文・写真=鈴木栄一

新体制での初戦、期待の新加入選手たちが実力を発揮

今オフ、リーグを代表する大型補強を行った琉球ゴールデンキングス。昨季はチャンピオンシップに出場こそしたが、29勝31敗と勝率5割以下に終わったことに大きな危機感を感じたチームは、オフに入ると早々に新指揮官として日本代表のアシスタントコーチを務めていた佐々宜央を招聘。そして昨季のチャンピオンシップMVPである古川孝敏、アイラ・ブラウンの日本代表コンビ。昨季、千葉ジェッツでゴール下の番人を務めたヒルトン・アームストロング、栃木ブレックスで大きな飛躍を遂げた須田侑太郎、他にも石崎巧、二ノ宮康平と、実績十分の即戦力を相次いで獲得した。

優勝候補の一角へと評価を高めているだけに、琉球のお披露目ゲームとなった昨日の富山グラウジーズとのプレシーズンゲームには注目が集まり、沖縄市体育館は満員御礼となった。琉球はアジアカップで負傷した古川と新加入のハッサン・マーティン、富山も岡田優、上江田勇樹、橋本尚明と複数の欠場者を抱えた中での試合は、第1クォーターに琉球がアームストロングの活躍によって22-14とリードを奪う。

その後は富山も盛り返し、第3クォーター途中には同点となるも、二ノ宮らの奮闘によって琉球はすぐに勝ち越し。第4クォーターにはこの日、3ポイントシュート6本中5本成功で25得点を挙げた須田の活躍などでリードを広げ琉球が87-70と新体制での初戦を白星で飾った。

アームストロングと組み「ベストのディフェンスになる」

この試合、21得点9リバウンドを挙げたアームストロングとともに、ゴール下を主戦場に躍動したのがアイラ・ブラウンだ。7得点6リバウンドというスタッツ以上の存在感を見せていた。昨シーズンの琉球は、オン・ザ・コート「1」の時間帯で苦戦するケースが目立ったが、新シーズンは逆に大きな強みになると予感させるブラウンのプレーだった。

「非常に良い内容だった。特にディフェンスをどれだけしっかりできるかを目標としており、その点は評価できると思う。アームストロングが第1クォーターにハッスルしてチームにリズムを作ってくれ、そのあと全員がシュートについてよい選択ができた」

このように試合を振り返るブラウンは、「ベストのディフェンスになることが目標。ガード陣は前からプレッシャーをかけていき、アームストロングがゴール下を守ってくれる。一人ひとりがそれぞれの役割をこなすことで、まだまだ良くなっていける」と特に守備への強い意識を語っている。

そして、「素晴らしいメンバーが揃っている。みんなとてもハードにプレーし、バランスが取れている。全体的に小さいがスピードがあるので、それを生かしていきたい」と陣容に自信を見せ、自身の役割については次のように考えている。「チームにエナジーをもたらし、プレーで引っ張っていく。また、時にはテンポを落とすなど、正しい状況判断をすることでもチームに影響を与えていきたい」

貴重な帰化枠の実力者であるブラウンだけに、サンロッカーズ渋谷を離れることが発表された時、当然のように次の行き先に注目が集まった。そして琉球を選んだのは、リーグ随一の熱狂的なファンの存在であり、これまで数々のタイトルを獲得してきた勝者としての歴史だ。

「これまで、いろいろな場所でプレーしてきたけど、僕の意見では沖縄の会場の雰囲気こそがベストだ。多くのお客さんが、試合に情熱とエナジーをもたらしてくれる。僕たちがよりハードに、アグレッシブにプレーする力を与えてくれる。今バスケ以外にいろいろな娯楽がある中、試合に来てサポートしてくれるのがどれだけすごいかは分かっている。だからこそ、ベストの自分を見せ続けていきたい。この素晴らしいファン、沖縄という素晴らしい土地こそ、僕がこのチームに来た主な理由なんだ」

「琉球にはこれまで何度もチャンピオンを獲得してきた素晴らしい歴史がある。自分がチャンピオンをもたらし、強豪として続いていくチームの未来の一員になっていきたいんだ」

アジアカップの疲れも見せず「40分だってプレーする」

アジアカップに出場した日本代表選手たちは、大事をとって練習試合を欠場するケースが少なくない。しかし、ブラウンはインサイド要員であるマーティンが欠場したという背景があったにせよ、この試合でも30分以上プレーと、代表活動の疲れを感じさせない。むしろ新しいチームメートやファンに自分の力を見せ付けるように、いつも以上にハッスルした。

「自分は休みたいとは思わないし、必要とされていたことは分かっていた」とブラウンは言う。「チームの一員としてプレーできることがうれしいし、プレーを続けることを重要視している。もし明日、40分プレーしてくれと言われたら、そうするだけだ。どんな時でもチームが勝つ助けをしたい。チームに自分のすべてを捧げる気持ちだからね」

フィジカル、メンタルとも文字通りタフなブラウンが、これから琉球にどんな波及効果をもたらしてくれるのか。琉球ファンにとっては新シーズンへの期待がさらに高まるプレシーズンゲームとなった。