石崎巧

琉球ゴールデンキングスはオールスターブレイクを19勝8敗と、シーホース三河と同率での西地区2位で迎えた。故障者が多くベストメンバーで戦う機会が少ない状況を考えれば、ここまで成績は上々の内容と評価できる。その一方で三河に天皇杯ベスト8で60-85の完敗を喫し、リーグ戦とあわせて連敗しており、西地区4連覇に向け視界良好というわけではない。チームの現状をどう捉えているのか、百戦錬磨のベテランとしてチームを支える石崎巧に聞いた。

「自信にするわけでも、運が良かったで終わるわけでもない」

──ここまでのチームの成績について、石崎選手はどんな評価をしていますか。

もちろん改善できる部分はあるにせよ、自分たちができる範囲においてベストを尽くしていると思います。結果に納得する、満足することではないですが、試合をしていく上で運の要素を軽視できないところはあります。少しこちらに運がないという試合もいくつかあって、どう表現するべきか難しいですが、そういった数字のゆらぎ、確率的な部分も含め、自分たちができる最善のプロセスを踏めていると思います。

──外国籍が揃っていなかった開幕節の宇都宮ブレックス戦での連敗を除き、東地区の強豪相手の対戦では最低でも1勝1敗と互角に渡り合っています。そこに対する手応えはありますか。

同じようなレベルのチームが対決すれば、運の要素が占める割合は大きくなります。僕たちが勝った試合は、相手のプレーがうまく機能していなかったことが多いように見えます。それがもちろん僕たちのディフェンスの成果であれば誇りに思っていいですが、必ずしもそういったことだけではない。だから、上位相手に結果が出ているから、チームは良い状態であるとは思いません。上位との試合においても改善できる部分はあります。今のところは、これを自信にするわけでも、運が良かったで終わるわけでもない。自分たちがやってきた取り組みに対し、その結果として何が起こったかを検証していく一つの過程と捉えています。

──では、自身のパフォーマンスについての手応えを教えてください。

僕自身が意識しているのは、少しチームの枠から外れたところでのプレーをすることです。若い選手も多いのでチームで決めた枠組みの中で、自分の能力を生かしたチャンスメークが求められています。ただ、決まったフォーマットの中でプレーを続けていくと、相手にとって対応しやすいケースも出てきます。そういった閉塞した状態の時、自分の経験値を生かしてある程度のリスクを取りながら確率の高い得点チャンスを作ることを意識しています。

プレータイムが少ない中、そういったことをするのはターンオーバーに繋がる危険もあって難しい部分はあります。ただ、今のところは最終的な結果にいたらずともボールが回ってきた時に何からしのアクションを起こし、フォーマットの中にない解決策を提示することを少しはできていると感じています。

石崎巧

「ファーストオプションを誰にするかの選択が効率的ではない」

──昨シーズンと比較した場合、現在のチーム力をどう感じていますか。

外国籍はものすごくレベルの高い選手が揃っていて、支配的なプレーをしてくれます。チームの総合力としては昨シーズンに比べて高いと思います。また、移籍で加入してくれた選手のおかげで日本人選手もレベルアップしています。ただ、チームの完成度、戦い方においての充実度では、昨シーズンのような尻上がりに感覚をつかんでいる状況にはない。むしろ、少し自分たちがどうすべきか見失っている印象も見受けられます。そういった意味での改善が、今の僕たちにとって一番必要だと思います。

──では今のチームで、課題と感じている部分はどこになりますか。

連携などの部分にそこまで問題があるわけではないです。日々の練習でお互いの特徴をつかみながらプレーができていますが、試合で40分間を見据えた中でのプレーの選択、ファーストオプションを誰にするかの選択が効率的ではないと感じます。(ジャック)クーリー、(ドウェイン)エバンスとも自分のエネルギーをより多く消費して相手を上回るようなタイプの選手で、それを土日と80分続けるのは人間の身体能力の限界からいって不可能だと思います。

例えば(ジュリアン)マブンガ選手のように、自分の出力を調整しながら存在感を発揮できるタイプではないと思います。一回の出力が大きく、それでプレーの成果を出す選手に対して、ずっとボールを任せる。より効率的な状況を作らずに任せてしまうと、どんどんプレーの精度が落ちてしまいます。そこで日本人選手がどれだけファーストオプションとなってチャンスメークできるか。より簡単な状況でクーリーにボールを任せられる時間帯をどんどん増やしていく必要があります。

