明成

東山の痛快なオフェンス、明成のよく練られたディフェンスの激突

ウインターカップの男子決勝は、最後までもつれる激闘の末、仙台大学附属明成が東山を72-70で破り優勝を決めた。

先手を取ったのは明成。戻りを早くすることで東山の速攻を封じるとともに、高さの利を生かすゾーンディフェンスを敷く。これに戸惑った東山が縦への推進力を出せない一方で明成のシュートはよく決まり、開始2分半で9-2と先手を取った。

それでも東山はすぐに対応。米須がドライブで切って、ディフェンスを収縮させて西部秀馬、中川泰志へと次々とアシストパスを送る。206cmの留学生ジャンピ(ムトンボ・ジャン・ピエール)を擁しながら、そこにボールを預けて打開させるプレーを選択せず、チームでチャンスを作り出すスタイルを突き詰めてきた意味がここで出た。20-20と追い付いて第2クォーターに入ると、米須の判断の速さ、走り込むチームメートの手元にピタリと合うパスで東山の攻めに勢いが出る。思い切りの良いシュートを打ち、外れてもジャンピがセカンドチャンスポイントに繋げて明成を圧倒。前半だけで米須が9アシスト、ジャンピが13リバウンド6ブロックを記録した東山が20-6と14点差を付けて試合を折り返した。

第3クォーターも東山の速攻とリバウンドの強さが際立つ展開となるが、残り2分を切って山内ジャヘル琉人がようやくの初得点を3ポイントシュートで挙げると、力強いドライブからのバスケット・カウント、速攻から上手くチャンスをお膳立てして6-0のランを演出。ただ、明成に流れが行きかけた第3クォーターの最後は米須が巧みにファウルを誘い、フリースローで55-42とした。

最終クォーター、明成もディフェンスのギアを上げるとともに山﨑一渉の連続得点で点差を1桁に詰める。リバウンドで強みを出し続ける東山、前からプレッシャーをかけて速攻に持ち込む明成と、両チームが死力を振り絞る展開に。それでも調子を上げる山内がロングスリーをねじ込み、スティールからのワンマン速攻を決めて同点に。そしてエースの山﨑一渉の3ポイントシュートで、明成がついに逆転に成功した。

山﨑一渉

2年生エースの山﨑一渉、25得点で優勝に貢献

残り1分、苦しいところで東山の堀陽稀がゴール下の大混戦でオフェンスリバウンドをもぎ取る。フリースローの2本目を落とすがリバウンドをジャンピが押さえて、ファウルを誘って67-67と追い付けば、明成は山内の3ポイントシュートで再び突き放す。それでも米須が3ポイントシュートでファウルを誘い、3本のフリースローをリムにかすらせもしない精度ですべて決めて再び追い付いた。

ただ、東山のオフェンスは機能不全に陥っていた。米須が繰り出す高速スキップパスが明成の前からのプレッシャーディフェンスに何度か引っ掛けられており、ジャンピに預けるプレーもターンオーバーになって使えず、リバウンドとフリースローで繋ぐ展開。

そしてラスト5秒、山﨑がミドルジャンパーを沈めて勝ち越すと、残り5秒で東山は有効なオフェンスを作り出せなかった。

最終スコアは72-70。米須が15得点10リバウンド10アシストのトリプル・ダブル、東山はジャンピが22得点22リバウンド、先発全員が2桁得点を記録したが、明成のプレッシャーディフェンスに最後は沈黙してしまった。明成は山﨑が25得点とエースの仕事。また第3クォーター途中までシュートタッチが絶不調だった山内は最終的に18まで得点を伸ばして劣勢を覆す原動力となった。

初優勝へ千載一遇のチャンスを逃した東山。大澤徹也コーチは「最後2点を決められたのは選手の責任ではなく、ベンチワークの差。選手たちはチームプレーで一生懸命取り組んでくれたのに一歩届かなかった。これは私の責任です」と1ポゼッションの差を悔やんだ。

明成は3年ぶり6回目のウインターカップ制覇。佐藤久夫コーチは「自分を信じること。自分のチームを信じること。信じることで報われることがいっぱいあった」と大会を振り返った。