A東京、名将ルカ・パヴィチェヴィッチが断行した初のテコ入れ「アルバルクの目指すゲームを最大限に行うため」

A東京、名将ルカ・パヴィチェヴィッチが断行した初のテコ入れ「アルバルクの目指すゲームを最大限に行うため」

2020/12/09 12:13
アルバルク東京

不動の先発メンバー、菊地を須田に変更

12月6日、アルバルク東京は琉球ゴールデンキングスとの同一カード2試合目に85-54と圧勝した。

この試合の前、ショートブレイク明け初戦となる12月2日の富山グラウジーズ戦、5日の琉球との初戦はともに持ち前の堅守が崩れての大量失点と、内容も悪い連敗を喫した。それだけに、ここで堅守復活となるシーズン最少失点で圧勝したことは、ただの1勝以上の価値がある白星だった。

そして、この重要な勝利をもたらした大きな要因は、名将ルカ・パヴィチェヴィッチの仕掛けだった。A東京といえば、パヴィチェヴィッチ就任1年目からここまで当該メンバーに故障やコンディション不良がない限り、安藤誓哉、田中大貴、菊地祥平、竹内譲次、アレックス・カークと不動の先発メンバーを貫いてきた。

チームの状態が良くない時、テコ入れとして起用法を変えるのは定石である。ただ、パヴィチェヴィッチ体制のA東京はこれまで勝ち続けてきたことも大きいが、そういった変化をしないできた。それがこの試合では、菊地に変えて須田侑太郎を先発に抜擢した。昨シーズンに加入した須田が、田中と一緒に先発スタートとなるのは今回が始めて。そして、この策は見事にハマり、A東京はティップオフから8連続得点を挙げ、開始4分で15-3と大きくリードを奪う。序盤に試合の主導権を握ったことが大きな勝因となった。

A東京の最大の強みは、リーグ随一のインテンシティと規律を備えたディフェンス。だからこそ、指揮官は「試合の入りは特に守備を重視しています。だからこそ、ディフェンスの要として祥平、譲次を先発で起用してきました」と語る。

これまでの方針を変え、須田を先発に据えた意図をパヴィチェヴィッチはこのように明かした。「とてもシンプルなことで、アルバルクの目指すゲームを最大限に行うためです。そのためにはメンバーを変更するリスクも気にしないです」

「前日には出だしで点を取られており、またオフェンスにおいてスペースを作り出せていなかった。そこで5対5でのオフェンスであり、大貴がアグレッシブに攻めることが難しくなっていました。祥平ほどではないにせよ須田も手堅いディフェンスを見せてくれます。そして、スペースの問題にアジャストするため須田を先発に起用しました」

須田は今シーズンここまで3ポイントシュート成功率52.1%と好調を維持しており、彼がいることでよりディフェンスを広げることができる。そして、第1クォーターの出だしに田中はゴール下へのアタックでレイアップを決めるなど、前日に比べよりアグレッシブにアタックできていた。この対策が効果的だったのは、試合序盤でいきなり2桁リードを奪ったことが端的に示している。

アルバルク東京

存在感を増す小酒部に対し「一つ信頼を得ました」

また、もう一つの大きな変化は、小酒部泰暉の起用だった。この試合の彼は、大事な第4クォーターの出だしなど要所でもコートに立ち、キャリアベストとなる24分5秒のプレータイムで9得点をマーク。世代を代表するエリートプレーヤーの片鱗を見せた。

昨シーズン途中、大学3年生のシーズン終了後に神奈川大バスケットボール部を退部してA東京に加入した小酒部。チームにとって馬場雄大に次ぐシーズン最初から在籍する現役大学生となった彼は、その圧倒的な跳躍力など素晴らしい潜在能力の持ち主で指揮官も「小酒部は天性のスコアラーで、恵まれた身体能力で攻守ともに活躍できる力を持っている」と評価する。

ただ、大学1年生の時からインカレ制覇を達成するなどトップレベルにいた馬場に対し、小酒部は個人として関東大学リーグの得点王に輝いているが、チームとして大学日本一を争うような環境ではなかった。そういった背景から、指揮官は主力の仲間入りを果たすにはまだ時間がかかると見ている。

「小酒部は大学最高峰の環境でプレーしてはいなかった中、Bリーグのトップレベルで戦うために必要なプレーなどいろいろと吸収しなければならない。彼にとって田中は参考となる良い選手で、日々学んでいます。学ぶペースは早いですが、それでも十分な期間ではありません。彼はどうやったらプレータイムをつかめるのかを少しずつ学んでいるところです」

しかし、この試合の小酒部はリーグ上位チーム相手にも、しっかりインパクトを残せることを証明した。これにはパヴィチェヴィッチも「今日の彼はとてもアグレッシブで強いディフェンスを見せてくれました。そしてオフェンスでは危険なスコアラーでありました。良い働きをしてくれて、一つ信頼を得ました」と称えた。

須田、小酒部に加え、開幕から好調を維持しているケビン・ジョーンズと昨シーズンから加入した選手が存在感を高めている一方、竹内は5日の試合での出番が第1クォーターのみの約4分。6日は15分の出場だったが、アレックス・カークのファウルトラブルがなかった場合、果たしてどうなったのかは不透明。また、ザック・バランスキーは5日の試合のプレータイムは前半だけの9分で、6日は出場機会なしに終わっている。

A東京がここで負けたら大きな苦境に立たされるという、踏ん張りどころで勝つ姿に珍しさはない。ただ、それはこれまでと同じスタイルを貫いて勝ち取ったもの。それが今回は積極的な仕掛けを行ったところに、これまでとの違いがある。そして竹内、菊地、バランスキーといった連覇の立役者たちのプレーのクォリティーに陰りはないことも忘れてはならない。

現在、A東京は11勝7敗の地区5位にとどまっていて、王者らしからぬ戦いを見せる試合がここ数年の中では最も多い。しかし、そんな厳しい状況においても、さらなる進化に向けたチーム作りは水面下で着実に進んでいる。王者の強さ、怖さが垣間見えたリーグ上位対決だった。

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