「このビジネスでは何が起きるか分からない。自分が安全とは思わないよ」
キングスはここまで18勝27敗、西カンファレンスの10位と結果が出ていない。開幕から1カ月でルーク・ウォルトンを解任。それまでの成績は6勝11敗、アシスタントコーチのアルビン・ジェントリーが指揮を執るようになって12勝16敗と勝率は上がったものの5割に満たず、順位は上がっていない。このままだと16シーズン連続でプレーオフ進出を逃すことになる。
そうなると、チーム再編が検討される。このチームで最大のスター選手はディアロン・フォックス。3ポイントシュートは苦手だが抜群のスピードと得点スキルを持ち、インサイドを固められてもこじ開ける力がある。フォックスの個人技をより効果的に引き出すのが2年目のタイリース・ハリバートンで、バスケIQを生かして単調になりがちな個人技中心の攻めにアクセントを加えてチームオフェンスを動かす。
このガードコンビを軸として強力なチームを作るのがキングスの『未来図』だったのだが、それはご破算になるかもしれない。頼みのフォックスがキャリア5年目にして初めて平均得点を前年から落としており(25.2得点から21.0得点に)、アシストも減少。強烈な個があるから引き立つハリバートンのゲームメークも、これに伴い目立たなくなった。
今週の会見でフォックスは「僕たちが苦戦しているのは事実だから、トレードの可能性についても考えてしまうよ」と語った。もともと自分の考えを率直に話すタイプのフォックスは、こう続ける。
「僕はここに5年間いて、ここで人生を築いて家族も持った。もしかすると、すべてが変わるかもしれない。ただ、コートに立てばそんなことは関係ない。トレードは僕にコントロールできるものじゃないから、何も考えないようにしている。それでも何度かのトレードデッドラインを経験して、最後の最後でトレードされる選手を見てきた。ビジネスだから何が起こるか分からないし、Twitterを見ていればトレードの噂は目に入ってくるよね。トレードの可能性があることは考えておかなきゃいけない」
「トレードになってほしいとは言わないけど、このビジネスでは何が起きるか分からない。リーグで最高の選手であってもトレードされる時はされるんだから、自分が安全だとは思わないよ。ただ、僕はこの街に愛着がある。サクラメントはバスケットボールの街で、キングスはこの街で唯一のプロチームだ。みんなキングスとその選手に純粋な愛を持っている。それが僕は大好きなんだ」
フォックスが「目に入ってくる」と言うトレードの噂は、ペイサーズとセブンティシクサーズを相手とするものだろう。ペイサーズは15勝28敗で、東カンファレンスのプレーオフ争いから早々に脱落しつつある。ドマンタス・サボニスやマイルズ・ターナーを手放して再建に舵を切りそうな気配だ。シクサーズは『ベン・シモンズ問題』をいまだ抱えており、指揮官のドック・リバースはトレードデッドラインに向けて「これから騒々しくなる」とコメントしている。シクサーズでのプレーを拒否しているシモンズのトレードを成立させるのは喫緊の課題であり、同時にトバイアス・ハリスのトレードも目論んでいるようだ。
シクサーズはシモンズについて、オールスター選手とのトレードにしか応じないと言われている。フォックスにオールスター選出の経験はないが、それに準ずる存在と見ていいだろう。ジョエル・エンビードをインサイドの軸に据えるシクサーズのガード陣にフォックスが加われば、東のトップチームへとステップアップできる。「これから騒々しくなる」のは、キングスとフォックスにも当てはまりそうだ。