ボル・ボル

過去2シーズンは不発、サマーリーグで飛躍のきっかけをつかむ?

ナゲッツのボル・ボルはNBAでの3シーズン目をサマーリーグでスタートさせ、オフシーズンに励んでいた個人能力の向上をラスベガスのコートで示した。

元NBA選手で231cmという規格外のサイズを生かして活躍したマヌート・ボルの息子で、彼も221cmの身長を誇る。それでも大学時代に右足を疲労骨折したことでドラフトでの評価が下がり、1巡目指名が確実視されていながら全体44位の指名となった。

1年目のシーズンはそのケガの影響で出遅れ、ほとんどインパクトを残せず。2年目の昨シーズンは32試合に出場するも、平均プレータイムは5.0分と、勝敗が決まった試合終盤に出番は限られた。ファンからは潜在能力の高さが評価され、試合終盤になるとスタンドからはボル・ボルの投入をうながすチャントが起こったが、指揮官マイケル・マローンの信頼を得られたとは言い難い。

その彼が今回のサマーリーグに参加するナゲッツの中心に据えられた。今回チームの指揮を執るアシスタントコーチのチャールズ・クラスクは、ボル・ボルを「ニコラ・ヨキッチのサマーリーグ版」と評し、多くのチャンスを与えた。

サマーリーグの初戦こそ動きがぎこちなく、プレッシャーのない場面で出されたパスも取りこぼすイージーなミスを連発して先行きが危ぶまれたボル・ボルだが、リズムに乗るとその才能を発揮。ヒートを相手に29分の出場で21得点5リバウンド2ブロックを記録した。続くセルティックス戦、サンズ戦でも活躍し、3試合での平均スタッツは21.7得点、6.7リバウンド、2.7ブロック。「成長ぶりは十分に確認できた」とクラスクは説明して、その後の2試合は他の若手にチャンスを与えている。

もともと素材は一級品だが、スキル不足と精神的な不安定さが目立ったボル・ボル。特に昨シーズン終盤はプレータイムをコンスタントに与えられず、モチベーションを保つことができない素振りも見られた。相手のリスタートの際に投入されて長い腕を振り回してスローインを妨害するだけの役割をこなし、すぐベンチに戻されるような起用法ではやる気が出ないのも無理はないのだが、MVPのニコラ・ヨキッチを始め経験あるタレントの揃うナゲッツで出番を得るには、まず何かを示さなければならない。

それでも今回のサマーリーグで主役を演じられたことは、ボル・ボルにとって良いきっかけになりそうだ。これまで課題だったペイント内でのフットワークが向上し、シュートバリエーションが増えた。それに伴いゴール下で勝負に行った際にファウルを誘うことが増え、フリースローが増えたことが安定した得点に繋がっている。ナゲッツ加入から練習し続けている3ポイントシュートも15本中6本成功と、確率は悪くないし何より本数を打てているのがポジティブな変化だ。

ヨキッチのバックアップである以上、ボル・ボルに長いプレータイムが与えられたり、先発起用されることは考えにくい。それでも若手が次々と頭角を現すナゲッツで、次にブレイクするのがボル・ボルになる可能性は高い。NBA3シーズン目、技術面や精神面で向上したことが、彼を大きな飛躍へと導くことに期待したい。