パスカル・シアカム

バンブリート「僕らの可能性を示す試合だった」

下位のピストンズ相手に大敗し、デトロイトからミルウォーキーへと移動して翌日にバックスと対戦。ギャリー・トレントJr.とスコッティ・バーンズのスタメン2人、さらにはケム・バーチをケガで欠いたラプターズに勝ち目はないと思われた。実際、試合開始から4分で2-16と圧倒された。

ところが勝負は分からない。指揮官ニック・ナースはほぼ6人ローテーションで前年王者バックスにぶつかり、前半のうちに点差を詰めると後半は接戦に持ち込む。フレッド・バンブリート、OG・アヌノビー、パスカル・シアカムはほぼ出ずっぱり。善戦はできても終盤にガス欠を起こしてバックスにねじ伏せられるかと思いきや、逆にこのコアの3人がクラッチタイムにビッグプレーを連発して、103-96で競り勝った。

司令塔のバンブリートは17得点7アシスト2スティールを記録。オフェンスでは少々自分で行きすぎた感はあったが、使える選手が少ない中で最大限の積極性を出した結果であり、その闘志はチームメートにも伝わった。試合終盤にヤニス・アデトクンボの懐に飛び込んで奪ったスティールは、勝利を決定付けるものだった。「僕らの可能性を示す試合だった。ベストコンディションであれば、どこが相手でも戦えるんだ」と彼は言う。

OG・アヌノビーはクリス・ミドルトンとのマッチアップで上回り、24得点8リバウンド4アシストとマルチな活躍を見せた。残り1分を切ってファウルアウトとなったが、それまでディフェンスを支えた。

そしてシアカムは30得点10リバウンド10アシストのトリプル・ダブルを記録。30得点6リバウンド4アシストのアデトクンボを上回った形だ。もっとも、アデトクンボはファウルなしで止められる相手ではなく、個人ファウル5つでベンチに下がることになったが、残り6分46秒に戻って来た後はファウルアウトすることなくアデトクンボに対応し続けた。「馬鹿なファウルをしないように、同時に攻守ともにアグレッシブにやろうと考えていた」とシアカムは言う。

戦う前からあきらめてもおかしくない状況でありながら、ラプターズの選手たちはボールへの執着心、勝負どころでの集中力で上回った。バックスのフィールドゴール成功率33.8%と隙のないディフェンスで抑え込み、リバウンドでも大きく上回った。その点ではクリス・ブーシェイ、プレシャス・アチウワ、ジャスティン・シャンパニーも大健闘したと言っていい。

健康安全プロトコルで多くの選手が抜け、ケガも重なる。そんなことばかりが続くチーム状況について、指揮官ニック・ナースはこう語る。「雪にタイヤを取られて、前に進まないような感覚を受けることもある。このリーグは長く厳しい戦いで、ちょっと調子が上がったと思えば何人かの選手が離脱して逆戻りだ。だが、何が起きるか分からないという現実を受け入れ、前を向いて進む。ボールが上がったら戦い、自分たちに何ができるかを見せるんだ」

その答えがバンブリートの言う「僕らの可能性を示す戦い」だったのだから、ラプターズにとっては今シーズン最も価値のある勝利だと言えるのかもしれない。バンブリートとアヌノビー、シアカムのコアが揃っていればラプターズは安定した強さを発揮する。トレントJr.とバーンズがいれば、その力はさらに増す。

ただ、渡邊雄太がこの快勝に乗り遅れたのは心配だ。トレントJr.の欠場で先発のチャンスが巡ってきたが、立ち上がりにバックスに圧倒される展開で支えられず、試合開始から5分20秒プレーしただけで下げられ、その後は出番がなかった。代役のシャンパニーはオフェンスでは見るべきものがなかったがディフェンスで、12リバウンドと1ブロックを記録。ラプターズの選手らしいクラバーかつハードなプレーで勝利に貢献している。