田口成浩

ベンチで見守るしかないチームの苦境「もう地獄でした」

昨シーズン、秋田ノーザンハピネッツは故障者の多さも影響し、開幕から黒星が先行する苦しい戦いを余儀なくされた。シーズン途中には2015年に秋田に加入し、2019年からヘッドコーチを務めていた前田顕蔵の契約解除と大鉈を振るうも状況は変わらず、10勝50敗とチームにとって歴代ワーストの勝率で終えるどん底の1年となった。

秋田の顔である田口成浩は右膝前十字靭帯断裂によって昨シーズン早々に離脱し、わずか12試合の出場に終わった。復活を期す現在のコンディションを「(膝に)たまに水が溜まるので回復具合は85%から90%くらいです」と語る。

苦境のチームをサイドラインで見守ることしかできなかった昨シーズンを、田口は「もう地獄でした」と振り返る。「やっぱり顕蔵さんのために勝ちたい思いでやってきたのに、ああいう結果になってしまいました。(退任発表前から)いろいろな話をしていたので察するモノもある中、顕蔵さんのために何もできない自分が苦しかったです」

ベテラン選手にとって大ケガからの復帰は簡単ではない。ただ、3年前に左膝の十字靭帯断裂から復帰した経験があることで、良くも悪くも焦りはなかったという。「ケガをしてしまった瞬間は現実を受け入れたくなくて『絶対に大丈夫!』みたいな心境でした。そこから断裂が分かった時も、『もう無理だ』みたいな感じは一切なかったです。左膝をやった時に復帰しているので、これをやれば1年後に復帰できると自信がありました。ただ、あのリハビリをまたやらないといけないことへのメンタルの辛さはかなりありました」

この辛いリハビリを乗り越える原動力となったのは、周囲の励ましだった。「本当に仲間やブースターの人たちの『待っている』という声が、すごく励みになりました。身内だけでなく、多くの人が『僕のプレーをまた見たい』と言ってくれて、復帰を待ってくれている人がこんなにいるのかと。その人たちのためにも『このまま終わってたまるか!』という思いです」

「各選手が個性を出しながらチームとして戦っていくことが一番大事」

百戦錬磨の36歳は「(選手生活を)やりきった感覚はゼロです。心はまだまだ若手です」と、完全復活に向けてモチベーションは高い。今シーズンからBリーグはオン・ザ・コートフリーと大きくルールが変わり、日本人選手がプレータイムを勝ち取るのはより難しくなる。だが、田口は大きな環境の変化にも冷静だ。

「僕のやるべきことをやるだけです。自分のキャラだったり、伝える力を生かして試合に出ている5人を同じ方向に向かせる。チームに勢いを持ってくることを自分はできると思います。あとは年齢とか関係なく、タフにできることを体現できれば、プレータイムは自ずともらえると思っています」

昨シーズンの秋田は、前田前ヘッドコーチの下で長年に渡って積み上げてきた堅守をベースにしつつ、オフェンス強化へ新たな挑戦をしたことが裏目となり、土台のディフェンスも崩れる悪循環に陥った。原点回帰か、チャレンジを続けるのか、いろいろな選択肢があるが、田口は今シーズンの巻き返しへ、次のポイントを最も大切にしたいと考えている。

「今のメンバーでどういう戦いをするのが一番なのか、どれだけタフさを出せるのか。その上で、各選手がそれぞれの個性を出しながらチームとして戦っていくことが一番大事だと思います」

田口は過去に囚われないが、bjリーグ時代から在籍しているベテランとして、これまで秋田が培っていたカルチャーを次世代に継承していくことは意識している。「チームの伝統を若い選手たちに受け継いでもらいたいです。そのために思いは熱くですが、言葉遣いなどは時代にアジャストして、秋田らしさだったり、今までやってきたことは伝えていきたいです」

秋田がBプレミアと変わる新リーグの中で、上位戦線に食い込んでいくためには昨シーズンの反省も踏まえた上で変化する必要がある。一方で、変えてはいけないチームの根幹や伝統はある。それが何なのかを誰よりも理解している田口の存在は、引き続きコート内外で秋田にとって重要であり続ける。