文=丸山素行 構成=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「ああ、日本変わるんじゃないかな」という感覚

昨日の国際強化試合、バスケットボール男子日本代表は韓国代表にほとんどの時間帯で2桁前後のリードを保っての快勝を収めた。ポイントガードの篠山竜青は富樫勇樹とのタイムシェアで19分のプレータイムを得て、勝利に貢献している。

ニック・ファジーカスと八村塁の新戦力2人が話題となっているが、ファジーカスは川崎ブレイブサンダースで一緒にプレーしており、篠山にとっては気心の知れた相手。彼が驚いたのはゴンザガ大でプレーする八村塁だ。試合を終えた篠山は「いやあ、すごいです」と称賛する。

「もちろんすごい選手が帰ってくるというのは分かっていますし、Youtubeとかいろんなところでプレーは見ていましたが、初日の練習でそれ以上のダンクを見せてくれたので、ワクワクします。一緒にプレーしていてもそうだし、ベンチで見ていてもそうだし、本当に皆さんもそうだと思うんですけど、『ああ、日本変わるんじゃないかな』というのをひしひしと感じます。

「あの身体能力があれば突っ込んでしまえばどうにかなると思うんです。日本にいればただ突っ込んでジャンプすればノーマークになる。ですが、やっぱりそこはアメリカで修行したところだと思いますが、ゴール下に切り込んでからのステップ、止まってジャンプシュートを打つとか、運動能力に頼らずに基本的なステップ、ストップ、そういう部分を踏めるし、キックアウトもできますし、そこが本当にすごい部分です」

「後半に入ってしっかりと落ち着いて修正できた」

チームは快勝したが、篠山自身は苦戦を強いられており「バタバタでしたね」と反省しきり。ファジーカスと八村にインサイドを支配された韓国は、日本のバックコートを狙ってきた。篠山が攻撃を組み立て始める段階で強烈なプレッシャーをかけ、時には2人掛かりで圧力を与えた。

「コンディションもかなり上がってるんじゃないかと思ってゲームに入りましたけど、韓国の運動量に対して息が上がってしまい、出だしで危なっかしいことをしてしまいました。交代で入ってやってはいけないプレーで、そこは反省すべきだと思います」

「プレッシャーとかフィジカルというより、後ろから狙ってきたりギャンブル気味な。日本だとああいう感性を持った選手はなかなかいないし、ああいうバックファイア(背後から手を伸ばしスティールを狙うプレー)はBリーグだとファウルになることが多いので、そこのアジャストは後手後手になってしまいました」

ただ、そんな韓国の奇襲に面食らったもののアジャストするのは早く、試合の主導権を譲るようなことはなかった。篠山も「後半に入ってしっかりと落ち着いて修正できたので、これをしっかりと前半からやれればもっともっと良い感じでいけるんじゃないかと思います」

「日本が変わっていく部分」をリードする存在に

『ああ、日本変わるんじゃないかな』という変化はファンだけでなく選手も感じている。だからこそ、篠山はポイントガードとしてその可能性をコート上で形にしなければならない。

「今までは一回のオフェンスを大事にしなきゃならない、リバウンドも難しいのでセカンドチャンスもないと思うと、どんどん悪循環になってタフなミドルシュート、ロングツーだったりを打つのが日本の良くない部分でした。ですが、シンプルに2点が稼げるだけで、シューター陣もあれだけ簡単にノーマークになれる。これはどんどん日本が変わっていく部分です」

強力な武器を手に入れたからこそ、ポイントガードのゲームメークの重要度も増す。富樫と篠山、司令塔として定着している2人がそれぞれどんな色を出してチームを引っ張っていくかが、今の日本代表の大きなポイントとなっている。