「私がポイントガードになっても優勝できることを証明できました」
12月の皇后杯での激闘など約2カ月のブレイクを経て、Wリーグは1月9日からいよいよ再開する。振り返ると2020年の女子バスケットボール界は、渡嘉敷来夢の右膝前十字靭帯断裂と代表チームの根幹が揺らぐ、あまりにショッキングな出来事が起きてしまった。
そして世界一と言って良い日本の高速バスケの起爆剤であるポイントガード陣も苦しい台所事情だ。11月の代表合宿で本橋菜子が前十字靭帯損傷を負い、吉田亜沙美は去就を明言していないが、昨年2月のオリンピック最終予選を最後にコートから離れている。藤岡麻菜美の引退と合わせ、リオ五輪終了からここまで代表の主力を担ってきた4人のうち、現在コンディションに不安がないのは町田瑠唯のみだ。
現状、新たな選手の台頭が切望されており、それは代表に縁のなかった選手にとっては千載一遇のチャンスである。そんな中で、ここに来て一気に存在感を高めているのがENEOSサンフラワーズの宮崎早織だ。
Wリーグではシーズン開幕から先発ポイントガードを担い開幕10連勝に導いた宮崎だが、皇后杯は負けたら終わりの一発勝負のトーナメントでリーグ戦とは違った重圧がある。しかも、林咲希、梅沢カディシャ樹奈と2人の主力を故障で欠いた状態でベスト8が集うファイナルラウンドを迎え、さらにベスト8の富士通レッドウェーブ戦では大黒柱の渡嘉敷来夢が右膝前十字靭帯断裂で戦線離脱。そんな危機において、宮崎は大きく躍動した。ベスト8で13得点7アシストを挙げると、ベスト4のデンソーアイリス戦では25得点11アシスト10リバウンドと圧巻のトリプル・ダブル。そして決勝のトヨタ自動車アンテロープス戦でも、第4クォーターで10得点と勝負強さを見せての16得点7アシスト5リバウンドと、皇后杯8連覇の立役者となった。
常勝軍団ENEOSの舵取り役を担うことは、言うまでもなく大きな重圧がかかる。宮崎は「私が大丈夫なのかなという不安はありました」と率直な思いを明かすとともに、周囲のサポートによって大きな壁を乗り越えることができたと決勝の試合後に語った。
「やっぱりみんなが大丈夫と言ってくれる言葉が自信に変わって、後半は自分の良いところが出たと思います。私がポイントガードになっても優勝できることを証明できました」
「吉田さんと比べることなく、自分は自分」
皇后杯を通して得た手応えを、宮崎はこう語る。「気落ちが強くなったと思います。今までは途中から出場することが多く、その時はまずはミスをしないで吉田さん、藤岡さんに繋ぐ思いで試合に出ていました。それがメインのポイントガードとなり、結果を残したいと強い気持ちでプレーしたことで良い結果に繋がったと思います」
また、その気持ちの強さは、ブレないプレースタイルにも繋がっている。「吉田さんのようにIQがあるわけでも、引き出しがあるわけでもないです。吉田さんと比べることなく、自分は自分、持ち味のスピードを前面に押し出していこうとプレーしました」
実際、皇后杯での宮崎は、ほぼフル出場と誰よりもコートを走り回りながら最後までドライブの爆発力は落ちず、ENEOSの根幹である堅守速攻を繰り出す動力源となっていたのは、今も鮮烈な記憶として残っている。
皇后杯で宮崎は間違いなく大きなステップアップを果たした。だが、絶対女王で先発の座を確固たるものとするには、ハイレベルなパフォーマンスを続けることが求められる。皇后杯は短期集中決戦ならではの勢いで押し切れた部分もあるが、リーグ戦ではそうはいかない。そして渡嘉敷不在の中、宮崎がENEOSの新たな中心の一員として高値安定のプレーを継続できるかは、昨シーズンの途中打ち切りを挟んでのリーグ12連覇を達成できるかの大きな鍵となる。そこで再び宮崎が「自分がポイントガードで勝てる」ことを証明できた時、それは日本代表のメンバー争いへの本格参戦を意味するはずだ。
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