富樫勇樹

決勝アシストは「1対1にさせてほしいと頼んだ」プレー

千葉ジェッツは10月10日のサンロッカーズ渋谷戦を93-91で競り勝ち、これで開幕から3連勝。千葉のエースである富樫勇樹は第1クォーターで3ポイントシュート2本成功を含む6得点に3アシストと絶好のスタートを切るが、試合全体でのフィールドゴールは13本中4本成功に留まった。しかし、シュートタッチが悪いなら味方の得点機を演出と、見事な切り替えでチームを勝利に導くとともに、11得点10アシストのダブル・ダブルを達成した。

試合後、富樫は劣勢の時間帯も少なくない厳しい試合の勝因をこう語る。「あれだけオフェンスリバウンドを取られ、ターンオーバーも多く91点を取られてしまいました。ただ、それでもディフェンスで集中を切らさずにできました。雰囲気的にもっと崩れかけてもおかしくないところで、第3クォーターのシャノン(ショーター)の活躍などで繋げられたのが良かったと思います」

同点で迎えた残り5秒からのオフェンスで、ゴール下に切れ込んでギャビン・エドワーズの決勝ブーザービーターをアシストした最後のプレーについて、その前のタイムアウトで次のようなやりとりがあったと明かす。

「最初は、僕が上でボールを持ってピック&ロールという話でした。ただ、それでダブルチームに来られたり、相手がハードショウで対応していたので、ターンオーバーになるのは嫌でした。同点で失敗しても負けはないので1対1にさせてほしいと頼み、任せてもらいました。最終的に自分がシュートを打つのか、パスをするのか決めていなかったですが、最後のプレーを自分が選択するその責任を果たせたと思います」

また、この試合、千葉はコロナ禍による入国制限の影響もあって来日が遅れていたシャノン・ショーターが先発出場でBリーグデビューを果たした。かつてNBL時代の広島ドラゴンズフライズにも在籍していた193cmの彼は、ポジションがSG/SF登録で積極的なゴール下へのドライブを武器とするスラッシャー。自らボールプッシュをしたいタイプの選手であり、そうなるとボール運びを行う富樫とどのようにボールをシェアするのかが、円滑なチームオフェンスを行うための鍵となる。

「これから試合と練習を重ねていくことで、同じコートにいる時にどうやっていけばいいのか徐々に分かると思います。今日の試合の通り、彼もボールを持ちたい選手ですし、持って活躍できる。そこは彼の良さも出せるように、任せる時には任せたい」

こう富樫は語り、ショーターに気分良くプレーしてもらいチームオフェンスを機能させるための最適解をこれから探していく考えだ。ただ、一方でここ一番の勝負どころにおいては、今日の試合のように引き続き自分にボールを預けてもらいたいとエースの矜恃を見せる。

「第4クォーターのああいう場面では、このチームで自分がボールを持っていたい気持ちはあります。ショーターのような選手がいても最後の場面では自分がボールを持つ。そういう強い気持ちでいます」

クラッチタイムでこれまでも富樫はチームを勝利に導いてきた。ただ、これまでは2019年の天皇杯が示すように、自らシュートを打ちに行く印象が強かった。それが今回はエドワーズとの阿吽のコンビネーションで勝負を決めた。彼にとっては自然のことだろうが、シュートに固執することはなく臨機応変にパスもしっかり出せる。ここ一番における怖さをあらためて富樫が証明した千葉の劇的勝利だった。