山内盛久

山内盛久はこの夏に、2017-18シーズンから4シーズン在籍したサンロッカーズ渋谷を離れ、三遠ネオフェニックスに移籍した。bjリーグ時代には琉球ゴールデンキングスで優勝を経験し、SR渋谷でも天皇杯優勝を成し遂げてきた山内が選んだ移籍先は、昨シーズンは勝率2割と低迷した三遠ネオフェニックスだ。新天地に三遠を選んだ理由や、新たに8名の選手が加わったチームでの役割を山内に聞いた。

「何も考えないでやっていたルーキーの頃の方が楽だったかな」

――まずはSR渋谷での4年間について聞かせてください。2020年には天皇杯で優勝し、昨シーズンはクラブとしてはBリーグ初年度以来のチャンピオンシップ進出を果たしました。

新しい自分を発見できた4年間でした。琉球にいた時はルーキーから始まって、ポジション的にもガードというより2番ポジション。ディフェンスと走り回るのをメインにやっていましたが、SR渋谷に来てからはほとんど1番でプレーをしました。年齢的にも中堅になってきたので、若手みたいにガツガツと行くよりも、考えながらゲームの流れを読んでしっかりプレーすることを渋谷で学んだので、沖縄にいた時とは違うバスケを教わった4年間でした。ムーさん(伊佐勉ヘッドコーチ)の下でプレーすることは変わらなかったので、やることは基本的に変わらなかったですが、役割や責任は大きくなったと思います。

――ガツガツとプレーしていた若手の頃と、責任が増してきた中堅になった今とでは、バスケの楽しさにも違いがありますか?

それはそれで楽しさがありますが、何も考えないでやっていたルーキーの頃の方が楽だったかなとは思いますね。あの時はガムシャラに何も考えずにやっていました。ただ、今は若手にやらせる立場になってみて、当時は先輩方にすごく迷惑をかけていたなと思います。今の若い子は一見やんちゃそうに見えるんですけど、バスケになるとすごく真面目なんですよ。素直なバスケをするので、もう少し若手っぽく、悪あがきをしてもいいのかなとはすごく思いますね。

――山内選手は伊佐勉ヘッドコーチとずっと一緒で、山内選手が高校生の頃からの関係だと聞きました。プロの世界に移籍は付き物ですが、キャリア11年目にして初めて別々のチームになったと思います。

そうですね。高校2年生の頃からなので、12、3年になります。同じチームじゃなくなるのは初めてで、やっぱりすごく寂しい気持ちはあります。僕がプロになれたのはムーさんのおかげです。天皇杯は優勝しましたけど、Bリーグで日本一のヘッドコーチにしたいというのが自分の中ではあって、そこの目標がなくなってしまったのはすごく残念です。でも、別々のチームになっても関係が終わるわけではないので、しっかり気持ちを切り替えて、逆に成長した姿を見せて、また一緒のチームで仕事ができるように頑張りたいです。

山内盛久

「下位のチームに行ってイチから這い上がる方が自分の性に合っている」

――それでは今回、三遠に加入した理由を教えてください。

一番は「このチームでやってみたい」というのが、すごく大きかったからです。正直、条件がもっと良いチームもありました。ただ、金額とかではなく、単純に球団の熱意とメンバーを見て、このチームでやりたいなと。自分の性格的にも常勝チームに入って頑張るよりも、変な言い方ですが、下位のチームに行ってイチから這い上がる方が自分の性に合っていると思ったので、そこが大きな決め手です。

――今まで三遠は対戦相手でしたが、どんなイメージを持っていましたか?

