別々の道を歩み、違うチームの先発として再会
千葉ジェッツの佐藤卓磨にとって、3月21日にシーホース三河戦は感慨深いものになった。
佐藤は3年間を過ごした滋賀レイクスターズを離れ、今シーズン開幕を前に千葉へ移籍。元チームメートの高橋耕陽も、佐藤と同じタイミングで滋賀から三河へと移籍した。
千葉と三河が対戦するのは今回が初めてで、2人は久しぶりにコートで再開した。佐藤は言う。「お互いスタートで出て、ハイタッチをした時に『なんか変な感じだね』と話をしました。高校の時から国体で一緒に戦ったり、3年間同じチームメートだったので、色の違うユニホームを着ているのが変だねって。素直にうれしい気持ちでした」
即チームにフィットした佐藤は、競争の激しい千葉で先発の座を勝ち取った。一方、高橋はチームになかなかアジャストできず、深く考えたことで本来のプレーを出せずに、ベンチを温める日々が続いた。しかし、最近調子を上げて指揮官の信頼を得た高橋は、この試合で今シーズン初めて先発に抜擢された。
別々の道を進み、対照的なシーズンを送っていた2人が先発でぶつかる。『めぐり合わせ』とはこういうことを言うのだろう。また、高橋は第1クォーターだけで3つもファウルを犯し、前半は長いことベンチで過ごした。そして、佐藤も試合を通じて3つのファウルを犯し、プレータイムが久しぶりに2桁を下回ったことも、何か運命めいたものを感じる。佐藤は接戦で敗れたこともあり「ディフェンスでもったいないファウルをしてしまったり、自分のパフォーマンスが悪かったので納得のプレータイムです」と、佐藤は反省の言葉を語った。
「これからも互いに切磋琢磨していきたい」
高橋も佐藤との対戦を心待ちにしていたという。「2人がマッチアップすることはほぼなかったので、対戦するのを楽しみにしていましたし、できてうれしかったです。互いに『変な感じがするね』ってティップオフ前にも話していたんです。楽しかったですけど、なんか変な感じでした(笑)」
滋賀時代、2人は若手ながら主力として活躍し、降格の危機を何度も打破してきた。だが、それはチャンピオンシップ争いに絡むことができないことも意味し、佐藤も「滋賀の時は苦しいことのほうが多いシーズンでした」と語った。だが、苦しい状況をともにするほど、仲間との絆は深まるものだ。「一個上なんですけど、ほとんどタメみたいな感じです。つらい時を知っているからこそ絆はあって、他の選手とは違う感情はあります。盟友というか、お兄ちゃんみたいな」と佐藤は言う。
そんな絆で結ばれた2人は今でも互いに連絡を取り合っているという。「今でもよく連絡を取っているんですけど、『自分のやるべきことをやるしかないよな』って会話でいつも終わります(笑)。うまくいかないけど、頑張ろうって励まし合っていますね」
そんな記念すべき2人の初対決はともに3ファウルを犯すなど、決して満足のいく出来ではなかった。それでも、佐藤は高橋が互いを高め合う存在だとあらためて認識したようだ。「マッチアップするからには負けたくないと思っていたんですけど、思い切り良くやられてしまいました。それぞれ違うチームでスタートで戦ったりすることはプラスだと思います。これからも互いに切磋琢磨していきたいです」
クラブ全体を応援する『箱推し』や特定の選手を好んで応援するタイプなど、ファンの種類もいろいろある。移籍が伴うスポーツなだけに、好きな選手が移籍すれば、推すチームが変わる人もいるだろうし、逆にその選手のファンを辞めてしまう人もいるかもしれない。だが、中には移籍先での活躍を願うファンも数多くいるはずだ。今回の2人のように、移籍先で切磋琢磨し合う姿を応援するのもまた一興だ。
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