ラジョン・ロンド

「チームメートも自分自身も失望させたくない」

『プレーオフ・ロンド』はただプレーオフで好調なだけでなく、その戦いが進むに従って真価を発揮する。ラジョン・ロンドは、今のレイカーズの堅守速攻のスタイルに合わないと指摘されながらも、セカンドユニットの司令塔として投入されるとリズムに変化を与え、コートを支配する。負けられないプレーオフで両チームの選手たちが熱くなっている時こそ、ロンドの冷静さとバスケットIQは光る。

NBAファイナルを前日に控えた会見で、好調の理由を問われたロンドは、「ボールを持ったら失わないこと、コート上でコーチの代わりに指示を出すこと、チームメートが欲しいところにパスを出すこと、攻守ともに効率の良いプレーをすることだ」と答える。簡単なことのように言葉にするが、すべてを高いレベルでパフォーマンスできる選手はNBAでもほんの一握りしかいない。

もっとも、彼にとっては10年ぶりのファイナルだ。前回は2009-10シーズン、セルティックスに所属していたロンドはレイカーズと戦い、GAME7の死闘の末に敗れた。当時のセルティックスにはケビン・ガーネット、ポール・ピアース、レイ・アレンが揃い、レイカーズにはコービー・ブライアントとパウ・ガソルがいた。その2年前には同じくレイカーズとのNBAファイナルを戦い、この時は優勝している。

「僕は若くして成功を手にした。NBAチャンピオンになったのは21歳の時だ」とロンドは言う。「今は34歳だから、今回のファイナルは全く別の経験になる。10年ぶりに戻って来られたことを謙虚に受け止めたいし、若い選手には『滅多に経験できないことなんだぞ』と言っておきたい。すべての選手がキャリアを懸けてこのチャンスを求めているから、しっかりつかまないといけない」

彼にとって、ここまでの道のりは決して簡単なものではなかった。トップフォームを取り戻したのはつい最近のこと。セカンドユニットでのプレーに慣れることも含め、シーズンを通じて苦しい時期の方が長かった。

「正直に言えば、自分に確信は持てなかった。ケガが続いて7カ月間プレーできず、どれだけのパフォーマンスができるか分からなかった。それでも、自分の技術とやってきた努力、ここ数カ月でやってきたことを信じようとした。ヘッドコーチも僕が復活すると信じてくれたし、フロントも僕を信頼し続けてくれている。僕はチームメートも自分自身も失望させたくない。強い競争心が僕にはある。このチームにインパクトを与え、勝利に貢献したいんだ」

レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスを擁するとはいえ、それだけでレイカーズが勝てるものではない。ヒートは東の第5シードから勝ち上がってきたが、アンダードッグとは呼べない確たる力を備えたチームだ。ロンドはそれを理解し、自分のスキルと経験のすべてをここにぶつけるつもりでいる。

「ヒートは組織立ったチームだから、ファイナルは難しい挑戦になる。ジミー・バトラーとの対戦は楽しみだし、他の選手もリスペクトしている。バム・アデバヨやゴラン・ドラギッチはオールスター級の活躍をしているよね。ファイナルは、毎試合お互いに必要な修正をしながら同じゴールに向かって正面からぶつかる素晴らしい戦いになるだろう」