カイル・ミリング

「トラブルがあった中での18勝はクラブとしてもうれしいこと」

横浜ビー・コルセアーズは最後のホームゲームを連勝で終え、5月5日のアルバルク東京との試合でレギュラーシーズンの全日程を終える。

18勝40敗で東地区8位という結果だけを見ると、決して評価できる数字ではない。それでも、直近の10試合では4勝を挙げ、チャンピオンシップ出場が決まっている強豪チームとも互角に渡り合うなど、終盤に来て明らかにチームは向上した。

今シーズンから横浜の指揮を執っているカイル・ミリングも手応えを感じており「もっとシーズンが長く続いてくれたら」と、切実な思いを語った。「最初の頃よりチームの成長が見えています。ようやくチームとして良くなってきたので、ここでシーズンが終わってしまうのは悲しいです」

今シーズンはどのチームも新型コロナウイルスの影響を少なからず受けている。横浜も例に漏れず、ミリングヘッドコーチや外国籍選手の合流が遅れ、さらには主力の故障にも見舞われた。また、横浜はシーズン途中に東海大の河村勇輝を特別指定選手として迎え入れた。しかし、河村は極度のシュートスランプに陥り、期待以上の成績を残せなかった。こうしたイレギュラーを考慮すれば、18勝という数字は決して悪くないのかもしれない。ミリングヘッドコーチもそうした点を強調する。

「渡航規制で私が合流に遅れ、(ロバート)カーターも渡航規制で18試合くらい出られませんでした。パトリック(アウダ)も同じですし、生原(秀将)選手がケガであまり出られなかったりもしました。それでも千葉ジェッツや大阪エヴェッサ、宇都宮ブレックスなど、リーグのトップチームと戦っても接戦に持ち込めるようになりました。いろいろなトラブルがあった中での18勝はクラブとしてもうれしいことだと思います」

カイル・ミリング

「アップダウンがあった中で友情も生まれてきた」

ミリングヘッドコーチはチームの成長を口にしたが、それは選手個々の遂行力が上がったことを指すとともに、成功体験によって自信を得る好循環が生まれたと言う。

「シーズンを通してずっと練習してきたことをここ何試合かでコート上で表現できるようになった。私のやりたいバスケットがどんなバスケットかということを選手がしっかりと理解し始めたのです。オフェンスよりもまずはディフェンス、オフェンスではテンポをとにかくコントロールしようと話してきた。私はバスケットボールの80%はメンタルだと思っていますが、トップチームと競り合えたことで選手たちも自信をつけてきた」

また、ミリングヘッドコーチは継続することの大切さも強く主張した。「チームを組織的に見た時、とにかく繰り返して練習していくことが大事です。繰り返すことでそれが自然にできるようになる。強いチームはみんなそうしていると思います。リーグのトップを見ると、同じコーチや同じ選手で長い期間やっています。そうすることでお互いの理解が深まります。それがベンチの層にも繋がり、強さになるのです」

そう継続の大切さを説いたミリングヘッドコーチだが、今シーズン限りで横浜のヘッドコーチを退任し、来シーズンはフランスリーグで指揮を執ることをすでに発表している。チームの充実を感じているからこそ続投を願ったが、それは叶わなかった。

「合流したその日から私を受け入れてくれた。アップダウンがあった中で友情も生まれてきた。このシーズンを通して日本で過ごせた時間はとても楽しかったし、本当は横浜に残りたかった。それでも、苦渋の決断を下さないといけなかった。横浜の監督をやって良かったと心から思う」

噓偽りない、正直な気持ちだろう。奇しくも、A東京とのラストマッチに勝利できれば、勝ち星は19に到達しクラブのB1での最多勝利数を更新することになる。選手としては『最高の終わり方』でミリングヘッドコーチを送り出したいところだ。