サーディ・ラベナ

三遠ネオフェニックスのサーディ・ラベナは、フィリピンで3年連続大学チャンピオンに輝き、すでにフル代表にも選出されている同国の次代を担う逸材だ。その彼が、プロ選手としてのスタートにBリーグを選んだことは日本バスケットボール界はもちろんのこと、母国フィリピンでも大きな話題となった。ここまで5試合に出場、うち4試合で2桁得点を記録。強気で仕掛けるプレーは数字以上のインパクトを残している。その彼が新型コロナウイルスの陽性反応が出て、欠場がしばらく続いたことは残念だが、デビューからここまでの経験を頭の中で整理し、自分の実力に変えることもできるはず。今、Bリーグで最も注目を集めるラベナに、デビューからここまでの手応え、課題を振り返ってもらった。

「僕がやるべきことは楽しんでプレーすること」

――Bリーグで大きな注目を集めてデビューした気持ちはどんなものでしたか。また、最も印象に残っている場面について教えてください。

本当に驚きました。周りのリアクションがここまで大きなものになるとは全く予想していなかったです。特にBリーグのデビュー戦は多くの人が試合を見てくれて、多くのメッセージをくれました。とても感謝していますし、ファンの皆さんのことを愛しています。これからもフェニックスのサポートを続けてほしいと願っています。

やはり最も印象に残っているのは、最初の試合です。本来なら7月にはチームに合流する予定だったのが大幅に遅れ、11月になってようやくデビューできました。そしてプロ選手として初めての試合で、勝てたことも大きいです。

――これだけ脚光を浴びると、結果を残さなければといけないとプレッシャーを感じますか。

プレッシャーは常にあります。たとえ誰も試合を見ていなくてもプレッシャーは感じますが、コートに立てば、どれだけの人が自分を見ているのかは気になりません。僕がやるべきことは楽しんでプレーすること。なぜなら、そのために大好きなこの競技をプレーしているからです。そうすることで試合を見てくれている人たちを可能な限りハッピーな気分にさせたいです。

――5試合を終え、Bリーグのレベルをどう感じていますか。

レベルはとても高いです。試合のテンポはとても速く、今はそこにアジャストしているところです。日本人ポイントガードのスピード、インテンシティの高いプレーに衝撃を受けました。彼らは1人で前線からバックコートまで激しいプレッシャーをかけてきます。今はまだそれに慣れているところで、もっとチームメートを楽にプレーさせられるようになりたいです。

また、これまでは外国籍選手が1人の状況でのプレーしか経験したことがなかったのですが、Bリーグでは常に2人の外国籍選手がいて、その中でプレーするのはとてもタフです。特に僕のようにペネトレイトを多く仕掛けていく選手にとっては大変です。

サーディ・ラベナ

「結果が出ていないからといってストレスを感じることはない」

――プロキャリアをスタートさせましたが、大学とプロの違いはどこにありますか? また、三遠での役割は大学時代とは違いますか。

大学との一番の違いは選手がみんな賢いことです。学生よりもスキルがあり、能力が高いだけでなく、スマートなプレーをします。他の選手の動きに対応するため、僕もより速く判断してプレーしないといけないです。自分の持ち味であるスピード、高い身体能力を発揮できるように、判断のスピードも上げないといけない。メンタル面での成長がより求められると考えています。

大学時代、僕はスコアラーやシューターといった明確な役割はなく、チームが勝つために何でもやるのが仕事でした。フェニックスでも同じように、ペネトレイトから味方のシュートチャンスを作り出す。堅いディフェンスをし、しっかり走ってトランジションに絡む。コーチが求めるものを何でもこなしたいと思っています。

――リーグ戦は過密日程で、なおかつリーグ初年度のラベナ選手は毎週、新しい相手と対戦することになります。そこのアジャストはやはり難しいですか。

自分が求める本来のプレーをするために時間が必要であっても、プロはすぐに適応しないといけません。改善しないといけないことはたくさんありますが、それはシーズンを通して取り組んでいきます。毎試合、新しいチーム、今まで対戦したことのない相手とマッチアップするのもプロの一部です。短い期間で相手の傾向など対策をしないといけませんが、これもプロとしてのチャレンジだと楽しんでいます。

―― 大学では3年連続チャンピオンと勝ち続けました。しかし、今は状況が違いチームはリーグ下位です。結果が伴わないことにストレスは感じませんか。

大学では2年間負けなしで、3年連続でチャンピオンになりました。ただ、1度目の優勝の前年には決勝でライバルチームに負けています。勝つためには過程が必要であることを分かっています。今はコーチ、システム、選手たちがお互いを信頼してチームを作り上げている段階です。だから今、思うような結果が出ていないからといってストレスを感じることはありません。チーム全員が一致団結して勝利を目指し、それによってチームにかかわるみんなをハッピーにしたいと願っています。

サーディ・ラベナ

「見ている人を少しでも幸せな気分にさせたい」

――コート外での質問もあります。日本での新しい暮らしには慣れましたか。すでにお気に入りのお店はあったりしますか。

大学時代はフィリピン最大の都市であるマニラで暮らしていました。今はマニラと全く違う環境ですけど素晴らしいです。マニラと比べると騒々しくないのは良いですね。豊橋、豊川の人々はとても親切ですし、食べ物もおいしいです。また、空気も新鮮でおいしいです。新しい環境での暮らしに慣れるのは簡単でした。

ブラザータコスというお店がお気に入りです。シカゴヘアスタジオにもよく行っています。ショッピングモールにも行きますし、日本食は好きでラーメンの一蘭、寿司、焼肉、餃子とみんなおいしいですね。

――ラベナ選手を応援するためにフィリピンの方々も試合観戦に訪れます。自分の存在が三遠地域での国際交流を促進する助けになっていると感じますか。

そういったことを今まで意識したことはなかったですが、もし、僕を応援してくれることでフィリピンの人たちが日本の方たちと交流を深めるきっかけになったら、これ以上に素晴らしいことはありません。フィリピンと日本を繋ぐ架け橋になれたらと思います。フィリピンと日本のみんなが試合の話題で仲良くなってくれたら、バスケットボール選手として本当にうれしいです。チームが勝てば日本の方たち、フィリピンの人に限らず、みんながチームをより誇りに思ってくれます。栄光をみんなで共有することは大きなモチベーションになります。

――学生時代はなかなか経験する機会がなかった長距離の遠征についてはどんな印象ですか。

バスケットボールを通して日本の様々な場所に行けるのは貴重な体験です。島根の試合の後、特急電車に乗りましたが、今までで一番速くて快適な乗り物でした。遠征で長く一緒に過ごすことでチームメートをより知ることもできます。太田(敦也)さん、(岡田)慎吾さんとベテラン選手を始め、みんなからいろいろと教わっています。

――最後に2020年、最後の1カ月をどのように締めくくりたいか。ファンへのメッセージをお願いします。

先日、フィリピンでは台風で多くの被害が出たので、できる限り復興に協力したいです。そのためにもバスケットボール選手としてできる限りのハードなプレーをして、見ている人を少しでも幸せな気分にさせたいです。また、2020年は新型コロナウィルスによって世界中が大変な時を過ごしました。だからこそ、少しでもポシティブな気分で1年を終えられる助けとなるプレーを披露したいです。

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