長谷川技

現在、川崎ブレイブサンダースはジョーダン・ヒース、マティアス・カルファニの離脱などが響き17勝10敗で東地区6位につけている。2021年最初の試合となった1月4日にはヒースが復帰を果たし陣容が揃ってくる中、ここから巻き返しを図る上で大きな鍵となるのは昨シーズンのような高い強度の堅守をどれだけ継続できるか。そのためにはエースストッパーとして頼りになる長谷川技の活躍が欠かせない。リーグ随一の『守備職人』に、ここまでの振り返りとこれからの意気込みを聞いた。

「昔に比べるとスキルもついてきましたが、フィジカルの成長が大きい」

――現在の成績、チームと長谷川選手自身のパフォーマンスについての評価をお願いします。

成績だけを見ればあまり良くはないですが、チームがやりたいことは毎試合しっかりやれている。もっと良くなると思っているので、そこを信じて後半戦も前を向いてやっていきたいです。個人としては相手の得点源、外国籍選手につくことが多く、そこをしっかり抑えるのが目標です。ある程度は遂行できていると思います。

――11月のショートブレイク前の最後の試合で負傷し、12月は8試合を欠場しました。特にチームが守備で踏ん張り切れずに3連敗を喫していた時、自分が出ていれば……と感じたりはしましたか。

僕がプレーできていたらなあ……という感じは試合を見ながらちょっとは思っていました。

――この連敗中、チームとして厳しい状況にあるといった認識はありましたか。

みんなそれぞれチームのために頑張っていましたので、正念場という意識はなかったです。結果もそこまで悪くなく、残っているメンバーでしっかり戦えていたと思います。そもそもBリーグ全体で力の差はなくなっています。リーグ下位のチームでもレベルが低いわけではない。下位に負けたら取りこぼしという気持ちを持つようでは、これからのシーズンを戦っていけないと思います。

――例えばサンロッカーズ渋谷戦ではベンドラメ礼生選手につくなど、今シーズンも1番から3番までポジションに関係なく、相手のエースを抑える役割を担っています。得点源を抑えるのは自分に任せてくれ、といった思いはありますか。

任してくれ、とまでは言わないですけど、ついていける自信はそれなりにあります。ヘッドコーチも僕がチームのベストディフェンダーと言ってくれているので、しっかり期待に応えられるようにやっていきたいなと思っています。

――数年前の長谷川選手に比べると、守備の要としてチームを支えていく思いをより言葉に出すようになった印象が強いです。その辺り、自身で変化を感じる部分はありますか。

ディフェンスに関しては、「僕にエースのマークをさせてほしい」といった気持ちの変化はあります。昔に比べるとスキルもついてきましたが、フィジカルの成長が大きいです。それによって相手に嫌なポジションでボールを持たせたり、またはボールを持たせないことがよりできるようになりました。そういう部分に加え、ヘッドコーチからベストディフェンダーと言われて自信になった。この言葉が一番、大きかったです。

長谷川技

天皇杯では「目の前の敵をしっかり倒していきたい」

――では、シュート機会が減っているオフェンスについてはどう感じていますか。

ディフェンスをしっかりやって、オフェンスも平均して10点取ることができたら良いとは思います。ただ、さすがにあの強度でディフェンスをプレーしつつ、オフェンスも全開でいくとなると多分、持たないです(笑)。それに川崎はしっかりボールを回して、いろいろな選手が点を取れるので、僕はしっかりディフェンスにフォーカスできている感覚はあります。ただ、フリーだったら思い切って打っていきます。

――次の試合は天皇杯のベスト8で相手は千葉ジェッツです。エースストッパーとして、冨樫勇樹選手を抑えたいという思いはありますか。

前回の対戦(11月11日の水曜ゲーム)では勝ちましたけど、それを気にしてはいられないです。千葉さんは調子が良いですし、しっかり走ってくるチームなので、そこに対応できるように練習していきます。富樫選手につくことは多分ないです。藤井(祐眞)がいるので(笑)。任された役割を淡々と、そしてしっかりとこなしていきたいです。

――昨年の天皇杯は、多くの欠場選手がいる満身創痍の中、決勝で惜敗し優勝を逃しました。試合後の囲み取材で、長谷川選手が見せた涙は印象深いものでした。

単純に悔しかったです。たまに思い出しますし、非常にもったいなかった天皇杯でした。高校3年のウインターカップで負けて以来、人生で2回目の涙でした。ただ、今年はまた新しい天皇杯となります。一発勝負であり、今年も一試合ずつ、目の前の敵をしっかり倒していきたい気持ちが強いです。

――Bリーグ開幕後、タイトルをあと一歩で逃す機会が続いています。だからこそ、今年こそはといった思いを抱くことはありますか。

優勝できないのは僕たちがただ弱いだけ。だから、タイトルがかかる試合だからと気負ったりすることは僕に関してはないです。いつも通り、そんな気も張らずに一試合一試合、やるべきことをやっていきたいです。

長谷川技

「優勝をする姿を見せることは重要ですが、勝ち負けよりも大事なものがある」

――30代とベテランの域に入りました。お兄さんの長谷川武選手はシーズン序盤に愛媛を退団する際、「プロではもう難しいかも」と語っていましたが、自身のキャリアの幕切れについて考えることはありますか。

自分に関しては(今の兄と同じ)36歳で今と同じく現役バリバリとはいかなくても、身体が持つ限りはずっとプレーを続けたいです。引退の時期について全く考えていないですが、(12月に離脱した)今回の膝のケガでは、引退する時にはこういう感じなのかと、ふと頭によぎったことはありました。今もフィジカルについては毎年、トレーニングをしっかりやっているおかげで外国籍選手にもつけている手応えはあります。でも、昔に比べると疲労が溜まりやすいですし、抜けづらい。三河戦の2日目がキツくて、年齢も関係していると思います。

――現在のコロナ禍の中、プロバスケットボール選手として何をファンに届けられるのか。意識している部分はありますか。

こういう状況の中でも応援してくれるファンの皆さんのために、優勝をする姿を見せることは重要ですが、勝ち負けよりも大事なものがある。そういう気持ちが出て来ました。川崎の試合を見て勉強を頑張れる、仕事を頑張れる。そういう気持ちになってもらえるような試合をしたい。今の世の中で、ファンの皆さんに何を伝えられるのかを考えた時、そういう思いが最近はより強くなってきました。

――最後に、あらためて水曜日の重要な一戦への思いをお願いします。

三河戦の1試合目は、勝つことができました。2試合目は負けてしまいましたが、途中で離されて、追いついてを繰り返す中、前だったら途中でプツンと集中力が切れて20点とか開いていたと思うところで、今は切れずに粘れるようになっています。そこは良くなっていると思いますが、もう一歩レベルアップして勝ち切る強さにはまだ達していないです。

天皇杯は一発勝負で、そこから勝ち切るところがキーポイントになってきます。相手が千葉さんなので、どういうスタイルかはある程度は分かります。試合まで時間もあるのでチームでしっかり共有して、ベストな状態で勝ち切る持ちでやっていきたいと思います。

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