群馬クレインサンダーズの新たな司令塔となる五十嵐圭、「圭さんと一緒に優勝したい、という言葉が一番大きかった」

群馬クレインサンダーズの新たな司令塔となる五十嵐圭、「圭さんと一緒に優勝したい、という言葉が一番大きかった」

2021/07/12 12:10
五十嵐圭

新潟アルビレックスBBで『チームの顔』だった五十嵐圭の移籍には、多くの人が驚いたことだろう。他ならぬ彼自身にとっても、「まさか他のチームからオファーが来るとは思っていなかった」というサプライズだった。それでもB1昇格のタイミングですべてを刷新し、優勝を目指したチーム作りにおいて自分が必要だとされたことが、五十嵐のハートを震わせた。考えに考え抜いての決断となったが、すべてが決まった今、五十嵐は新たな挑戦にワクワクする気持ちだけを持って、新しいユニフォームに袖を通す。

「41歳になった自分をこのチームが必要としてくれたのが一番です」

──まずは移籍の経緯から教えてください。地元のチームである新潟でこのままずっとキャリアを過ごすものだと思っていた人が多いと思います。五十嵐選手自身がいずれ移籍することを考えていたのか、そうではなくオファーを受けたのか、どちらですか。

出ようかな、とは思っていませんでした。群馬からはB1昇格を決めた翌日にオファーをいただいて、大学の後輩でもある吉田(真太郎)GMといろんな話を重ねていく中で、最終的に新潟を離れる決断をしました。

──では、B2プレーオフを戦う群馬のバスケを見ながら、自分のプレーを重ね合わせたり、ということはなかったんですね。

そうですね。ただ、前のシーズンまで一緒にプレーしていた上江田勇樹がいて、彼とは三菱でも一緒だったので、「頑張っているかな」という感じで試合はよくチェックしていました。もちろん、B2で圧倒的な強さで勝っているのは知ってたし、帰化選手のマイケル・パーカーと外国籍がB1でも実績のある選手がいたので、「どういったバスケをやっているんだろ」という感じで見ていました。全チームを見るわけではありませんが、仲の良い選手やかかわりの近いコーチの試合は結構見ているんです。

群馬はB1初昇格もそうなんですが、ロゴも変えて新しい時代を作ろうというタイミングです。そこで「本気でB1で勝ちたい」、「新しいチーム群馬を引っ張ってもらいたい」という言葉を掛けてもらいました。決断を下すまでには時間がかかったのですが、「圭さんと一緒に優勝したい」という言葉が一番大きかったです。新潟では中地区優勝を経験させていただきましたが、Bリーグ以前も含めてトップリーグでの優勝経験はありません。この年齢になりましたけど挑戦を続けたいですし、チャンスを生かしたいと思ったのが決め手になりました。

──新潟が中地区優勝をしたのは2018-19シーズンですが、ダバンテ・ガードナー選手が退団してからの2シーズンは勝率3割前後と苦しい戦いが続きました。シビアな目で見て、新潟より群馬の方が優勝を狙えるという判断はありましたか?

ネームバリューのある選手、実力がある選手のいるチームに移籍することで、目標に近づくこともあると思いますが、僕自身は今回そうは考えていません。41歳になった自分をこのチームが必要としてくれたのが一番です。もちろん、新潟も僕のことを必要としてくれてオファーは出してくれていました。そこはうれしい悩みと言うか、まさか他のチームからオファーが来るとは思っていなかった中で、いろんな考えが重なって移籍の決断に繋がりました。

「この選手がいれば勝てる」みたいな考え方もあるとは思うんですけど、僕自身がこれまで移籍してきた経験の中で、そういう計算で失敗した過去もあります。今回は群馬が自分を必要としてくれたこと、それに加えて自分自身が成し遂げたことのないものに向かうこと、チームの新しいビジョン、そういったことが重なりました。

五十嵐圭

「ベテランと呼ばれる年齢ですが、まだやれる自信は持っています」

──B1に昇格したチームはこれまで必ず苦戦を強いられてきました。『B1の壁』を乗り越えるチームを作るために、五十嵐選手の立場でどんなアプローチができると思いますか?

僕自身も昨シーズンの新潟では選手もスタッフも大幅に入れ替わり、チームを作る難しさをあらためて感じました。今おっしゃられたように、B2からB1に上がっていきなり良い成績を収めたチームってないと思うんですよね。その中で自分ができるのは、まずはプレーでチームを引っ張っていくことだと思います。ベテランと呼ばれる年齢ですが、まだやれる自信は持っています。

僕の中でキーになるのは外国籍選手と帰化選手だと思っていて、新潟時代にもガードナーという最高の相棒がいる中で、自分がチームを上手く作っていけた経験があります。群馬にはマイケル・パーカーやトレイ・ジョーンズのように僕の持っていない優勝経験のある選手がいますし、それぞれが持っているものがチームとして表現できれば自然と良い方向に行くと思います。

もちろん、昇格1年目で結果を出すのは難しいと思っていますけど、目標を立てるからには優勝だし、そのためにはまずチャンピオンシップ進出だと思っています。強豪が揃う東地区でどう戦っていくか、そのためにはポイントガードである自分がヘッドコーチが求めること、チームが求めることを理解してまとめて、コートで表現しながら自分らしさも出していくことが必要です。その難しさはあると思いますが、移籍は何度も経験していますし、その難しさに挑戦することも楽しみに思っています。

──チームを率いるのは経験豊富なトーマス・ウィスマンです。ヘッドコーチとしてどんな印象を持っていますか?

