
生命線の3ポイントシュートを欧州勢相手に決められず
女子日本代表はコーリー・ゲインズ体制になって迎えた初の世界大会『FIBA女子ワールドカップ2026』で、目標とするベスト8進出に届かなかった。目標を下回っただけでなく、内容面も厳しいモノとなった。
グループフェーズは、初戦のマリ戦こそ102-97で勝利したが、続くドイツ戦(58-74)、スペイン戦(59-79)は序盤から相手ペースで試合が進み完敗を喫した。3位で進出した決勝トーナメントのハンガリー戦でも同様の試合展開となり、63-84で敗戦して大会を終了した。
このような厳しい結果に終わった一番の要因は、日本の生命線である3ポイントシュートがマリ戦(35本中20本成功で成功率57.1%)以外は相手の厳しいマークを崩せず沈黙したこと。以下が敗れた3試合の3ポイントシュートの成績となる。
◾️ドイツ戦
日本:27本中3本成功(11.1%)
ドイツ:27本中8本成功(29.6%)
◾️スペイン戦
日本:30本中7本成功(23.3%)
スペイン:25本中8本成功(32.0%)
◾️ハンガリー戦
日本:33本中7本成功(21.2%)
ハンガリー:25本中11本成功(44.0%)
日本がアドバンテージを取らないといけない長距離砲を相手により多く決められたのは致命的で、世界との大きな壁を痛感せざる得ない内容だ。
マリ戦は相手がスイッチディフェンス中心で抑えに来る中、複数の選手が連動した動きによってオープンを次々と作り出せた。東京オリンピックでの躍進以降、日本は相手のスイッチディフェンスによる3ポイントシュート封じに苦しんできた過去がある。この試合でそれを完全に攻略したのは大きな進歩だったが、続く試合では世界の最先端を走る欧州の進化を突きつけられることとなった。
ドイツはサイズとクイックネスを備えた選手の層が厚く、タイムシェアを可能としていた。安易にスイッチせずに粘り強く喰らい付き、疲労が見えればフレッシュな選手が変わるがわる投入されるドイツに対して、日本は彼女たちのフィジカルに負けてスクリーンを簡単に潰された。相手のマークを剥がすことに苦戦を強いられた日本はオフェンスの仕掛けが遅れ、自分たちの打ちたい形で3ポイントシュートを全く打たせてもらえなかった。

「我々はサイズが小さいので、ミスの許容範囲が非常に狭い」
ゲインズヘッドコーチは、ドイツ戦後に「相手のアグレッシブなディフェンスをコントロールすることができませんでした。やられっぱなしにならず(裏を取るなど)自分たちの反応をもっとコントロールすることができたと思います」とチームが受け身になっていたと振り返る。
そして、シュートセレクションが単調だったことについても言及した。「3ポイントを対策された中、カールからのミドルシュートは打てる状況でした。もちろん空いていたらそれを打つべきですが、ディフェンスが『打たせて良い』と思うシュートを打ち続けるのはよくないです。24秒の中で、3ポイントを打てるチャンスを1回だけでなく複数作りたい。そのための工夫をスペイン戦ではもっとしていきたいです」
このように攻守ともにフィジカル、メンタルの両方で積極性が欠けていた日本だが、スペイン戦では前から激しく当たるディフェンスで相手を苦しめ、オフェンスもドイツ戦に比べると強気のアタックが目立った。ゲインズヘッドコーチもディフェンスで戦う姿勢については及第点を与えていた。しかし、出だしからファウルがかさみスペインに27本ものフリースローを与え、冷静な判断力を欠いていたことでミスが続出し、18個のターンオーバーから相手の得点に繋げられ19失点と、つかみかけていた流れを自ら手放してしまった。
このように問題はあったにせよ、指揮官は全体としてドイツ戦からの改善に手応えを語っていた。「万全ではありませんが、私たちは今、正しい方法でプレーしています。初戦はシュートがよく入りましたが、この試合は再びシュートが全く入りませんでした。結局のところ、勝負を左右するのはシュートを決めるか決めないかです。スペインはオープンショットを決め、私たちは決められませんでした。もっとオープンショットを作れるように、選手たちをサポートしなければなりません」
