狩野祐介

昨年に続き、今オフも狩野祐介は故郷である福岡の体育館にいた。昨年は母校の福岡第一に、OBのプロ選手を代表してバスケットボールを寄贈したが、今回はかつて自分がプレーしたミニバスチームを訪問。バスケを頑張る子供たちの背中を押し、バスケットボールシューズをプレゼントした。地元での恩返しを終えた彼は、少しずつ来シーズンに向けた準備を進めている。名古屋ダイヤモンドドルフィンズでの2度目のシーズンは、自ら立候補してキャプテンとなり、チームを引っ張る強い意志を見せている。

「これまでいろんな方々に支えていただいて、今の自分がある」

──昨年の夏には母校の福岡第一に戻り、OBのプロ選手を代表してバスケットボールを寄贈しました。今回はミニバスチームだそうですね。どんな経緯で実現に至ったのかを教えてください。

まずは自分が今までお世話になったチーム、恩師に恩返しをしたいという気持ちです。これまでいろんな方々に支えていただいて、今の自分があると思っているので、社会貢献とか恩返しで何かできればと。今回はミニバスのチームで、選手たち一人ひとりにバスケットボールシューズをプレゼントさせてもらいました。

振り返ると、これまでバスケをやってきてミニバスの練習が一番キツかったんですよね。僕がいた頃に使っていたコートとは違う場所だったんですけど、恩師の顔を見るとそのキツさを思い出しました(笑)。それでも、その先生が基礎を叩き込んでくれたおかげで今があります。基礎がなければ中学、高校、大学と進んで行くどこかで生き残れなくなっていたと思います。今までずっと応援してもらっていますし、だから本当に今でも感謝しているんです。

子供たちの中にはプロを目指す選手もいると思うので、プロになる上で大切なことは何かを話して、「これからも頑張って、バスケを楽しんで」と伝えました。あの子たちがプロになって一緒にやれたらいいんですけど、その頃には引退してます(笑)。

──40歳まで現役で頑張っていたら、可能性が出てくるかもしれませんね(笑)。では、昨シーズンを振り返りたいのですが、名古屋Dに移籍しての1年目で、個人としてはまずまずの成績が残せたと思います。47.5%でベスト3ポイントシュート成功率賞も取りました。一方でチームはチャンピオンシップ進出を逃しています。どんなシーズンでしたか?

滋賀にいる時より打つ本数は減りましたが、大事な場面で3ポイントシュートを決めることができました。少ないながらも確実に決めることができた、その結果が3ポイントシュート王だと思います。移籍して、シーズン開幕までにかなり練習をしたので、その成果だと思います。

移籍して新しい気持ちでシーズンに入りましたが、滋賀には4年間もいて、主力もそれほど変わることなくやっていたので、チームメートのやりたいプレーや動きが読めたのですが、新しいチームに来てまずはそれを知るところからでした。最初は分からないままやっていたので、自分のプレーを上手く出せずに苦しむ部分もありましたが、自分がどう動けばチームメートがやりやすいのかが分かるようになり、僕自身もやりやすくなってきました。

狩野祐介
※撮影時のみ、マスクを外しています

「ボールをシェアして、みんなで戦う全員バスケットをやっていきたい」

──新しい環境で苦戦することはありませんでしたか?

シックスマンをやる時期もあって、僕はプロになってずっとスタートで出ていたので、メンタル的に辛いと思うこともありました。ただ、それをプラスに考えて、自分が出たタイミングでできることを思い切りやろうと切り替えられてからは調子も上がりましたし、迷わず打つことでシュートも入りだして、精神的に強くなれたという意味でも結果的にプラスになったと思います。

──それはチームのスタイル、チームメートの動きを覚えただけでなく、信頼を得た結果なのでは?

