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『超攻撃型チーム』の印象そのままに守備強化に成功

ロケッツは昨シーズンと同様、リーグトップクラスのオフェンスを武器とする超攻撃型チームだ。1月下旬から負けなしの15連勝中、ウォリアーズを抑えて西の首位をキープしている。

クリス・ポールが加わった新チームのケミストリーも仕上げの段階を迎えた。先日は、経験豊富な『ミスター・クラッチ』ことジョー・ジョンソンも加入し、23年ぶりの優勝を狙える陣容も揃った。

攻撃力ばかりが注目されるロケッツではあるものの、その守備力も決して侮れない。むしろ、今回の連勝を支えている要因はディフェンスにある。直近15試合での平均失点を見ると、ロケッツはリーグ2位の101.0失点。現代のNBAにおいて欠かせない3ポイントシュートの被成功率でも、直近15試合ではリーグで2番目に低い33.0%に抑えている。試合を通じて2桁得点差になる場面が一度もなかった3月4日のセルティックス戦でも、ロケッツは守備で勝利をもぎ取った。

1ポゼッションゲームの展開で迎えた第4クォーター残り2分以降、ロケッツはPJタッカーとトレバー・アリーザが合計3スティールをマークし、セルティックスに攻撃のリズムを与えなかった。これぞプレーオフという試合を制した後、ヘッドコーチのマイク・ダントーニは「私からすれば、今日のような形で試合に勝たないといけない」と語る。攻撃が最大の防御という戦術『ラン・アンド・ガン』を多用する印象が強いダントーニの発言とは思えないが、こう続けた。

「常に良い試合になるわけではない。3ポイントシュートが決まらない試合もある。対戦相手が素晴らしいプレーをする場合だってある。それでもチームが負けない方法を試合中に見いだすことができるか。PJは素晴らしいプレーをしてくれた。彼は、守備で普段より多くの負担を請け負ってくれた」

ロケッツの守備については、セルティックス指揮官のブラッド・スティーブンズも、4日の試合前にこう語っていた。「彼らの守備についてはあまり語られない。他チームのコーチから聞いた話だが、ロケッツはスイッチングを一つ上のレベルに昇華させたと言っていた」

ロケッツは、セルティックス戦までの14試合では平均13.3得点差をつけて勝ってきた。しかも、どの試合もビハインドを背負わない状態で第4クォーターを迎える『横綱相撲』でだ。だが、セルティックス戦では88-89で最終クォーターに入り、手に汗握る攻防を繰り広げた。

過去NBAオールディフェンシブチームに8回も選出されたポールの加入が、ロケッツのディフェンス改善に与えた影響は少なくないだろう。ただ、新チームとなって1年目にこれだけの結果を残せていることに驚かされる。それもこれも、チーム全員が即結果を残すことにこだわっているからと、ダントーニは言う。

「新しいチームを機能させる方法を見つけるには、2、3年の月日がかかることが多い。しかし、このチームの選手たちは、すぐに結果を出そうとしている。全員で、何がベストな方法かを常に話し合っている」

今シーズンのロケッツは、5点差以内で決着がついた試合で6勝3敗という戦績を残している。レギュラーシーズンも残すところあと約1カ月。もし今のレベルの守備を今後も維持できたら、王者ウォリアーズとて楽観はできなくなる。タレントレベル、ここ数シーズンの実績、成長速度のいずれを見ても、東西を通じ王者にとって最大のライバルとなり得るチームは、ロケッツしか見当たらない。