ウエイブされた後、金銭面で譲歩することで『新たな道』が生まれる
NBAファイナルの第3戦がマイアミに舞台を移して行われたにもかかわらず、現地6月7日にはクリス・ポールの去就が大きな話題となった。
『Bleacher Report』が、サンズは38歳のベテラン司令塔との契約を解消する見込みで、本人にもこれを通達したと報じたのを機に、議論が沸騰した。サンズは残り2年の契約を、今月28日までに1580万ドル(約21億円)の違約金を払うことで破棄できる。こうしてフリーエージェントになった時、クリス・ポールはこれまでより大幅に安い年俸で契約することが予想される。
彼は若い頃からプレーオフになるとケガをする不運に何度も見舞われている。今シーズンもプレーオフに入ると鼠径部を痛めて最後までプレーできなかった。タフなスケジュールをこなすのが難しくなり、プレーの強度が上がるプレーオフでの活躍が計算できなくなったが、バスケIQに年齢による衰えはない。彼の能力自体は今も多くのチームに重宝されるものだ。
ポールが金銭面でどれだけ譲歩するかは分からない。それでも彼が高額契約にこだわり、キャップスペースに余裕のある中堅クラブや再建チームで現役生活最後の数年を過ごすとは思えない。それなりの譲歩を受け入れて、キャリア初のNBA優勝を追い求めるだろう。
その移籍先として急浮上したのが、この3年間レブロン・ジェームズと組むポイントガードを探し続けてきたレイカーズだ。ラッセル・ウェストブルックは大失敗で、ディアンジェロ・ラッセルでようやく落ち着いたかに見えたが、彼もまたプレーオフで失速し、今は契約延長の是非が問われている。オースティン・リーブス、八村塁と新たな契約を結ぶ一方でラッセルとの契約延長を見送り、ポールを加える。全盛期を過ごしたロサンゼルスに戻り、親友であるレブロンとともにNBA優勝を追い求めるのは、ポールにとって最良のシナリオかもしれない。
古巣クリッパーズもポイントガードの人選に苦労している。バックスもチーム再編の時期を迎えている。ジェームズ・ハーデンがフリーエージェントとなるセブンティシクサーズ、ジャ・モラントの長期出場停止が見込まれるグリズリーズなど、他にもポールを必要とするであろう上位チームは多数ある。
一方で、フェニックスの地元メディアである『Arizona Sports』は、「サンズにクリス・ポールを手放すつもりはない。我々はそうクラブに確認を取った」とし、議論のきっかけとなった『Bleacher Report』の記事が間違いだと指摘している。
旬を過ぎたベテラン選手が、優勝のために自分の契約を犠牲にする例はこれまでにもある。『Arizona Sports』は「サンズは1580万ドルを支払ってポールとの契約を解除し、今の彼のコンディションに見合った金額で再契約を結ぶ方針」と報じるとともに、「ポールが来るまでのサンズがどんなチームだったかを思い出そう」と、フェニックスのファンにポール放出がいかに愚かなことかを力説している。
クリス・ポールから見ても、自分が作り上げた今のサンズには愛着があり、慣れ親しんだ環境でもある。デビン・ブッカーとケビン・デュラント、ディアンドレ・エイトンの個性を司令塔として引き出し、『自分のチーム』で優勝を目指す。言われてみれば、こちらこそポールにとって理想のシナリオのように思える。