サンロッカーズ渋谷

1ポゼッション差の争いが最後まで続く

サンロッカーズ渋谷vs千葉ジェッツの水曜ナイトゲーム。過去2戦とも2点差以内での決着だったことが物語るように、この試合も1ポゼッション差を争う展開が最後まで続いた。

最初に主導権を握ったのはSR渋谷。石井講祐がドライブに2本の3ポイントシュートを沈めると、トランジションも機能しチャールズ・ジャクソンが連続で速攻を決める。ディフェンスでも、特にハーフコートでのトラップが効き、前半だけで9つのターンオーバーを誘発。ライアン・ケリーが要所で3ポイントシュートを沈めるなど、前半を46-38で折り返した。

だが、SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチが「後半に入ってボールが止まらなくなり、富樫(勇樹)君や(シャノン)ショーター選手におもしろいようにやられて、原(修太)選手のドライブもありながら徐々に千葉ペースになった」と語ったように、第3クォーターは千葉の時間帯に。

前半でもピックからの3ポイントシュートを沈め、悪い流れを切っていた富樫は得点にアシストと違いを生みだす。富樫が崩し、それで生じたズレから得点を積み重ねた千葉は原のドライブで同点に追いつき、残り5分19秒に佐藤卓磨の3ポイントシュートでついに逆転した。そして、富樫がプルアップの3ポイントシュートを決めれば、ケリーがファウルを受けながら3ポイントシュートを決め返すなど、ここからリードチェンジを繰り返す接戦が終盤まで続く。

第3クォーター途中、オフェンスファウルを狙ったケリーがディフェンスファウルをコールされた際には、千葉ベンチとケリーにダブルテクニカルファウルの判定が下されるなど、試合はヒートアップしていった。

サンロッカーズ渋谷

伊佐ヘッドコーチ「ライアンの個人技に頼った感覚はない」

SR渋谷が3点をリードして迎えた最終クォーター。互いに決めるべきシュートを決め切り、ボールへの執着心も見せ、リードチェンジを繰り返す高度な攻防が続いた。結果から言えば、このクォーターで21得点を記録し抜群な勝負強さを見せたケリーが、残り23秒に2ポゼッション差に広げるミドルシュートを沈め、SR渋谷が91-85で勝利した。

この数字だけを見れば、ケリーの個人技に頼ったように思えるが、伊佐ヘッドコーチはそれを否定し、ベンドラメ礼生のゲームメークを勝因に挙げた。

「スコアしたのはライアンがほとんどだったと思うんですけど、レオのゲームコントロールが素晴らしかった。全体にボールを触らせるようなプレーコールをしたり、ライアンを織り交ぜながらアタックしたり、外のシュートを打ったり。コールが良く、意思疎通ができていた」

そう伊佐ヘッドコーチが言うように、決してケリー一辺倒で攻めていたわけではない。しっかりとボールを回し、スクリーンをヒットさせ、富樫とのミスマッチを作るなどチームプレーの中でケリーがフィニッシャーとなっていた。

実際、伊佐ヘッドコーチは「ライアンの個人技に頼った感覚はないです」とも語った。「千葉のビッグマンはケリーの外角につけず、シュートまでいけると思っていた。ベンドラメの指示で周りもスペースを取って、チームで作り上げたシュートだと思っています」

一方、敗れた千葉の大野篤史ヘッドコーチは「勝ちたかったですけど」と前置きつつ、「今できることを一人ひとりがやろうとして、ゲーム勘がなかった中で収穫になった」と総括した。

千葉は新型コロナウイルス陽性者が出たことで試合中止が相次ぎ、3月24日の新潟アルビレックスBB戦以来の試合となった。4月10日にチーム練習が再開できたものの、その日は調整が主な目的となり、この試合を迎えるにあたって、ライブで練習ができたのは3日間しかなかった。それだけに、SR渋谷を相手にクロスゲームに持っていけたことは間違いなく前進を意味する。