NBAで最も優れたGMに贈られるエグゼクティブ・オブ・ヤ・イヤーを受賞
NBAのエグゼクティブ・オブ・ヤ・イヤーを受賞したのは、サンズのGMを務めるジェームズ・ジョーンズだった。1位票の9、2位票の5まではジャズのデニス・リンジーGMと全くの同数。それでも3位票で上回り、ジョーンズが受賞している。
NBAファンにとってはシューターとして活躍した現役時代の印象がいまだ強いはずだ。ジョーンズは2017年まで現役を続け、脇役ではあったがレブロン・ジェームズの盟友としてヒートで2度、キャバリアーズで1度の優勝に貢献している。
親友でもあるレブロンからの信頼は絶大で、チームメートだったキャブズ時代には「まだまだ引退してもらっては困る。僕がプレーするチームがどこであれ、JJ(ジョーンズの愛称)には一緒に来てほしい。そのためにロスターの枠を空けておくよ」と語っているし、ジョーンズがサンズのフロントとして働き始めた時には、「僕が将来NBAチームのオーナーになった時には、彼のための仕事を用意する。どの球団で働くにせよ、契約破棄条項は付けておいてくれよ」と冗談とも本気とも取れるコメントを残している。
レブロンは交友関係が広く、クリス・ポールやカーメロ・アンソニーは盟友として知られるが、ジョーンズほど信頼を寄せた男はいない。ジョーンズはプレーヤーとして長くトップレベルでプレーする中で、選手のモチベーションがどんな仕組みで上下するかを学んだ。才能ある選手を集めるのは大事だが、主役から脇役まで一つにまとまらなければ、チームは力を発揮しないことを知っている。
キャブズで優勝した2015-16シーズンのプレーオフで、15人の選手とヘッドコーチのティロン・ルーは、ジグソーパズルのピースを1つずつ持っていたそうだ。16ピースのこのパズルは、完成すると優勝トロフィーの形になる。ファーストラウンドから1勝するごとに、ロッカールームに持ち込んだパズルのピースをはめていった。ウォリアーズとのNBAファイナルでは1勝3敗から2連勝し、勝負はGAME7へ。6勝目を挙げて15個目のピースをはめた時に、最後に残ったピースの形を見て選手たちは奮い立った。指揮官ルーが最後に持つピースの形が空白として残ったのだが、それはオハイオ州の形。奮い立った選手たちはGAME7でも勝利し、キャバリアーズに初優勝をもたらした。このアイデアを考え、ルーに進言したのがジョーンズだった。
ジョーンズにとってサンズは現役キャリア序盤に2シーズンを過ごした球団。引退するとすぐにサンズのフロントに加わって暫定GMとなり、そしてこの2年間はGMとしてチーム編成を担ってきた。この2年間はヘッドコーチのモンティ・ウィリアムズと二人三脚でチーム作りを行っている。サンズは長らくドアマットチームだったが、焦ってフリーエージェントの選手を獲得するのではなく、若手を育て、その成長をサポートできるベテランを加えた。
肩書から『暫定』の文字が取れたジョーンズがモンティを招聘した2020-21シーズン、デビン・ブッカーとディアンドレ・エイトンがいても19勝63敗だったチームは34勝を挙げ、『バブル』での8勝0敗で自信を付けた。こうして勝負に出たのが昨年オフだ。フリーエージェント市場の解禁と同時にクリス・ポールとの契約を発表した。再建中のチームは年俸4000万のビッグネーム獲得には躊躇するもの。だが、中途半端なフリーエージェントに手を出さなかったジョーンズは、ここは迷わず動いた。その選択が正しかったことは、現在の結果が証明している。
勝負の補強はクリス・ポールだけではない。ジェイ・クラウダーと契約を結び、キャメロン・ペインとダリオ・シャリッチを残留させた。シーズン途中にはトーリー・クレッグをトレードで獲得して、戦力を強化している。
今はプレーオフのカンファレンスファイナルの真っ最中で、モンティはそこに集中している。それでもジョーンズはサンズが今後も長く強豪であり続けるように、強いチームを作り続けるという任務にもう取り掛かっていることだろう。その仕事は2年前より楽になるはずだ。少し前までのサンズは、フリーエージェントが喜んで来るようなチームではなかったが、今は違う。サンズが作り上げようとする大きな目標を構成するピースを、多くの選手が手にしたいと考えるはずだ。