僕はbjの時から対戦しているので、毎年毎年、良いチームだなとすごく感じていました。その一方で、もう一つ惜しいなというのも同時に感じていました。今シーズンは新たにガラッとチームを崩壊してイチから作り直しているので、球団からも自分が持っているものをチームに浸透させてほしいと言われています。そういったバスケ以外の部分で挑戦してみたいと思ったのも、三遠に来た理由の一つでもありますね。

チームからは「ここ数年は勝てていなくて逆に負けに慣れてしまっている部分がある」と言われました。勝つメンタル、勝ち続けるメンタル、そういうメンタリティを植え付けてほしい、まずはそういう部分を払拭したい。優勝した経験の中で僕が得たことや、そういったメンタリティ的なところをチームに浸透させてほしいと言われています。自分としても微力ながら、そういったものをチームに還元できたらなと思います。

――チームから求められている役割からも、ベテランを感じますね。

そうですね。ベテランの域に来たなと、ここ数年は思いますね。自分より上の人よりも下の選手が多くなってきたので、年取ったなというのはすごく感じます(笑)。

――いつも厳しいトレーニングをしていると思いますが、体力面でも感じたりしますか?

めっちゃ感じますよ。「30歳すぎてから来るよ」ってめっちゃ言われていたんですけど、20代の時は「そんな変わらないでしょ」と思っていたのに、実際そうでしたね(笑)。30歳すぎると、一気にドッときます。反応が遅れるんですよ。頭は反応しているけど、足が出ないとか。でも、動けない分、頭を使うようになってきたので、そこは良いことだなとプラスにとらえています。

山内盛久

「自分一人でやるんじゃなくてチームで助け合いながらやっていきたい」

――新シーズンの三遠は、8名の選手が新加入となります。チームの雰囲気はどうですか?

雰囲気は良いです。チームが大幅に変わったことで、新たに来た選手がそれぞれ新しい志を持ってやって来ているので、やる気にすごく満ち溢れています。チームの目標は、まずはチャンピオンシップ進出です。誰か一人で守って攻めるというよりは、全員で守って攻めることを目標にしているので、全員バスケがチームの強みですね。

――三遠には太田敦也選手、岡田慎吾選手という大ベテランがいますが、山内選手はどんな立ち位置になるのでしょうか?

2人は引っ張っていくタイプではなくて、外でそっと見守る感じのタイプで、自分はどちらかと言うとベテランというより若手側に入ってワーキャーやっているタイプです。その中でちょっと間違っていたら修正するということはやりますが、ベテランと若手の繋ぎ役ぐらいの中堅なので、上手くやっていけたらなと思います。

――シーズンが開幕したら目の前の試合に集中することが大事だと思います。移籍した選手にとって、今の開幕前の心境はどんなものですか?

楽しみ半分、不安が半分、という感じですかね。僕は性格的に物事を客観的に見ることが多いんです。新しいメンバーが入って来て、チームはガラッと変わりました。その中にいるとすごく良い感じがしますが、客観的に見ると不安定だなと感じ取れる部分もあります。新しいメンバーになった分、他と比べるとバスケットもチームとしての成熟度も違うので、ちょっとした出来事で一気に崩れる可能性もあると思っています。チーム的にも若いですし、そこは不安ではありますね。

ただ、逆にそれを防ぐのは自分とベテランの役割だと思っています。そうならないことが一番ですけど、なる時もあると思います。そうなった時に、いかにチームとしてまとまってできるかが大事で、そこは今言ってどうこうできることじゃないので、シーズンを通して、その都度改善してチームとして良いコニュニケーションを取りながらやっていきたいです。

――チームがガラッと変わったからこその楽しみと、それに対する覚悟が今は必要のようですね。

覚悟はそうですね。でも、移籍した時からそういう準備はしています。自分自身が今までそういった役割を担ったことがないので、新しいチャレンジというか、やらないといけない年齢になってきたので、自分自身もシーズンを通して成長できると思っています。良いチームメートに恵まれているので、自分一人でやるんじゃなくてチームで助け合いながらやっていきたいです。

――では、最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

いつも応援ありがとうございます。今シーズンはNEW三遠ネオフェニックスということで、新しい三遠のバスケットを見られると思います。自分を始め、チーム一丸となって今シーズンは激しいバスケットを見せられるように頑張っていくので、応援よろしくお願いします。