「自分たちのバスケをやり続けられた」
10月27日、サンロッカーズ渋谷は川崎ブレイブサンダースに91-71で圧勝し前日のリベンジを果たした。第1節、千葉ジェッツに連勝するなど開幕5連勝を達成したSR渋谷。しかし、平日開催となった23日の宇都宮ブレックス戦、26日の川崎戦で敗れ、この試合で負けて3連敗になると、スタートダッシュの勢いが大きく失速するところだった。
このシーズン序盤の踏ん張りところで、SR渋谷の山内盛久は約18分の出場で3ポイントシュート2本成功を含む13得点4スティールを記録。限られた出場機会の中で抜群のインパクトを残し勝利に貢献した。
「昨日の試合では、入りで川崎さんのエナジーに受け身になってしまいました。今日は相手に負けないエナジーで臨まないといけないと、出だしから意識しました」
山内は、このように川崎と同等、もしくはそれ以上のエナジーでプレーできたことを勝因に挙げる。そして、3連敗を免れ、難敵の川崎と1勝1敗で持ち込めた意義を語る。
「宇都宮戦、川崎戦はチームとしても意識していた試合であっただけに、昨日の負けは悔しかったです。チームの士気もへこんだところがありました。ただ、今日勝って同一カードで連敗しない。今年でチーム3年目ですが、自分たちのバスケをやり続けられたということは、これまでと違うところです」
「全員で戦うのがムーさんのスタイル」
このオフシーズン、SR渋谷は大幅なメンバーを刷新したことで、在籍3年にして山内は、広瀬健太、ベンドラメ礼生に次ぐ古株となった。チームでの立ち位置も「これまでは若手扱いですが、今は中堅となり、これまで以上のモチベーションを持ち、自分からどんどんメッセージを発信していきたいです」と変化を意識する。
また、言葉に加え、行動でもチームを引っ張っていきたいと続ける。「水曜日の宇都宮戦で、相手のプレッシャーがきつい中でしっかりアタックするのをプレー面で見せられた部分はありました。その後、『水曜のモリみたいにアタックしていけばいいよ』とコーチが伝えていたので、言葉だけでなく、プレーでいい影響を与えられたと思いました」
「今のチームはいい意味で真っ正面から行ける選手が多いです。その分、自分は相手の裏をついていきたい。そうすることで、表のアタックがより生きるようにする。そこをミスなくやっていきたいです」
今シーズンのSR渋谷は、次々と選手をローテーションで回していき、常にフレッシュな選手を投入。それによる強度の激しいディフェンスを持ち味とする新しいスタイルが好発進をもたらしている。
だが、この戦い方自体は、伊佐勉ヘッドコーチにとっては自身が琉球ゴールデンキングス時代から指向しているものだ。山内にとって伊佐は、2010年に琉球の練習生となった時からの師弟関係。SR渋谷にも同じタイミングの2017-18シーズン開幕前に加入。山内のプロバスケットボール人生は常に伊佐とともにある。そんな誰よりも指揮官を知る山内は語る。
「去年は途中にアシスタントからヘッドコーチに昇格したこともあって、ムーさん(伊佐)がやりたいことをやりづらかったと思います。今シーズンは、ムーさんのやりたいバスケにあった選手を呼んでいて、一から自分のチームを作り上げています。沖縄の時にも5人一気に交代することがあったように、全員で戦うのがムーさんのスタイル。みんな自分がやるべきことを分かって交代となるので、ベンチに戻って下を向いている選手はいないです。ムーさんのやりたいバスケットボールは浸透していると思う」
「どれだけ上を目指せるのか楽しみです」
この2人の歴史があるだけに山内にとっては、今のSR渋谷の戦い方は新しいのではなく、「細かい戦術的なところは新しいですが、みんなでボールをシェアして得点して、みんなで守る。そこの大枠は変わらないです」と勝手知る馴染みのスタイルだ。
だからこそ、「経験上、うまく行かなくなった時、コーチの求めるものと選手の意識にずれが生じてくる。それを自分は分かっているので、しっかりとコミュニケーションをとっていきたいです」と、流れが悪くなった時に自分が率先して選手とコーチの橋渡し役になることを意識する。
チーム在籍3年目で過去最高の出だしとなった開幕1カ月を終え、山内は「一つひとつの勝ちに対する充実感が違います。誰か一人がすごく点数をとって勝つわけでもなく、みんなで守って、得点して勝つ。だからやっていて楽しいです。これからスカウティングもされて研究されていくなかで、どれだけ上を目指せるのか楽しみです」と大きな手応えを語る。
この勢いを継続、さらに加速していくためには、山あり谷ありのシーズンの中でも今のスタイルをぶれずに貫いていくことが不可欠。そのためには、伊佐のやりたいことを誰よりも理解し、また、他の選手にはない独特のリズムで変化をつけられる山内がコートの中、外の両方でキーマンとなってくる。