ジョーダン・ヒース

攻守にフル回転も「休むのは引退してからでいい」

天皇杯ベスト4、川崎ブレイブサンダースは宇都宮ブレックスに82-61と快勝した。ベスト8ではマティアス・カルファニ、篠山竜青をケガで、鎌田裕也をインフルエンザ発症で欠く中でアルバルク東京との激闘を制した。ただ、ここで大活躍を見せた藤井祐眞までもインフルエンザで離脱したが、その不利を感じさせないハイインテンシティ、エナジー全開のプレーで宇都宮を圧倒した。

川崎にとって大きかったのは、シューターの辻直人を先発ポイントガードに起用して未知数な立ち上がり、第1クォーターで15-10と主導権を握れたこと。そして、この勢いに乗って前半で2桁のリードを奪い、後半もそのまま押し切った。

原動力となったのはジョーダン・ヒースだ。ディフェンスでは宇都宮のエースであるライアン・ロシターとマッチアップ、タフショットを打たせてリズムを崩した。オフェンスでは得意の3ポイントシュートを次々と沈め、前半だけで18得点と試合を支配する活躍だった。

開口一番「最高の気分だよ」と笑顔を見せたヒースは、勝因をこう語る。「宇都宮はプレッシャーをかけてきたけど、そこで引かずにアタックすることでレイアップなどイージーシュートに繋ぐことができた。相手にエナジーで上回ったことが勝利の鍵となった」

離脱した藤井について「ハイエナジーを出せる選手で、いないのは残念」と大きな痛手であったと認めつつ、その不利を補った辻を称賛した。「ポイントガードとしてステップアップしてくれた辻の頑張りが本当に大きかった」

ジョーダン・ヒース

ファジーカスとの『リーグ最強ツインタワー』

天皇杯前の最後のリーグ戦となる1月5日の富山グラウジーズ戦、この時点で篠山、カルファニを欠いていた川崎は56-88と良いところなく完敗。外からは不安を感じさせる内容で、天皇杯を迎えていた。

だが、ヒースにネガティブな思いはなかった。彼にはオフシーズンから続けてきたチーム作りに揺るぎない自信があった。「富山との試合はバッドゲームだった。ただ、どんな仕事をしていても時にうまくいかない時はある。あの試合はそういう日だったというだけ。あの負けまでは16連勝していたし、リーグ最高勝率で天皇杯に突入した。だから、これまでやってきたことを続ければ問題ないと思っていたよ」

Bリーグ開幕後では初のタイトル、そして2014年以来となる天皇杯王者を懸けた決勝の相手はサンロッカーズ渋谷となる。相手は積極的な選手交代を繰り返し、40分を通して前から激しいプレッシャーをかけてくる。ただ、前がかりの守備なだけに、そこを突破できればゴール下でイージーシュートのチャンスが生まれやすくなる。

SR渋谷のプレッシャーを突破し、素早く敵陣へとボールを運ぶ。そして3ポイントシュートに加えアリウープなどゴール下への豪快なアタックが持ち味のヒースが、いかにオフェンスに絡んでいけるかが川崎が勝つための重要なポイントだ。

ここ2試合ほぼ出ずっぱりでスタミナ面が不安視されるが、ヒースはこれを一蹴する。「疲れはないよ。僕は走るのが好きだ。そして何よりもバスケットボールをプレーするのが大好きだからね。休むのは引退してからでいいよ」

振り返れば川崎はニック・ファジーカスの加入以降、彼の相棒としてはBリーグ初年度のライアン・スパングラーなどフォワードタイプは機能するも、ビッグマンはなかなかフィットしないでここまで来た。だが、ヒースはチームが切望していたファジーカスとうまく共存できる待望のビッグマンだ。ここで天皇杯王者になれば、名実ともにファジーカス、ヒースは『リーグ最強ツインタワー』の座を確立できる。