「何か重要なものを築き上げていると感じるんだ」
劇的すぎる幕切れだった。3月27日に行われたキングスとキャバリアーズの一戦は、48分間を通じてほとんど点差が離れない大混戦に。それでも第4クォーターはほとんどの時間帯でキャブズがわずかながらリードして推移していた。それでも残り2分で点差からキングスは巻き返す。絶好調のディアロン・フォックスが難しいプルアップジャンパーを連続で決め、残り11秒からの攻めでは徹底マークをスピンムーブで振り切ってのバスケット・カウント。ボーナススローも決めて97-96と逆転に成功した。
しかし、残り6秒からのディフェンスでコリン・セクストンのスピードに乗ったドライブを止められない。カバーに飛び込んだリショーン・ホームズのチェイスダウンブロックがギリギリで間に合ったかに見えたが、ゴールテンディングで得点が認められ、キャブズが再びリードした。ゴールテンディングの判定はスロー再生で見ても微妙なもの。キングスにとっては納得しがたいもので、ここで集中を切らしていてもおかしくはなかった。
残り時間はわずか1.6秒で、しかもキングスはタイムアウトを使い切っており、バックコートからのリスタートと絶望的な状況。指揮官ルーク・ウォルトンには、「キャッチ&シュートを狙おう」以外に指示の出しようがなかった。それでもウォルトンは、この試合で36得点と絶好調のフォックスに、ラストシュートではなくスローインを託した。これが奇跡の逆転劇を生み出す。
残り1.6秒、フォックスが左のオーバースローで投げた強烈なパスがハリソン・バーンズに届く。バーンズは2人のディフェンスに囲まれながらも、すぐさまターンしてシュートを放った。試合終了のブザーとともにシュートがリングを通過。キングスが100-98で劇的な逆転勝利を決めるとともに、バーンズは仲間たちの手荒い祝福で揉みくちゃにされた。
バーンズは言う。「ボールが手から離れた瞬間に決まったと確信した。チームメートと一緒に大喜びできて良かった。この喜びは今のキングスを象徴していると思う。ただ試合に勝っただけじゃなく、何か重要なものを築き上げていると感じるんだ」
キングスはこれで4連勝。プレーイントーナメント進出ラインまで1.5ゲーム差と可能性が見えてきた。
この劇的なブザービーターをアシストしたフォックスの働きも見逃せない。先にキャブズの選手がボールに触れたらチャンスはないタイミングで、あの『レーザービーム』でなければバーンズはシュートまで持っていけなかったはずだ。36得点と決勝ブザービーターのアシストで勝利の立役者となったフォックスは、事もなげにこう言った。
「もし不思議に思っているなら教えるけど、子供の頃はクォーターバックだったんだ」