──シーズン前半戦で印象に残っている試合や場面、事象といったものはありますか。

11月の前半あたりは、試合で起こるランダムな事象への選手たちの対応力がとても高いと感じていました。試合は相手がいることなので、予測していないことが起こるのが当たり前です。それに対して、オフェンス、ディフェンスともに選手個々のバスケットボール能力で対処できたことが多かったです。それが疲れなのか、チームの抱えている問題なのか、今はそういった野生的なバスケットボール能力を発揮する場面が少なくなっていると感じています。

──野生さが少なくなっているのは、成熟してきているかなのか。それとも悪い意味で小さくまとまってしまっているのか、どちらのイメージが強いですか。

そこに対して100%ではないですが、ネガティブな感覚の方が大きいです。試合で予測していないことが起きた時、選手がどこまでその瞬間でしっかり判断できるかが結果に直結すると思っています。野生という表現をしてしまうと、あたかも1人が突っ込んで自分の気持ちだけでプレーしてしまう風に受け取られてしまうかもしれないですが、チームメート、相手の5人、審判の状況とすべての要因を含めた中での瞬間の判断を大事にすることで、結果的には5人の組織的な連動に繋がっていくと感じています。

ただ、結果が思わしくないことで、なぜ、以前のように勝てていないのか、自分のプレーがうまくいっていないのか、そういったことへの純粋な疑問に対して話し合う機会はいろいろなところで見かけられています。それは現状、噛み合った感覚が僕たちの中ではないからだと思います。選手が今、起こっている問題に対して、自発的に解決に向けて動いているのは素晴らしいこと。それこそが、僕的には一番バスケットボールの中で自然な判断ができるための必須の要素と感じています。

石崎巧

「自分でやって失敗してもっと勉強して、成果が得られる」

──オフコートについても質問があります。試合日にカメラを持ち込むことがありますが、どんな写真を撮っていますか。

最近はあまりないですけど、試合前のロッカールームで選手がくつろいでいる写真を撮ったりはします。最初は単純にカメラが楽しいとやっていただけですが、ある人から『バスケットボールチームの中を撮影できるのは他の人ではなかなかできない僕ならではの特徴』と言われたことがきっかけです。初めはチームメートを撮るのに抵抗もありましたが、それは僕にしかできないことで、選手たちもそんなに悪い気ではない反応をしてくれるので続けています。また、意外と人を撮るのが好きで、最近の社会状況から街の人を撮るのは問題になりがちですが、選手たちは快く撮らせてくれることで徐々に楽しいと思うようになりました。

カメラを始めたことは、チームの中で良いコミュニケーションのきっかけの一つになると思っています。撮影した写真を他の選手に渡して、まぁ、年寄りに渡されて「そんなのいらねえよ」とは言えないとは思いますけど(笑)、結構「おぉー」みたいな感じで言ってくれます。それがきっかけで話しをすることもあります。

──いずれ個展など、作品を発表したいという欲はありますか。

すごくいい写真がたくさん撮れたらやりたいですけど、下手くそでピントが合わないのでそれはできないなと思います(笑)。

──デジタルカメラではなくフィルムカメラで撮っている理由を教えてください。

フィルムの写り方が好きです。それ以上に手間がかかるものが好きなのかと思います。自分の意思がより細かく反映されるのが魅力的で、そういう意味で自分のバスケットボールを見つめる一つのきっかけにもなります。誰かに何かを設定してもらうのではなく、自分でやって失敗してもっと勉強して、うまくなって成果が得られる、その喜びもあってフィルムカメラは楽しいと思います。

──最後にファンへのメッセージをお願いします。

まずはこういった状況であるにもかかわらずアウェーゲームでもすごく多くのキングスファンが駆けつけてくださっているありがたさを毎試合感じてします。自分たちを大事に思ってもらえていると実感できることで、前半戦すごく心強くプレーをさせてもらうことができました。この後、特に僕は体力的に厳しい試合が続いていきますけれど、そういったお客様の熱意、意気込み、期待に応えられる良い結果を試合で見せたいと思っています。これからも是非、会場にかけつけて応援をしてもらえるとうれしいです。