モンティ・ウィリアムズ

「ここまで来るのはとても困難だった。成し遂げたかった」

レイカーズ、ナゲッツ、クリッパーズ。激戦の西地区においても特に強いチームを次々と撃破してNBAファイナルに駒を進めた時点で、サンズはバックスよりも高い評価を得ていた。ホームでの2試合に先勝したことで、優勝は間違いないとの雰囲気さえあった。それだけに、そこから4連敗でシーズン終了となったショックは計り知れない。

ヘッドコーチのモンティ・ウィリアムズは、敗れたショックから脱することができないまま記者会見に臨んだ。「この敗戦を次に向けた糧にできるか」という旨の質問がいくつか投げ掛けられたが、彼は言葉を弄することなく「まだ何とも言えない、整理するには時間が必要なんだ」と語り、言葉に詰まる場面も多かった。

「これが当然のことだとは思っていない。ここまで来るのはとても困難だった。成し遂げたかった」。そんな言葉を絞り出したが、NBAファイナルを、そしてこのシーズンを総括するには、まだまだ彼の中で折り合いを付けないといけない情報や感情が多すぎた。

彼に言えたのは、「ファイナルでヘッドコーチを務めることを神が認めてくれたことに感謝したい。優勝を争うチャンスを得られたことにも感謝したい」ということだった。

いつも冷静沈着で、チームの状況と自分の考えをしっかりと伝えることのできる彼でも、ファイナルでの負けはショックが大きかった。それでも会見を終えたモンティは、バックスのロッカールームへと向かった。コート上でのセレモニーを終え、ファンと喜びを分かち合った後、ロッカールームに戻って仲間同士の健闘を称えていたバックスの選手やスタッフに「優勝おめでとう」と伝え、ヤニス・アデトクンボの肩を抱いてそのパフォーマンスを称え、バックスの指揮官マイク・ブーデンフォルツァーとは廊下で話し込んだ。

こういう場面でこそ、優れた人間性は発揮される。敗戦のダメージが大きすぎて、自分たちの負けに向き合うことができなかったモンティだが、6試合の激闘を演じたライバルへのリスペクトを忘れることはなかった。

いずれ彼の口から、今シーズンの総括は語られるだろう。長らく相手に踏み付けられるドアマットチームで、昨シーズンの最後にようやく浮上のきっかけをつかんだサンズにとっては、大きな転換点となるシーズンだった。クリス・ポールの去就は気になるところだが、総じて若いチームだけにまだまだ成長は期待できる。しばらくの休養を挟めば、またモンティは良いチームを作る気力を取り戻すだろう。サンズを導く指揮官は、彼以外には考えられない。