大逆転勝利の流れを大きく引き寄せたバスカン2発
10月20日、川崎ブレイブサンダースは千葉ジェッツを相手に最大23点差をひっくり返し、96-89で勝利を収めた。試合後、佐藤賢次ヘッドコーチは「第3クォーターに点差を1桁に縮められたのが勝負どころで、そこから勢いに乗れました」と振り返ったが、その展開を作り出した主役が青木保憲だった。
第3クォーター、青木は残り2分40秒に交代で入ると、ここから積極的なドライブでバスケット・カウントを2本連続で決める。青木が投入された時点で、スコアは川崎の55-70だった。開幕から5試合で計2得点だった伏兵のビッグプレーはチームに活力を与え、川崎は7点差にまで縮めて第4クォーターを迎えることができた。
佐藤コーチは、あの場面での青木起用は予定通りだったと言う。「この2試合、富樫(勇樹)選手へのディフェンスが鍵になると見ていました。彼に対して篠山(竜青)と藤井(祐眞)を交互にフルコートでハードにつかせていたのでどこかで休ませないといけない。2人が疲れたところで青木を投入する予定で、試合前から使うぞと話をしていました」
そして、「ディフェンスをやってくれればと思っていましたが、オフェンスで2本結果を出してくれました」と、攻撃面でのインパクトは指揮官にとってもうれしい誤算だった。
青木本人は、「あの劣勢の中から勝てて良かったです。しっかり自分たちのディフェンスを信じてやろうとハーフタイムに賢次さんから言われました。それをチーム全員で遂行できたことが勝利に繋がったと思います」と試合を振り返る。
自らの活躍が逆転勝利を大きく呼び込んだことには「いつもと違うものはあります。コートに出るのが一番楽しいですし、少しでもチームのプラスになってやると思っています。そこの部分での充実感はあります」と笑顔を見せた。
「ハングリー精神を持ってプレーしています」
積極的なドライブがもたらした2つのバスケット・カウントは、オフシーズンの練習の成果だ。「昨シーズンはツーガードで出て、周りが崩したところでスリーを打つことしかできませんでした。今年は自分でペイントアタックをしてクリエイトする。そこで守備が来たら、パスをさばくプレーに取り組んできました。それを少しでも出せて、一歩ステップアップできたと思います」
このオフ、川崎は大塚裕土、熊谷尚也とこれまでなかった即戦力の補強を行い選手層が厚くなった。これは青木を含めた昨シーズンのベンチメンバーの働きが物足りなかったという評価の裏返しでもある。
こういった見方について青木は、「昨シーズンの状況では世間の皆さんからそう思われるのが普通です」と語る一方で「それに対する悔しさはありました」と続ける。「見返してやろう、の気持ちがないといけない。これを一つのモチベーションとし、ハングリー精神を持ってプレーしています。まだまだ反省点は多いですけど、今日はやってやったという思いもあります」
そして、プレータイムを安定して確保するための意気込みを語る。「今日は追い上げの大事な局面で出してもらえました。これからも、同じような場面で『青木を出せば』と思われることが大事です。そこの信頼をもっと勝ち取らないといけない」
今シーズン、川崎は佐藤ヘッドコーチの下、伝統と変革をテーマにチーム作りを推し進めている。オフシーズンの積極補強などが変革の代表例とするならば、伝統は生え抜きルーキーを育成して戦力とすることだ。川崎が伝統もしっかりと紡いでいけるのか。それは青木や林翔太郎の成長にかかっている。
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