振り返れば、ドイツとスペインはともにこの大会でベスト4に進出し、明らかに格上のチームだった。一方でベスト8決定戦の相手となったハンガリーは2チームと比べると一つレベルが下がる。3月のワールドカップ最終予選で戦った時は、65-77で敗れたものの残り2分半で6点ビハインドと終盤まで接戦だった。だからこそ、半年間の成長を示す意味でも勝ちたかったし、世界上位グループに喰らい付いていくには勝たなければいけない相手だった。
しかし日本は、第3クォーター中盤からほとんどの時間帯で2桁のビハインドを負い、終盤にさらに崩れて21点差の大敗。3ポイントシュートを効果的に決められてしまったのは痛かったが、ターンオーバーからの得点(20-8)とファストブレイクポイント(17-8)では優位に立ち、走る展開に持ち込めた時間は増えたにもかかわらず力負けを喫してしまった。
ゲインズヘッドコーチは、ハンガリー戦をこう総括する。「ドイツ戦ではシュート自体を打たせてもらえませんでした。スペイン戦ではチャンスを作れてもシュートを決められませんでした。今日は良いオープンシュートを打つことができていたのに決め切れませんでした」
「我々はサイズが小さいので、ミスの許容範囲が非常に狭いです。スティールを奪ったときにはトランジションで確実に得点に繋げなければならないのに、それができなかった。相手のミスにつけ込むチャンスがあったのに決め切れず、最終的に響いてしまいました」

タイムアウトをとらない戦術はプラスなのか
試合においてコーチ陣ができることは、いかにオープンシュートの回数を増やし、相手にタフショットを打たせる戦術を提供できるか。その後のシュートを決め切れるのかといった遂行力はコントロールできない。この点を踏まえれば、オープンショットを作るプロセスに大会を通して確かな成長が見られたのはプラス材料だ。
ただ、この大会ではポジティブな面よりネガティブな面が目立った印象が強い。特に痛かったのは同じパターンでの負けを3度繰り返したことだ。試合の出だしでエンジンがかからず相手にファーストパンチを許し、序盤に大きなビハインドを負ってしまう。第2クォーターに追い上げて僅差に詰め寄るが、第3クォーターに入ると再び出だしから突き放され、そのまま第4クォーターもずるずると悪い流れを変えられずに敗れた。
もちろん選手の戦術理解力とプレー精度を高める必要はあるが、原因は選手だけではない。立ち上がりで後手に回った理由にスカウティング不足はなかったのか。第3クォーターで突き放されたのはハーフタイムでの指示が足りなかったからなのではないか。強化委員会は分析しないといけない。
また、タイムアウトを取らないゲインズヘッドのコーチングスタイルが、日本にとってベストな戦術なのかをしっかりと精査してほしい。「相手に対して、私が焦っていると感じさせてしまう。そして相手に休む時間を与えてしまいます」という、彼がタイムアウトを取らない理由には筋が通っている部分もある。しかし、今大会はそのプラス面よりもタイムアウトを取って悪い流れを切らないマイナス面のほうが大きかった印象は否めない。相手が日本の得意とするトランジションから得点を重ねるとすぐにタイムアウトを取って流れを切ったのに対し、日本はタイムアウトを取ることなく、相手の勢いにのまれてビッグランを許してしまうことに何度も歯痒さを感じた。
ゲインズヘッドコーチは、このタイムアウトを取らないスタイルでWNBAマーキュリーをリーグ優勝に導いた実績はある。だが、当時のチームにはダイアナ・トーラジという、女子バスケ界史上に残るシュート力と卓越したリーダーシップと戦術眼を持ち、コービー・ブライアントが『ホワイト・マンバ』と評した稀有な存在がいた。彼女なら悪い流れでも個の力で打開できるし、チームをまとめてコート上の指揮官として問題を修正できる。しかし、トーラジと同じ役割をこなせる選手の台頭を期待するのは現実的ではない。
日本は大会直前にベルギーとの強化試合を2度実施していた。試合はともに惜敗で、ゲインズヘッドコーチは内容に確かな手応えを得たが、ワールドカップでは指揮官の目論見通りのパフォーマンスは発揮されなかった。「ベルギー戦ではもっと良いプレーができていました。本番では何かが違いました。私は嘘をつくつもりはないです。今の私にはその理由がわかりません」と肩を落とした。
これは当然、試合終了直後の発言というところも影響しているだろう。じっくりと大会を振り返る時間ができた今、指揮官はどんな思いを抱いているのか。そして強化委員会はどのような立て直し策を講じるのか。女子日本代表は大きな正念場を迎えている。