新体制でゼロベースのチーム作り、同時に勝利が求められる難しさ
ポール・ピアース、ケビン・ガーネット、レイ・アレンを中心とした時代が終わってから、セルティックスを再びトップチームへと導いたのは、ブラッド・スティーブンスという天才ヘッドコーチでした。次々と繰り出される魔法のような采配は、スター選手不足でもチームを勝利へと導き、セルティックスはあっという間に優勝を狙えるチームへと姿を変えました。
チームが強くなることはフリーエージェント選手が集まることにも繋がり、またドラフトで指名したジェイレン・ブラウンやジェイソン・テイタムの台頭もあって、セルティックスは豪華戦力を擁するスター軍団となりました。それでも、膨れ上がる期待に反しプレーオフでは煮え湯を飲まされてきました。そして新型コロナウイルスやケガ人に悩まされた昨シーズンが終わると、スティーブンスはヘッドコーチを退任。一つの時代が終わるとともに、ダニー・エインジに代わる球団社長として新たな時代をスタートさせました。
今オフはこれまでと違い、チームの中心となる大物フリーエージェントを求めるのではなく、テイタムとブラウンを中心に選手層を厚くする編成へとシフトしました。ベテランのアル・ホーフォードとエネス・カンターを呼び戻し、ガードには攻守それぞれに特徴のあるデニス・シュルーダーとジョシュ・リチャードソンを加えたことで、チームには経験と多用な武器が加わりました。
近年のセルティックスは豪華なスターターと若手中心のベンチ陣という構図でしたが、新シーズンは各ポジションの層が厚くなっており、試合展開に応じて選手を使い分け、柔軟に戦っていくロスター構成へと変化しています。主役となるテイタムとブラウンをベテラン陣が経験を生かしてサポートしていくことを目指した補強になっています。
新加入が多いだけでなく、これまでとはタイプの違う選手が加わったこともあって、シーズン前半はベストな起用法を探すことに苦労するかもしれません。また、昨シーズンはテイタムの個人技に託すパターンが多くなり、それがチームのバランスを崩すことにも繋がっていたため、戦術面も見直す必要があります。新体制になってチームはこれからゼロベースで作るのですが、戦力は充実しているため、新ヘッドコーチのイメイ・ユドカにはベースが固まっていない中でも勝利をつかみ取る采配が求められます。
ヘッドコーチの交代、テイタムとブラウン中心のチームへの変化と、セルティックスにとっては新たな時代へと踏み切るシーズンになりました。すぐに優勝を目指すチームになるのか、それとも成長段階のチームにしばらく留まるのか。期待も不安もある中でのシーズンインとなります。