ライアン・ロシター

2020-21シーズン、宇都宮ブレックスは惜しくもタイトルこそ逃したが、レギュラーシーズンではリーグ最高勝率を残し天皇杯、リーグ戦でともにファイナル進出。『BREX MENTALITY』とした定着した40分間、コートに出た選手全員がチームのために献身的なプレーを貫く戦い方で数多くの勝利を挙げた。リーグ随一の選手層を誇る宇都宮にあっても大黒柱を担ったライアン・ロシターにあらためてシーズンを振り返ってもらった。

「いくつか後悔はありますが、いつも完璧にはできません」

――シーズンが終わった直後の心境を教えてください。

優勝に届かなかったことにがっかりしています。ハードにプレーし、いろいろなことを成し遂げた素晴らしいシーズンでしたが、ファイナルに敗れ一番の目標には届きませんでした。今シーズン、自分たちがコートで見せたプレーの内容については満足しています。また、昨シーズンは途中で打ち切りとなり、多くのチームは「自分たちに優勝のチャンスがあった」と感じていたと思います。こういう結果になったのは残念ですが、チャンピオンが決まって良かったです。

――ファイナルについての振り返りをお願いします。一発勝負ではなく、2戦先勝方式に変わったことの感想を聞かせてください。

GAME1、GAME2は、勝者は違っても同じような展開で大差がつきました。GAME3は素晴らしい試合で、残り数分まで1点差で推移しましたが、終盤になって千葉がしっかりプレーしシュートを決めたのに対し、僕たちは何本かターンオーバーを喫し、シュートを外してしまいました。ここ一番で遂行力の高さを見せた千葉を称えるべきです。

ファイナルが3試合制になったのは、チームの総合力がより反映されて良いと思います。一発勝負だと、ある選手の故障やファウルトラブルなどアクシデントが勝敗に大きな影響を及ぼしかねないですからね。

――あの場面でこうすれば良かったという後悔はありますか。

いくつかの誤った決断について後悔はありますが、いつも完璧にはできません。シュートをミスしたり、判断を間違えたりすることはあります。常に自分のコントロールできることについては全力を出し切っていました。

――タイトルには届かなかったですが、チームとして素晴らしい成績でした。ロシター選手自身のプレー内容については、タイムシェアのチーム戦術から出場時間も減るなど変化がありましたが、どう評価できますか。

長いシーズンで多くの試合があり、健康な状態を保ってチャンピオンシップを迎えるためにプレータイムをシェアするのは良いことです。大差をつけた試合で、出場時間が15分くらいの時もあり、それによって身体を休めることもできました。僕は個人のスタッツを全く気にしないので、プレータイムが減って数字が下がることへの問題は一切なかったです。試合に勝って、優勝したいだけです。

レギュラーシーズンでのパフォーマンスは良かったと思います。自分のプレーへの評価をスタッツで判断することはないですね。30点を取った試合より、10点に終わったけど内容は良かった試合もあります。僕にとって数字は特に意味はありません。チームとして目標に向けみんながハードにプレーする素晴らしいシーズンでした。

ライアン・ロシター

「みんなが同じように戦いBREX NATIONのために良いプレーをする」

――シーズン中は、新型コロナウィルスの対策で様々な制限がありました。そこはやはり大変でしたか。

コート上だけでなく、コート外でも大変でした。時にはバスケットボールから離れてリラックスしたい時にも、行動が制限されてどこか出かけることも難しい。それはすべての選手にとってタフです。ただ、みんなが犠牲を払ったことでシーズンを終えられたのは幸せだと思います。

個人としては、オフの時も家にいて多くの映画を見たり、本を読んだりしていました。身体のケアにも多くの時間を費やしました。あとはメンタル面においてもしっかり休みを取ることを大切にしていました。もちろん、この生活にアジャストするのは簡単ではなかったですが、受け入れるだけで他の選択肢はありませんでした。チーム、リーグがしっかりした感染対策を取って僕たちを安全な環境でプレーさせてくれていました。バスケットボール選手として、その規則を守るのも自分たちのやるべき仕事です。

オフコートで食生活や睡眠に気を使いました。サウナや水風呂を使ったり、練習をしっかりこなしたりと試合で良いパフォーマンスを発揮するための良い準備を続けたおかげで、軽い故障だけでシーズンを乗り切れました。チャンピオンシップまでとても健康で、良いコンディションで戦えたと思います。

――今シーズン、特に印象に残った場面、試合はありますか。

天皇杯、ファイナルに敗れたことが大きく、それ以外にこれといって特定の印象に残っているものはないです。ただ、毎日ハードワークし、チーム一体となって目標に向かって戦った歩みは素晴らしいものだったと感じています。

――今シーズンは、よりBREX MENTALITYが注目されたと思います。ロシター選手にとってBREX MENTALITYとはどんなものですか。

僕にとってはネバーギブアップの精神で、常にハードにプレーを続けることです。その結果、たとえ序盤に調子が悪くて大きなリードを許しても、最後に挽回してきました。スタート、ベンチとか関係なく、みんなが同じように戦いBREX NATIONのために良いプレーをする。そこに僕たちはたくさんのプライドを持っています。

――経験豊富なベテランが多い宇都宮にあっても、ロシター選手のリーダーシップは目立ちます。チームを率いる安齋竜三ヘッドコーチとは、どんな関係を意識してきましたか。

安齋ヘッドコーチとは、常に正直になんでも言い合う関係です。チームに何か問題があったり、新しいことを取り入れる時はコミュニケーションをしっかり取り続けてきました。選手とコーチのこういう関係はとても重要だと思います。

ライアン・ロシター

「皆さんのシーズンを通してのサポートに感謝しています」

――これからは代表活動が始まります。オリンピックに向けての思いを教えてください。長いシーズンが終わってすぐの活動で体力的に厳しいところはありますか。

まず、とても長いシーズンが終わり、すべての選手にとって心身で休養が必要ですが、代表チームに望まれるのはとても興奮することです。この先に何が起きるのかは分からないので、僕にできるのは、これまでブレックスで続けてきたようにハードにプレーを続けることだけです。もしオリンピックに出場できたら、それはとてもエキサイティングで光栄な機会だと思っています。

リーグ戦では試合になると、自分たちを応援してくれるファンだけでなく、対戦相手のファンもいます。それが代表のユニフォームを着た時は、国全体であり、Bリーグのどのチームを応援しているかに関係なく、すべてのバスケファンがサポートしてくれるのを感じます。それは代表チームの成功に繋がっていると思います。

――最後に宇都宮のファン、そしてバスケットボールファン全体へのメッセージをお願いします。

まず、ブレックスファンの皆さんが声を出せなくても拍手などできる限りのことをしてくれたおかげで、素晴らしいホームゲームの環境で戦えました。いつものような満員の会場から大きな声援をもらえる状況ではなかったですが、チャンピオンシップのクォーターファイナル、セミファイナルはファンの皆さんのおかげで本当に大きなホームコートアドバンテージを得られました。皆さんのシーズンを通してのサポートに感謝しています。横浜アリーナにも多くのBREX NATIONの方達がきてくれて、素晴らしい雰囲気でプレーすることができました。

そして、今シーズンはバスケファンの皆さんが観戦ルールを守ってくれたことで、すべてのアリーナで僕たちは安全にプレーできました。そのおかげで、シーズンを終えることができました。また、いろいろな制限がある中でもみなさんの応援のおかげで、すべての試合がホームとアウェーの違いを感じていました。コロナ禍の中でもこういった環境でプレーできたのは楽しかったです。ありがとうございました。