『格差』を踏まえたチャンピオンシップ出場権争い
長いレギュラーシーズンの折り返し地点となる30試合を終えたばかりのBリーグ。昨シーズンの戦績同様、前半戦を終えた結果は一目瞭然の東高西低であった。交流戦の戦績は以下の通りである。
東地区(勝率.731)【38勝>14勝】中地区(勝率.269)
東地区(勝率.795)【35勝>9勝】西地区(勝率.205)
中地区(勝率.604)【29勝>19勝】西地区(勝率.396)
交流戦での勝率7割を越える東地区に対し、中地区と西地区で勝ち越したクラブは一つもない。だが、勝ち星を挙げられなかったのは西地区最下位の西宮ストークスだけであり、負けっ放しというわけでもない。西宮とともにB2から昇格してきた島根スサノオマジックはすでに2勝も挙げている。東地区から3勝以上を挙げているのは中地区首位のシーホース三河と西地区首位の琉球ゴールデンキングス。さらに前節の交流戦で唯一、サンロッカーズ渋谷から勝ち星を奪った三遠ネオフェニックスしかいない。ゆえに、島根がつかんだ2勝の価値は大きく、自信につながっているはずだ。
バスケIQの高さに比例する東地区の強さ
東地区の強さは、潤沢な資金力やタレントが揃う旧NBLチームという話だけでは片付けられない。王者・栃木ブレックスから多くの逸材が移籍したのを始め、「埋もれていた日本人選手たちが才能を開花させながら、リーグ全体としてレベルは上がってきています」という印象を持つのは千葉ジェッツの小野龍猛だ。
自身も、旧トヨタ時代(現アルバルク東京)はなかなか出場機会を得られなかったが、千葉に移籍したことで本領を発揮し、日本代表キャプテンを任されるまでに成り上がった経験を持つ。「確かに東地区はすごく良いバスケットを今はしているなと感じています。これからもっともっと完成度は高くなっていくと思いますし、一人ひとりのバスケIQが高い選手がいます」というのが小野の見解である。
身長や技術を比較しても、中・西地区が際だって劣っているわけではない。だが、ヘッドコーチの要求に対し、チームが一丸となって100%遂行できるバスケIQの高さにおいては東地区が秀でている。バスケIQの高さに比例するように、東高西低の状態が生まれていると感じる。
シーズンは長いが、最後に笑えれば良い
中地区は三河が、西地区も琉球が頭一つ抜け出して首位に立つ。しかし2位以下は混沌としており、中地区は7ゲーム差、西地区は9ゲーム差でひしめき合う。だが、挽回できる試合数は十分残っており、チャンピオンシップ出場をあきらめる時期でもない。
前半の戦績が表すように、東地区から勝ち星を奪うのは厳しい現実がある。その現実を受け止め、背伸びをした状態でのギャンブルはせず、勝敗を度外視してでも地に足をつけた戦いを行った方が成長につながるはずだ。リーグ戦は一戦必勝ではない。コツコツと尻上がりに調子を上げながら、チャンピオンシップへ羽ばたくための滑走路である。
勝率5割を切っていても、チャンピオンシップを狙えるのが中・西地区のメリット。ここは思い切って同地区対戦や確実に勝てる試合に照準を合わせた方が効率は良い。東地区の強豪に無理に対応するのではなく、自分たちの目指すべきスタイルをぶつけることで長所や弱点が露呈し、それらを修正しながら成長につなげていく。シーズンは長いが、最後に笑えれば良いのだ。
東地区との残り試合数は、ほとんどのクラブが6か8試合。しかし、現在中地区最下位の横浜ビー・コルセアーズだけはすでに12試合を消化しており、残りはホームでの川崎ブレイブサンダースとの2試合を残すのみ。これは大きなアドバンテージと言えよう。
東高西低のレベル格差は偶然か必然か──
東地区とは格差のある中・西地区でも、首位争いをするクラブはチャンピオンシップで勝つためにも高いレベルの戦いを欲している。中地区首位の三河と西地区2位の京都ハンナリーズは10試合、西地区首位の琉球は8試合、それぞれ東地区との対戦が残っている。琉球vs三河の首位決戦もこれからであり、切磋琢磨できる機会が多いことは上位チームにとっては好都合だ。
昨シーズンのチャンピオンシップでは、東地区のディフェンスの強度などの差に戸惑う選手もいた。三河は川崎、琉球は千葉が最終戦の相手であり、その時点でチャンピオンシップ出場を決めていれば、高いレベルを体感しながら良い調整ができることだろう。
東高西低のレベル格差は偶然か、必然か──。数年後、西高東低に反転するかもしれないと考えれば偶然と言える。一方、1クラブに最低でも日本人選手9名を確保しなければならず、18クラブある現状は162名ものプロレベルの選手が必要だ。だが、FIBAランキング52番目のバスケット後進国の中からこれだけの数の質の高い選手を輩出しなければならない状況こそが難しく、格差が生まれてしまうのも必然である。
プロレベルの好ゲームをキープし、技術でファンを魅了できるクラブ数を精査する必要性を迫られるのが先か。それより先に全体のレベルが引き上げられることで格差が消えるのか。後者になることが、日本の世界ランキングを上向かせる近道でもある。
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