チームがまとまり、優勝を目指せる位置にいたネッツは大ピンチに
カイリー・アービングがネッツにトレードを要求した。カイリーは2月9日のトレードデッドラインまでの移籍を望んでおり、それが実現しなければ7月にフリーエージェントで退団するとネッツに通告したという。
ネッツは31勝20敗で東カンファレンスの4位。開幕から2勝5敗と低調なスタートを切った時点でヘッドコーチのスティーブ・ナッシュを解任し、このショック療法を機にチームは持ち直した。この1カ月はエースのケビン・デュラントをケガで欠いて4勝7敗と負けが先行しているが、チームの雰囲気は決して悪くない。後任指揮官のジャック・ボーンの下でチームがまとまり、攻守にチームバスケが機能している。そのネッツをオフェンス面で引っ張るのが平均27.1得点、5.3アシストのカイリーだった。
ただ、その彼にはトラブルメーカーの一面がある。これまでも編成に口を出し、メディアやファンと対立し、新型コロナウイルスのワクチン接種を拒んだことで多くの試合を欠場してきた彼は、今シーズンも開幕早々に反ユダヤ主義を支持するかのような言動を取り、ネッツから出場停止処分を科された。さすがのカイリーもこれには懲りたのか、謝罪の上でコートに復帰し、その後はバスケに集中して素晴らしい結果を残していた。
カイリーの出場停止明けからチームは勝てるようになり、バスケの質も大きく向上。リーグ屈指のスター選手であるデュラントの活躍はもちろん、新戦力のロイス・オニールが攻守を束ねる存在となり、ニコラス・クラクストンが守備の要として成長、渡邊雄太も3&Dとして、またチームのムードメーカーとして大きく貢献していた。
好調なチームの主軸を務めることでカイリーもハッピーであるように見えた。カイリーとネッツの契約は最終年を迎えているが、カイリーの代理人はネッツとの関係が良好なことをアピールし、契約延長について交渉中だと明かしていた。
ところが2月9日のトレードデッドライン直前の今になって事態は急転した。『The Athletic』によれば、ネッツが提示した新契約があまりに低かったためにカイリー側が交渉を打ち切り、今回のトレード要求に発展したそうだ。
30歳のカイリーはコンディションに問題はなく、実力も証明済み。移籍先の候補にはレイカーズ、サンズ、マーベリックスが上がっているが、このタイミングでのトレード要求となればネッツは足元を見られ、良い条件でトレードをまとめるのは簡単ではない。
カイリーが抜けることで、今のネッツの良いケミストリーもご破算になるだろう。カイリーと仲の良いデュラントが、今回の出来事をどう受け止めるのかも大きな懸念事項となる。悲願のNBA優勝を狙える好位置につけていたはずのネッツだが、またしても大きなトラブルに見舞われることになった。