Bリーグはレギュラーシーズンの3分の2を消化したところで中止となった。これからポストシーズンに向けて緊張感が高まる状況で急に試合がなくなったことで、選手たちはモチベーションを向ける先を失い、気落ちしているに違いない。特に、今シーズンに調子を上げていた選手はなおさらだ。ここではプレータイムを指標として、今シーズンに大きなステップアップを見せていた選手のパフォーマンスを振り返る。
エナジー溢れる千葉においても一際目立つ存在に
Bリーグ初年度、秋田ノーザンハピネッツでの田口成浩は、安藤誓哉と並び60試合すべてに先発出場、日本人選手としては特に長い32.4分のプレータイムと『ほぼ出ずっぱり』でフル稼働した。降格したチームを1年でB1へと引き上げた後に、千葉ジェッツへ移籍。プロ選手として自分をさらに高めるために新天地を選んだのだが、1年目の2018-19シーズンは先発わずか1試合、プレータイムは15分。チームのスタイルに馴染むのに時間がかかるうちに、いつしか思い切りの良さが影を潜めてしまった。
それでも千葉での2年目となった今シーズンは40試合すべてに先発出場。プレータイムも22分へと伸びた。スタッツ以上に彼の持ち味である思い切りの良いプレーが、千葉のバスケットと噛み合うようになったのが大きなステップアップだ。
秋田では良くも悪くも『常に全力』でがむしゃらにプレーすることが評価されたが、千葉では攻守に組織的なプレーを崩さないことがまず前提とされる。そこを十分にクリアしつつ、ただチームルールをなぞるだけで終わらずハッスルするプレーまで十二分に発揮できたことが、周囲の信頼を勝ち取り、プレーヤーとしての自身の価値を高めることに繋がった。
自分が主体のチームではなくなったことで、ハイライトに出るようなプレーは減ったかもしれない。だが、試合にインパクトを与える仕事をたびたびやってのけているのは事実だ。それは3ポイントシュートに限らず、リバウンドやディフェンス、ファストブレイクで走ること、また相手の速攻を止める動き一つにも言える。チーム全体が攻守に良く統率され、なおかつハッスルも求められる千葉において、田口のひたむきなプレーは一際目立っている。縮こまっているように見えた1年目とは完全に違う姿が、そこにはあった。
「バスケットボールを始めたのが遅いので、自分にはまだまだ伸びしろがあります。本当にあるかどうかは分かんないですよ。でも自分では絶対にあると信じているので(笑)」と以前に田口は語っている。千葉での2年間は田口にとって簡単な時期ではなかっただろうが、新たに吸収できたものは多い。今年30歳になったが、彼のピークはまだまだ先だ。