「このチャンスを最大限に活用したい」と復活を誓う」
デマーカス・カズンズは選手生命を脅かすケガを何度も経験してきた。ペリカンズに在籍していた2018年の1月下旬に左足アキレス腱を断裂し、再起を期したウォリアーズでは2019年のプレーオフ・ファーストラウンドで左大腿四頭筋を断裂。レイカーズと契約した2019-20シーズンには開幕前に左膝前十字靭帯を断裂する重傷を負っている。それでも今シーズンはロケッツの一員としてNBAに戻ってきて、25試合に出場して9.6得点、7.6リバウンドを記録。全盛期には35分前後だったプレータイムが約20分となりスタッフも半減し、かつてのように試合を支配する力はないが、ローテーションの一角としては十分なパフォーマンスを見せていた。
ロケッツからは2月に契約解除されたが、これは彼の実力不足ではなく、ジェームズ・ハーデンが退団して再建に舵を切ったチームが若い選手に出場機会を与えるため。カズンズはクリッパーズと10日間契約を結び、現地4月6日のトレイルブレイザーズ戦で早速の出場を果たした。
第2クォーター途中に投入されたカズンズは、最初のプレーでスクリーンからのハンドオフでレジー・ジャクソンの得点をアシスト。続くポゼッションではエネス・カンターをボックスアウトしてオフェンスリバウンドを奪い、そのまま得点を決めている。ブレイザーズにタイムアウトを取らせたこのプレーを目の前で見ていたクリッパーズのオーナー、スティーブ・バルマーは手をたたいて大喜び。その後も最初と同じような連携からカワイ・レナードの得点をアシストし、パトリック・ベバリーのアシストを受けてロング2ポイントシュートを沈めている。8分間の出場で7得点4リバウンド2アシスト。まだまだ試運転ではあるが、クリッパーズでのデビュー戦は上々のパフォーマンスだった。
ポール・ジョージは「今もオールスターの実力を持っている。ビッグマンとしてはこのリーグで最も高いスキルを持っていて、フィニッシュもリバウンドもできる。まだまだやれる選手だよ」と称賛した。それでもカズンズ自身は笑顔を見せることなく、落ち着いた口調でこう語っている。
「ここまで来るのにたくさんの努力をして、チャンスをつかんだ。そのおかげで今までのキャリアの中でも一番と言えるぐらいコンディションは良い。今の段階では僕が万全で、高いレベルでプレーできることを示すことが重要だ。このチャンスを最大限に生かしたい」
10日間契約の今は『試される立場』であり、このパフォーマンスを続けて周囲を納得させるまでは、彼の笑みは見られないのかもしれない。それでもクリッパーズでのデビューはスタッツ以上に、ロケッツでは見られなかったゴール下での力強さを印象付ける出来だった。この10日間契約の間だけでも、サージ・イバカのケガが長引くクリッパーズにとっては貴重な戦力となりそうだ。このまま歩みを進めていけば、かつてのパフォーマンスを取り戻せるかもしれない。