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起死回生のブザービーターも2度目はなく、延長戦を落とす

セルティックスが地元で2連勝してスタートしたシクサーズとのカンファレンス・セミファイナル。フィラデルフィアに舞台を移しての第3戦は最大点差10点、主導権が目まぐるしく行き来する大混戦となった。

この第3戦もプレーオフらしい、守備が強調された重い展開に。第2クォーター半ば、セルティックスがショットブロックから速攻に転じ、テリー・ロジアーがオープンの3ポイントシュートを沈めて35-25と一度は2桁のリードを奪う。それでもホームのシクサーズも負けてはいない。ジョエル・エンビード不在の時間帯、速い展開からアーサン・イリヤソバ、ダリオ・シャリッチの外角シュートで反撃に転じ、ベン・シモンズが迷いのないドライブで守備網を破りレイアップを沈めると場内は大歓声。これで勢いに乗ったシクサーズは、コートに戻ったエンビードが速攻からのダンクシュートでバスケット・カウントをもぎ取り逆転に成功。残り1分45秒、マルコ・ベリネッリの3ポイントシュートで11-0のランでセルティックスを突き放した。

ただしシクサーズの勢いも長くは続かない。第2クォーター終盤に守備を立て直したセルティックスに流れを断ち切られると、後半は一進一退の攻防に。特に第4クォーターは常に1ポゼッション差で推移する大混戦となった。

結果的に勝負どころでのミスがシクサーズに相次ぐことに。第4クォーター残り24秒、87-87でシクサーズのポゼッション。ベン・シモンズは時間をたっぷり使い、このポゼッションで勝負を決めるつもりでいた。ところがJJ・レディックにボールを預けた後、リターンのパスを見ておらずターンオーバーに。残り6秒でボールを奪ったセルティックスは速攻に転じ、ロジアーからジェイレン・ブラウンにつないで簡単に勝ち越し点を奪った。

ただここは、残り1.8秒からベリネッリの起死回生の同点シュートが決まって試合は延長戦に。ミスを帳消しにするクラッチシュートで首の皮一枚を残したシクサーズだった。

延長戦も点差が開かない接戦に。シクサーズが先行するが、プレーオフに入って絶好調のジェイソン・テイタムをエンビードでも止められず、突き放すことができない。残り1分を切って、またも緩慢な横パスをカットされ速攻に。アル・ホーフォードのフリースローで1点差とされ、残り5.5秒でまたもアル・ホーフォードにゴール下を破られ逆転を許す。

タイムアウトを取ってシクサーズのスローインでの再開。残り時間わずかでも逆転のチャンスは十分に残していたはずだったが、このスローインを投じるシモンズも受けるエンビードも集中を欠いていた。ベテランのアル・ホーフォードはここを狙っており、クラッチスティールに成功。ファウルで止めるがフリースロー2本を決められ98-101と3点差に。シクサーズは最後のチャンスをベリネッリにボールを託すが、タイムアウトを使い切った残り3秒、自陣からの攻めではまともなシュートは打てない。これがリングを叩いて試合終了となった。

シクサーズは『勝てる試合』かつ『勝たなければいけない試合』を落とした。このシリーズに入ってから絶不調のシモンズは、16得点8リバウンド8アシストとスタッツ上では結果を出したが、勝負どころのターンオーバーが響き敗戦を招いてしまった。それでもヘッドコーチのブレット・ブラウンは「ウチの若い選手たちは、時々若さを出してしまう」とコメントするだけで、責めようとはしない。ミスが相次いだのはシモンズだけではない。レギュラーシーズンで台風の目となった若さが裏目に出て、0勝3敗と崖っぷちに追い込まれた。

シモンズとは対照的なのがセルティックスのベテラン、アル・ホーフォードで、13得点6リバウンド2アシストとスタッツは平凡だが、要所でのクラッチプレーを連発し、この試合のヒーローとなった。

劇的すぎる試合を制した直後のコート上でのインタビューで「信じられない」と繰り返す彼を、割って入ったテイタムが「Playoff AL!」と称える。31歳のアル・ホーフォードは「若い選手にはこの瞬間をただ楽しんでプレーしてもらいたい」と語った。頼りになるベテランを中心に、若手がノビノビとプレーするセルティックスは、カンファレンス・ファイナル進出に向けて視界良好だ。