大苦戦を強いられるも、ディフェンスから勝機を見いだす
皇后杯の決勝で、ENEOSサンフラワーズとトヨタ自動車アンテロープスが激突した。
トヨタ自動車は序盤からゾーンを多用してENEOSの得意とする速い攻めを封じるとともに、宮澤夕貴へのプレッシャーを強めることで攻めあぐねた相手からターンオーバーを誘い、速攻へと持ち込んだ。さらに三好南穂の3ポイントシュート、馬瓜エブリンがタフショットをねじ込むバスケット・カウントとビッグプレーが飛び出したトヨタ自動車が先行する。
その後もハイテンポな打ち合いの中で、運動量で上回るトヨタ自動車がリードを保つ。2日連続のゲームという状況、ファウルトラブルで一度ベンチに下がった中村優花を除けば先発がフル出場を続けるENEOSは、自分たちの展開に持っていけないこともあり消耗が激しかった。そして三好の3ポイントシュートが違いを作り出す。安間志織にゲームコントロールを託し、速いパス回しの中で巧みにスクリーンを使ってフリーになる三好はディープスリーも難なく決め、手の付けられない存在になっていた。
それでもENEOSは苦しい時間帯にディフェンスで耐えることで窮地を打開する。第3クォーターの終盤、トヨタ自動車が攻め急ぐことで決めるべきシュートを外し始めたのをきっかけにギアを上げて流れを呼び込んだ。ラスト2分半でトヨタの攻めをシャットアウトするとともに、チームで連動してチャンスを作って得点を重ねていく。
『女王』ENEOSは一度波に乗ると強い。第3クォーターの最後に中田珠未のジャンプシュートで逆転すると、ここが勝負どころと見極めた岡本彩也花が積極的に仕掛けてリードを広げていった。
宮澤夕貴「ENEOSに入ってから一番うれしい優勝」
トヨタ自動車は攻撃が外一辺倒になり、トランジションでENEOSに先手を取られる状況。第4クォーターの半分もいかないうちに3度のタイムアウトを全部使い切るが、攻め急いだことで崩れたオフェンスのバランスがどうしても立て直せない。足は動いており、リバウンドやルーズボールへ食らい付くインテンシティも落ちなかったが、攻めでそれぞれが『自分が、自分が』が強くなりすぎ、一度アタックに行くとパスを選択できない。
強引なアタックで得点をもぎ取ることはあっても、何度も続くことはない。その一方でENEOSはチームオフェンスが噛み合う。ここまで三好のアタックに苦しみ、攻めで良さを出せずにいた宮崎早織が、ここに来て見事なゲームメークを見せて、チームでチャンスを作り出しては得点を重ねていく。
最終スコアは87-80。トヨタ自動車は第3クォーター途中まで完璧なバスケを遂行したが、終わってみれば『女王』ENEOSの強さが際立つ試合となった。
「第4クォーターの力が本当の力。最後までディフェンスを徹底して走れたことがENEOSの力」と梅嵜英毅ヘッドコーチは胸を張る。また大会MVPに選ばれた宮澤夕貴は「9年目ですけど、ENEOSに入ってから一番うれしい優勝でした」と、どの大会よりも苦しみ抜いた上で勝ち切ったことに涙を流して喜んだ。