対戦相手のヘッドコーチという繋がりしかないのですが、ディフェンスでは組織的なところがありながらもオフェンスでは割と選手に任せる、自由度の高いバスケをする印象はあります。その分だけ僕がしっかりコートの中でチームを引っ張っていかなければいけないとは思っています。ヘッドコーチとの関係性はすごく重要だと思っているので、コミュニケーションをたくさん取りながらやっていきたいです。

──普通の仕事をしている人も、転職や転勤で環境が変わると、大変だけどフレッシュな気持ちで頑張ることができると思います。一方で家族は大変だったりもしますよね。プロバスケ選手にも同じような感覚はありますか。

ありますね。Bリーグが始まる以前は僕も企業チームにしか所属していなかったので、新潟に来たことでこれまでどれだけ恵まれた環境でバスケをやれていたのかを感じることがありました。新潟は環境面では企業チームほど良くなくて、特にBリーグの中でも一番バス移動が多かったり大変なことも多かったのですが、良いことも悪いことも経験ですし、この年齢だからこそいろいろ知って楽しめている部分もあります。環境が整っていなくても自分たち次第で結果は出せる、それが新潟での5年間である程度は示せたと思います。新しい環境に慣れるまでは大変かもしれませんが、新潟の時は僕自身すごく楽しむことができたので、今回も新しい土地、新しいチームに来て、新しいチャレンジができるという楽しみが大きいです。

妻はこれまでとスタンスを変えず、とにかく僕が決めたことをサポートすると言ってくれています。息子はまだ2歳半なので、まだ学校や幼稚園の問題がなく動けるタイミングなんですけど、妻も息子も新潟で習い事があったり友達も増えてきたところで、新しい土地に行くことで負担を掛けてしまうと思います。オフコートではできる限り家族をサポートしたいと考えています。

五十嵐圭

「コートに立っているからこそ今の自分を維持できている」

──それにしても、五十嵐選手は老けないですよね。

よくそう言われますが、気になることはちょくちょくあるんですよ。「ちょっと顔にシミが増えてきたんじゃないか」とか(笑)。バスケの面では新潟に来て、逆に自信をもう一度もらえたような気がします。コートに立つ時間が増えて、特に最初の3シーズンは今までにない30分以上が平均であるぐらいだったので、それが自分を蘇らせてくれたというか、あそこでまた自信を付けることができたし、コートに立っているからこそ今の自分を維持できていると思います。それはヘッドコーチとのコミュニケーションがったりチーム状態があるかもしれないですけど、それはどのチームに行っても変わらないと思うので、そこは自分自身がしっかりと強い気持ちを持って変わらずやっていければと思います。

──ヘッドコーチが「35分ぐらいプレーしてもらう」と言ったら「やった!」と思いますか?

やった、と言うか(笑)、もちろん40分間コートに立つつもりでシーズン前から身体作りをして戦える準備をしているので、求められたことをコートで出せるようにと思います。より自分が長くコートに立てるようにしなければいけないと思いますし、その中でチームを勝利に導けるような存在でありたいです。

──見た目もですけど、コート上のプレーも良い意味でベテランっぽくなりませんね。

記者会見でも言わせてもらったように「五十嵐、遅くなったな」とか「五十嵐ダメだな」と言われるのは嫌ですし、言われないようにやっていきたいです。ただ、自分の中では「さっきのルーズボール取れたかな」とか「もうちょっと跳べたんじゃないかな」と思う時はもちろんあるんです。ただ、その中でもできることをやっていきたいですし、応援してもらえる方に「五十嵐はまだまだできるな」って思わせたいですし、自分でもそう思ってやっていきたいです。

──最後に、群馬のファンの皆さんにメッセージをお願いします。

私自身、強い覚悟を持ってこの群馬の地に来ました。そして新たなスタートを切る群馬クレインサンダーズで、自分自身プレーヤーとしてまずはコートの中でしっかりとチームを引っ張っていきたいと思っています。そしてバスケットボールを通じて群馬県を盛り上げていきたいと思っていますし、今までチーム創設から支えてくださっていたパートナーの皆様、関係者の皆様、ブースターの皆様、ファンの皆さんと一緒になって戦って、そしてチーム一丸となって目標に向かって頑張っていきたいと思っています。初めてのB1ということで簡単なシーズンではないと思いますが、皆さんと一緒に戦って良い結果を、そして最後は笑って終われるシーズンになれるように一生懸命取り組んでいきたいと思います。これから群馬クレインサンダーズの五十嵐圭を、よろしくお願いします。

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