文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「藤井が流れを変えた」と指揮官も称賛

川崎ブレイブサンダースは昨日行われたレバンガ北海道との第1戦で、最大21点をひっくり返す逆転勝利を収めた。ターニングポイントとなったのは第3クォーター中盤、ここでベンチから投入された藤井祐眞が逆転劇の主役を演じた。

第3クォーター残り5分23秒からコートに立った藤井は、激しいディフェンスで北海道オフェンスを停滞させ、ボールをプッシュして速攻を繰り出し、3ポイントシュートを連発して10得点を挙げた。13-2のランを主導して試合の流れを川崎に引き寄せると、最終クォーターもフル出場。17得点4アシスト2スティールと堂々たるパフォーマンスで勝利に貢献した。

指揮官の北卓也も「控えで出て来た藤井が流れを変えた。今日は彼がヒーローインタビューに値する活躍でした」と絶賛した。

藤井も「後半苦しい中、シュートを決めることもできたし、ディフェンスでもスティールからうまく速攻につなげることもできました。ルーズボールにも絡むことができて、チームにエナジーを与えられたという部分では個人的にもうれしい」と満足のいく内容だったようだ。

特に第3クォーターでの活躍が際立ったが、それはチームメートの鼓舞により引き出されたパフォーマンスだと藤井は言う。「後半に入る前に篠山さんやニックも『チーム一丸でもう一回エナジー出して頑張ろう』と言ってくれて、そこで『自分もエナジーを出していこう』という気持ちになって、追い上げるプレーにつながりました」

ショットクロックわずかなところを託される信頼

藤井は試合を通して3本の3ポイントシュートを沈めた。だがそれはノーマークで放ったものではなく、自ら打開して決めたタフな状況でのものだった。「ショットクロックの残り時間がない時に自分がボールを持っていれば、とにかく攻めようと思っているので、思い切り打って入ったので良かったです」

ショットクロックが残りわずかになると、主にチームのスコアラーにボールを預けるものだ。その場面でボールを託されるということは、チームメートやヘッドコーチからの信頼を得ているという証拠でもある。

北ヘッドコーチは試合後の会見で「北海道はベンチスコアがリーグNo.1、ウチは最下位なので控えの選手が思い切ってシュートを打ってやってくれたことが良かった」とコメントした。ファジーカス、そして辻直人と絶対的なスコアラーがいることは川崎の強み。そこに得点が集中するのは当然だが、だからこそベンチから出て平均8.2得点を挙げる藤井の存在は大きい。

先発と遜色ないシックスマンの『価値』

控えと言っても、藤井は平均22.5分のプレータイムを得ており、先発を務める篠山と1分しか差はない。昨日の試合のように篠山よりも長くコートに立つ時もある。

代表に選出されている篠山竜青というポイントガードがいるため控えに回っているが、他のどのチームでも先発を務められるだけの実力がある。それでも以前から「居心地が良いのかもしれない」とベンチから出てくる立ち位置をポジティブに受け止め、「シックスマンっていう今のポジションで、どうやって流れを変えようかっていうのは意識してます」と、そこにやりがいを感じている。

「とにかく流れが良い時はボールをプッシュして、行けたら行ってダメなら止まって」と基本のスタイルを説明する藤井。「追いつこうとして、裏を取られたりしちゃう時もあります」と気持ちが空回りしてしまう時もあるようだが、藤井のアグレッシブな姿勢は特にチームがうまく行っていない時に、状況を一変させる起爆剤になる。

チャンピオンシップを目指す戦いは激しさを増し、主導権の奪い合いとなる。そんな時に流れを変える力を持つ藤井の存在は重宝される。活躍の場は今後さらに増えそうだ。