の強国相手だけに苦戦が予想されていた。実際に試合の立ち上がりはいきなり0-8のランをくらい、暗雲が立ち込めた。しかし、女子日本代表は激しくプレッシャーをかけるディフェンスからリズムをつかむと、積極的にドライブを仕掛け、人とボールが動くオフェンスで相手のマークを次々と剥がしていった。その結果、持ち味の3ポイントシュートが爆発し91-66で圧勝した。
東京五輪後に発足した恩塚亨ヘッドコーチ体制においてはベストゲームと呼べる内容で、指揮官もこのように大きな手応えを語っている。「選手全員がちゃんと自分たちの戦い方を理解して、相手のメンタルも削ることをブレずにできました。自分たちがトレーニングしてきたことの成果と価値を感じられました」
そして、戦術の遂行力などいろいろな要素はあるが、中でも恩塚ヘッドコーチは「システムを超えた選手たちの気持ちの一体感がありました。チーム全員でみんなのために戦うことができました」と精神的での収穫を強調した。
「本質として、勝っていても負けていても自分たちのやることは変わらない」
日本代表には自己本位でわがままなプレーをする選手はいない。だが、自己犠牲に溢れチームファーストを徹底できる選手たちだからこそ、「自分の調子が良くない、うまくできないと自分に矢印を向け過ぎる。責任感が強く出過ぎてしまうところがありました」とヘッドコーチが考えるマイナス面があった。
しかし、オーストラリア戦では「仲間が自分の調子が悪いところをサポートしてくれる。だからこそ、自分のできることを徹底してやり続けよう」と、お互いにサポートし合う信頼関係を持ち、良い意味で味方を頼る助け合いのプレーを最後まで戦い続けることができた。
勝てば五輪最終予選決定というビッグゲームで内容的にも文句なしの勝利を収められたことで、「1つ壁を乗り越えられました。自分たちの目指しているものは、こういうことだと選手たちも手応えを得たのは見ていて感じられます」と、ヘッドコーチはチームが上昇気流に乗っていると感じている。
この良い流れをさらに大きく、力強いものにするためには明日のベスト4でも同じく質の高いプレーを続けて勝つことが大切だ。恩塚ヘッドコーチは語る。「いくら頭で考えていたり言い続けていたとしても、試合で実践することでしか得られないものがあります。それは試合での成功体験によってより強固になっていきます」
そして準決勝、決勝とよりタフな戦いが待ち構えているが「本質として勝っていても、負けていても自分たちのやることは変わりません。変わるのは我慢の量だと思いますが、高いエネルギーを出し続けることは、大事にしていきたいです」と、戦い方がブレることはない。
最後に「オーストラリア戦のプレーにチームの完成形が見えましたか」と尋ねたこちらの質問に指揮官は「コーチとしてのターニングポイントになるかなと」と答えている。この予感を確信に変え、チームをさらにレベルアップさせていくためにも、アジアカップ6連覇というこれ以上ない成功体験を勝ち取ることが必要だ。