そう思います。信頼してもらえなかったらパスも来ないし、コーチ陣もそういうプレーを作ってくれないですから。僕のプレースタイルは、ピック&ロールを使って仲間を生かすより、動いて動いてノーマークを作ったり、仲間がプレーを作ってくれて最後に決めるものなので、変にドリブルをしたり変えるのではなく、自分のプレーを徹底して良かったです。

──それでも、チームとしては終盤まで続く大混戦に競り負ける形でチャンピオンシップ進出を逃しました。

とりこぼした試合が多々あったので、そこをチームとして突き詰める必要があるとは感じました。一つひとつ勝たない限りはチャンピオンシップに行けないし、地区優勝もできない。上位のチームは実力もありますが、勝てる試合をきっちり勝つ手堅さがあると思います。次のシーズンはそこを突き詰めていきたいです。

──オフシーズンにはどんな取り組みをしていますか?

チーム練習が7月から始まったのですが、新型コロナウイルスの感染予防で3人グループに分かれてウエイトとワークアウトそれぞれのローテーションでやっています。僕自身、全体的なレベルアップを目指していて、これまでほとんどやってこなかったピック&ロールだったり、そのためのドリブルやパスの練習をしています。あとは僕のシュートにチェックが来るので、それをかわすワンドリのシュートだったり、バリエーションをこれまで以上に増やそうとしています。あとは下半身の強化を頑張っています。

──ショーン・デニスが新たなヘッドコーチになります。滋賀で一緒だったコーチが来ることをどう受け止めていますか?

デニスコーチとは3シーズン一緒にやってきて、練習はキツいですけど質が高いですし、コーチから信頼されていると感じてプレーできていました。自分がシューターとして生きるプレーをたくさん作ってくれるので、それは楽しみですね。デニスコーチはたくさん周りを見て、すごく気配りのできる人です。人としてのどうあるべきかという部分も指摘してくれるコーチなので、僕としては気を引き締めてやっていきたいです。

まだ全員揃ったわけではないので、どういうプレースタイルで行くのかははっきりしていませんが、新たに入る外国籍選手は動けるタイプだと思うので、ボールをシェアして、みんなで戦う全員バスケットをやっていきたいと今は思っています。

狩野祐介

「自分が引っ張ってもっともっと良いチームにしていくつもり」

──新たにキャプテンに任命されました。チームを引っ張っていく抱負を聞かせてください。

3年間一緒にやっているヘッドコーチになりますし、僕自身もベテランの年齢になっています。デニスコーチがやりたいバスケを一番分かっているつもりですし、それをキャプテンとしてチームに伝えていきたいと思ったので、自分から「やります」と言ってキャプテンにしてもらいました。そこまで積極的なタイプじゃないんですけど(笑)、キャプテンってメンタル的にもいろいろ大変なので、代表で頑張っている(張本)天傑にそこまでやらせるのは心苦しくて、この部分では休んでもらって、代表での経験をチームで生かしてもらいたい、という思いがあります。

──オリンピックに向けて日本代表選手たちが頑張っています。どんな思いで見ていますか?

チームメートの天傑や後輩の選手が頑張っているので、12人が決まった時にはSNSでみんなに「おめでとう」の連絡を入れました。テストマッチを見ている感じ、みんな疲れているというか、表情に元気がないですよね。顔に元気があるのは渡邊雄太くんぐらいで。みんな過酷な日々を過ごしていて、コロナでどこかに行って気分転換するわけにもいかないし、大変なんだと思います。

──新シーズンもまだしばらくは観客数の制限は続きそうです。これについてはどう思いますか?

無観客よりは、少なくてもお客さんが会場に来て応援していただける方が雰囲気が良いし、気合いも入ります。前のシーズンに無観客は経験しましたが、本当に試合しづらいんですよ。リーグ戦なのに練習試合のような感覚で気持ちが入りづらい。50%の制限でもいいからお客さんには応援していただきたいです。制限が早くなくなって、安心して来てもらえるのが一番ですね。

──ファンの皆さんも同じ思いだと思います。まだまだ先ですが、開幕を待つ皆さんにメッセージをお願いします。

昨シーズンはコロナ禍の中で会場に行きづらい時もあったと思います。それでも最後の最後までドルフィンズを応援していただき、本当にありがとうございました。次のシーズンはチャンピオンシップに行けるように頑張っていきます。個人的にはタイトルをまた取りたいですが、次のシーズンはキャプテンにもなりますので、自分が引っ張ってもっともっと良いチームにしていくつもりです。引き続き、応援よろしくお願いします。